2019.12.23 かんぽ生命 契約調査結果で記者会見、違反疑い事案1万2836件に

 日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の3社は12月18日、東京都千代田区のフクラシア丸の内オアゾで記者会見を開き、2019年7月31日に「日本郵政グループにおけるご契約調査及び改善に向けた取り組みについて」で公表したかんぽ生命による全契約調査の結果と今後の取り組みについて報告した。同日開かれたかんぽ生命保険契約問題特別調査委員会調査報告の記者会見では、違反疑い事案が、中間報告時点の6327件よりも倍増となる1万2836件に上ることを明らかにした。日本郵政の長門正貢社長は、「委員会からの指摘を真摯(しんし)に受け止め改善策の確実な実施と一層の充実を図っていく」と述べた。また、質疑応答で自身の経営責任について質問されると「しかるべき経営責任をしかるべきタイミングで示す」と述べ、明言は避けた。

 特別調査委員会の報告によると調査は、19年7月24日から約5カ月間にわたり行われた。関係資料の精査の他、3社の役職員や募集人および経験者を対象としたヒアリング調査や、募集人・支社長などへのアンケート調査、専用の情報提供窓口を利用した情報提供者からの情報、デジタル・フォレンジック調査が行われた。
 14年4月から19年3月までの5年間に受理した「特定事案」に該当する契約総数の約18.3万件のうち14.8万件について顧客からの意向確認が終了し、そのうち1万2836件が顧客の申告通りであれば法令または社内規則に違反する疑いが認められ、中間報告時点の6327件よりも倍増した。
 かんぽ生命では「違反疑い事案」に関与した募集人4213人について募集人調査を行い、法令違反ないし社内規則違反の有無を判定した結果、12月15日現在で法令違反と認められた事案(不祥事件)が48件、社内規則違反と認められた事案が622件となった。
 「違反疑い事案」の件数は、年平均1265件で、最終的には倍増となること、渉外社員の募集人が関与した件数の割合は、5年平均で約87%だったこと、販売実績が「優秀」とされる募集人が関与した件数の割合が約26%だったことなどが報告された。
 どのような募集人が「違反疑い事案」に関与したかについて分析・検討した結果として、募集人が不適正募集を行う動機は、営業目標達成に対する厳しい指導などや所属組織・上司等に迷惑をかけることを回避することなどの他、販売実績が高い層では、営業手当などの選奨やインセンティブへの意識が強いことが要因になっていることが指摘された。さらに、営業目標達成のために、上司などが募集品質に問題がある募集人を厚遇してきたことから、販売実績を挙げる手段として不適正募集が黙認されるという風潮が形成されたとし、そのため、不適切な勧誘の話法を含めた不適正募集の手法が各地に伝播したと指摘。
 具体的改善策については、募集状況の可視化(録音録画)や新規契約の獲得に偏った手当・人事評価体系の見直しなどを挙げ、委員長で弁護士の伊藤鉄男氏は「改善策は郵政グループ各社で早急に具体化し、約3年間ですべてを完了させることをめどに実施する」と述べた。 
 記者会見の冒頭、あらためて謝罪の言葉を述べた長門社長は、「社員一人一人に至るまでコンプライアンスの意識を徹底させ、失った信頼の回復を図っていく」と決意を表わした。
 次に、かんぽ生命の植平光彦社長は、同社が実施した契約調査の概要や契約乗換に関わる特定事案の調査、全契約調査の状況について報告した。特定事案調査では、意向確認の結果や契約時への契約復元の確認を行ったとし、その詳細を説明した。全契約調査の状況は、顧客数約1900万人に対して、約100万通(12月13日時点)の返信はがきによる回答があったことを報告した。
 また、全契約調査の中で不満や意見などの確認・調査を徹底して行うことを含め必要な対応を講じ、不利益が発生している顧客についてその解消を図る他、契約乗換については、7月から勧奨を停止して営業成績への計上を行わないことなどの対策を実施しており、募集手当不支給を含めてさらに徹底した改善を図るとした。
 長門社長は、組織風土改革について、「お客さま本位の業務運営」を浸透させる他、伏在していた契約乗換その他の保険募集に係る問題点および原因等が把握・認識できていなかったことを踏まえ、かんぽ商品の募集をはじめとした金融営業専用の社外通報窓口を20年3月末までに新設するとした。
 また、グループ社員の業務問題の相談等を受け付ける窓口の新設やかんぽ生命社員から同社社長への直接提案制度の導入などによって、社員の声の把握に努めるとし、「改善策を確実に実行していくために、経営陣が責任を持って計画を立て進捗管理をするとともに、その進捗状況については、定期的に公表していく」との方針を示した。