2020.05.26 ■東京海上HD 19年度末(20年3月期)決算、国内正味収保は3.7%増[2020年5月20日]

 東京海上ホールディングスは5月20日、2020年3月期決算を発表した。連結経常収益は前期比0・2%減の5兆4654億円で、このうち正味収入保険料は、国内が火災保険を中心に全種目で増収し同3・7%増となったほか、海外も収益性を重視した引き受けに伴う減収があった一方で、各事業の引き受け拡大・レートアップやセイフティの新規連結により同4・8%の増収となった結果、同0・3%(再保険子会社売却の影響を除いた場合同4・1%)増収の3兆5983億円となった。生命保険料は、国内・海外共に減収となり、同6・8%減の9819億円となった。連結経常利益は同12・6%減の3639億円で、親会社株主に帰属する当期純利益は、国内外における自然災害の減少や北米資産運用の好調等の一方で、国内の異常危険準備金積増(含む特別繰入)や北米のリザーブ積増等により、同5・4%(148億円)減益の2597億円となった。修正純利益は同57億円増の2867億円だった。

 国内損保事業では、東京海上日動の保険引受利益が前期比507億円減少し384億円。大口・中規模事故の増加や増収に伴う発生保険金の増加のほか、増収や消費増税等に伴う代理店手数料・物件費の増加による事業費の増加、異常危険準備金で火災保険への一時的な特別繰入や自然災害に係る保険金支払の減少等に伴う取崩額の減少、その他、自然災害責任準備金の積増や自動車保険等の収支改善に伴う普通責任準備金(初年度収支残)積増の増加があったことを主因に、減益となった。
 正味収入保険料(民保)は、同4・0%増の1兆9699億円と前年実績を上回った。種目別では、火災は補償拡充や件数増加、19年10月の商品改定前の契約見直しを主因に同14・2%増の3218億円、海上は船舶保険で増収し同4・1%増の653億円、傷害は国内の加入者数の増加を主因に同3・3%増の1790億円、自動車は保険料単価の上昇を主因に1・2%増の1兆783億円、自賠責は満期到来台数の増加を主因に2・3%増の2768億円、その他は超ビジネス保険等の販売拡大を主因に4・2%増の3260億円となった。
 発生保険金(民保、損害調査費含む)は、同419億円減少し1兆2708億円となった。E/I損害率は、自然災害に係る発生保険金の減少や為替変動による外貨建支払備金の積増負担の減少により同3・7ポイント低下の66・3%。事業費率は、消費増税等の影響による代理店手数料・物件費の増加を主因に、同0・1ポイント上昇し32・4%。コンバインド・レシオ(民保E/Iベース)は同3・6ポイント低下し98・7%となった。
 資産運用等損益は同414億円減益の1820億円。このうち、ネット利息及び配当金収入は、海外子会社からの配当金収入が増加した一方で、再保険子会社売却に伴う事前配当の剥落による影響で外国株式配当金が398億円減少したことなどで、同321億円減の1514億円となった。
 経常利益は同914億円減の2239億円、当期純利益は同914億円減の1699億円、単体ソルベンシー・マージン比率は前年度末比10・2ポイント低下し815・2%となった。
 日新火災の保険引受利益は、前期比12億円増益の27億円だった。火災・新種保険の販売拡大による増収のほか、自然災害に係る発生保険金の減少や自動車保険における事故の減少が主因。資産運用等損益は、政策株式の売却額の増加により有価証券売却損益が増加した一方で、有価証券評価損の増加等により、同3億円減益の36億円。経常利益は同7億円増の57億円、当期純利益は同6億円減の37億円、単体ソルベンシー・マージン比率は前年度末比104・6ポイント低下し1115・3%となった。
 東京海上日動あんしん生命の新契約年換算保険料は、法人向け商品の一部販売停止(以下、販売停止)の影響を主因として、前期比45・7%減収し405億円となった。保有契約年換算保険料は、販売停止に伴い、新契約による増加が解約等による減少を下回ったため、同2・4%減収し8372億円だった。
 当期純利益は、システム開発費や死亡保険金が増加したものの、販売停止に伴う代理店手数料や責任準備金の積増負担の減少、有価証券売却益の増加を主因に、同68億円増益の342億円。基礎利益は、同11億円増益の495億円となった。単体ソルベンシー・マージン比率は、前年度末比547・3ポイント低下したが、1516・3%と高い水準を維持している。
 海外保険事業の正味収入保険料は、各事業の基調が良好だったことから、前期比6・4%の増収(再保険子会社売却の影響を除く)の1兆7416億円となった。
 北米は、フィラデルフィアが収益性が低い契約の引受縮小や円高の影響により減収となった一方、デルファイは損保の引受拡大により増収、TMHCCは収益性を重視した引受によるメディカルストップロスの減収があったものの、米国外セグメント等の引受拡大により全体では増収となり、同1・5%増の1兆1240億円だった。欧州・中東・アフリカは、欧州では事業再編に伴い収益性の高い事業・種目に集中したことにより減収したものの、Hollardの新規貢献(プラス489億円)により同28・0%増の1961億円。中南米は、ブラジルにおける自動車保険等の引受拡大により、同1・3%増の1360億円となった。アジア・オセアニアは、セイフティの新規連結(プラス215億円)やインド、タイ等における引受拡大により、同23・6%増収し1845億円となった。
 事業別利益は、北米で損害率悪化があったものの、自然災害の減少(プラス126億円)や資産運用損益の増加、生保での増益等により、同163億円増益(再保険子会社売却の影響を除く)の1795億円だった。
 このうち北米は、フィラデルフィアは賠責の過年度リザーブ積増の影響(▲231億円)により減益、デルファイは保険引受利益の改善に加え資産運用損益の増加により増益、TMHCCは天候不順等による農業保険と医療費高騰によるメディカルストップロスの損害率悪化による北米損保・A&Hセグメントの収益悪化を主因として減益となり、北米全体では同3・8減の1472億円となった。
 欧州・中東・アフリカは、TMKのロイズ以外の事業が大口事故等により減益となったものの、ロイズ事業における収益性の改善やHollardの新規貢献(プラス13億円)により増益となり、同24億円増の22億円。中南米は、ブラジルにおける自動車保険等の収益改善を主因に増益して同16・7%増の108億円。アジア・オセアニアは、セイフティにおける株式売却益の影響(プラス18億円)に加え、タイや中国における収益改善等により増益となり、同38・0%増の166億円だった。
 20年度の業績予想については、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響額を現時点で合理的に算定することが困難なため未定とした。新型コロナウイルス感染症の影響については、保険引受では、経済活動の落ち込みに伴う保険料収入の減収、海外を中心とした新種保険等の保険金支払いの増加、資産運用では、金利低下によるインカム利回りの低下や、株価下落等に伴う減損の計上などが考えられるが、同感染症の収束時期を含めその影響の程度を見通すことが困難なため、通期業績予想は未定としたとしている。同社では、業績予想については今後、合理的な算定が可能となった時点で速やかに公表するとしている。
 新型コロナウイルスの影響を織り込まない補正ベースでは、20年度連結純利益2900億円程度(前期比約300億円増)、修正純利益4100億円程度(同約1200億円増)を見込む。