2019.12.10 東京海上HD 防災科研と包括連携協定締結、自然災害に負けない社会へ

 東京海上ホールディングスは11月27日、国立研究開発法人防災科学技術研究所(理事長:林春男、以下、防災科研)と、包括的な連携・協力協定を締結したことを発表した。①自然災害リスク評価の高度化②災害対応の高度化・テクノロジー活用③自然災害の被害軽減に資するデータの利活用④定期交流を通じた双方向イノベーションの推進―以上の4点が内容。本協定を通じたさまざまな活動を通じて、安心・安全で強靭な自然災害に負けない社会づくりへのさらなる貢献を目指すとしている。

 防災科研は、1963年に国立防災科学技術センターとして発足した防災科学技術に関する基礎研究および基盤的研究開発等の業務を総合的に実施する国立研究開発法人。2016年4月には気象災害軽減イノベーションセンターを設置し、「攻め」の防災に向けた気象災害の能動的軽減を実現するイノベーションハブの構築を進める他、17年度から研究を行っている「首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上プロジェクト」では、首都直下地震などの災害に備え、オールジャパンによる研究推進体制を構築し、官民一体の総合的な事業継続や災害対応、個人の防災行動等に資するデータの収集・整備を目指し、①首都圏を中心としたレジリエンス総合力向上に資するデータ利活用に向けた連携体制の構築②官民連携による超高密度地震動観測データの収集・整備③非構造部材を含む構造物の崩壊余裕度に関するデータ収集・整備―などに取り組んでいる。
 今回の連携・協力事項の①「自然災害リスク評価の高度化」については、防災科研が保有する自然災害予測など防災に関わる観測データと、東京海上グループが保有する災害情報関連データ等を結集し、自然災害リスク評価の高度化を進めていく。
 ②「災害対応の高度化・テクノロジー活用」では、最新のIoTやAI、リモートセンシングを用いたリアルタイム被害把握・予測技術を、災害対応の高度化の推進や、保険金支払いの迅速化・効率化等の分野で活用していく。
 ③「自然災害の被害軽減に資するデータの利活用」については、SIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク:防災科研で研究開発中の災害対応に必要な情報を多様な情報源から収集し、迅速に共有する機能を備えた防災情報の流通を担うシステム)のデータを基に、顧客企業や地方公共団体の災害対応の高度化を支援し、被害を未然に防ぐ、または被害を極小化させるための有効な対策について研究を進めていく。
 ④「定期交流を通じた双方向イノベーションの推進」では、両者が過去から培ってきた自然災害に対する知見について、定期交流を通じた双方向での相互理解を通じて、新たなサービスの開発につなげていく―としている。
 協定の背景については、「自然災害が社会に与える影響は世界的規模で増大している。国連国際防災戦略事務局(UNISDR)の報告によると、直近20年間の自然災害による世界の経済損失額は約330兆円で、その前の20年間の2・2倍となり、今後も増加基調とされる自然災害による影響は、日本のみならず世界的な社会課題となっている。一方で、本格的なデータ社会が到来し、利活用可能なデータが増え、防災・減災・リスクマネジメントの促進とさらなる高度化のために、AI、IoT、リモートセンシングといった最新テクノロジー・最先端研究が果たす役割と期待も大きくなっており、課題先進国である日本の強みを生かした産官連携による防災減災分野でのイノベーションが求められている」と説明されている。
 防災科研は、あらゆる自然災害に対する、予測力、予防力、対応力、回復力の総合的な向上を図り、国民の安全・安心につながる研究開発を行っている。自然災害予測など防災に関わる観測データや研究成果を生かすことは非常に重要と考えており、これまでのデータや研究成果の蓄積を生かしながら他機関・団体との連携などを進め、関連の研究の発展や成果の普及に努めている。
 東京海上HDは、「顧客と社会の『いざ』を支える存在として、これまで防災科研との連携により、地震防災支援システムの実証実験、津波リスク評価の高度化といった取り組みを続けてきた。今後は、これまでの取り組みをさらに強化し、防災科研の最新防災科学技術研究シーズと、東京海上グループの事業領域(保険やリスクマネジメント関連事業)でのニーズを組み合わせ、災害分野での事業領域のサービス品質のさらなる向上に努めていく」としている。