2019.08.06 かんぽ生命 契約乗換等に関する記者会見開く 過去5年間分の全契約調査へ 新契約目標は設定せず

 日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の3社は7月31日、東京都千代田区の大手町プレイスカンファレンスセンターで、契約者に不利益が生じたかんぽ契約の乗換等に係る問題に関し、記者会見を行った。会見には、日本郵政の長門正貢社長、日本郵便の横山邦男社長、かんぽ生命の植平光彦社長の3氏が出席し、過去5年間分の全契約、約3000万件について顧客の意向に沿わず不利益を生じさせたものがないか検証すると発表した。自身の経営責任についても言及した長門社長は、「行うべき職責をしっかりと果たすことが経営者としての責任の取り方だ」と述べ、横山社長、植平社長とともに辞任を否定した。

 会見の冒頭、謝罪の言葉を述べた長門社長は、「一連の事象を経営陣一同大変重く受け止めている。お客さま本位の業務運営の徹底が十分ではなかったと真摯(しんし)に反省し、今後はお客さま第一の真の実現に向けてオール郵政として全力で取り組んでいく」と決意を語った。
 契約調査について説明した植平社長は、過去5年間分の契約、消滅契約を含む約3000万件について検証し、顧客の意向に沿わず生じさせた不利益についてはできる限り早期に解消していくとした。
 また、顧客の意向に沿わず不利益が発生した可能性が特定可能な事案(特定事案)約13万7000件については、8月5日から顧客に書面の送付を開始し、8月中に送付を完了する。さらに特定事案全件について対象顧客に契約時の状況や契約復元等の意向を確認するため、9月上旬までにかんぽ生命の専用コールセンターから電話し、対面での説明が必要な顧客に対しては、かんぽ生命の社員が顧客を訪問して意向を確認する。
 調査の進捗(しんちょく)については9月末時点で中間報告を行う予定で、12月までに完了のめどをつけたい考えだ。
 特定事案を除く全契約については、9月中に、かんぽ生命・日本郵便連名で返信用はがきを同封した書面を送付する。返信や問い合わせのあった事案については、かんぽ生命が調査を実施する。また、郵便局でも対応する。
 調査に当たっては、かんぽ生命のコンプライアンス部門をはじめとする全国約400人の調査スタッフが対応する他、募集人に対する調査については日本郵便のコンプライアンス部門から約150人が参画する。
 郵便局における顧客対応と営業目標について報告した横山社長は、郵便局では今後、かんぽ生命商品の顧客対応を最優先に位置付け、当面はかんぽ生命商品に限らず、郵便局の取り扱う金融商品全般について、委託元との調整が終了するまでの間、積極的な営業は行わないことを表明した。ただし、がん保険と自動車保険については、商品性の違いやモニタリング態勢等を踏まえて、委託元との調整の上、従来通り営業を続ける考えだ。
 営業目標については、今回の問題の要因について、貯蓄性商品の魅力の低下に伴い、これまでどおりの営業が困難になったにもかかわらず、営業施策や組織マネジメントを状況に応じて変えることができず、営業目標が新契約の獲得に偏っていたことにあるとの認識を示し、7月10日の会見時には引き下げを検討するとしていたかんぽ商品の営業に関わる新契約目標を当期については設定しないことを明言した。
 来年度以降の目標については販売額に重きを置くフローベースから保有資産に重きを置くストックベースの指標へと抜本的な見直しを行う方針を示した。
 また、日本郵便では、真の「お客さま本位の営業活動」の徹底に向け、かんぽ生命商品の営業に携わる全社員を対象とした研修を8月中に実施する。加えて、乗換契約に係るチェック体制を強化し、その上で、かんぽ生命商品の顧客対応に支障のない範囲で営業活動の再開を検討する方針だ。
 この他、郵便局の現状を把握する仕組みとして、「フロントライン・セッション」を設置し、郵便局社員と本社役員等の間でテーマを限定することなく、顧客の反応や、日常感じている郵便局での負担や不満、要望等、幅広く意見交換を行うことを報告し、「真にお客さま本位を貫くことを徹底し、全役職員が一丸となって顧客からの信頼の回復に向けて全力で取り組んでいく」と強調した。
 再発防止策については、7月24日に設置した中立・公正な第三者による特別調査委員会の提言を踏まえ、年内をめどに検討していく方針で、9月中に中間報告を行う意向を示した。