2019.04.17 日本生命 保険会社でアジア初 「赤道原則」採択 環境・社会影響で投融資判断 リスク評価手法を体系化
日本生命は4月1日、プロジェクトファイナンス等における環境・社会配慮の国際的なガイドラインである「赤道原則(Equator Principles)」を採択し、運用を開始したことを発表した。同社によると、赤道原則の採択は、保険会社でアジア初だという。同原則の採択に伴い、同社では今後、プロジェクトファイナンス等の意思決定のプロセスにおいて環境・社会影響の評価を行うとともに、融資実行後に順守状況のモニタリングを行う。 赤道原則とは、融資先のプロジェクトにおいて環境・社会面の配慮が適切に行われているかを確認するための、民間金融機関による自主的なガイドライン。「赤道原則」という名称には、“北半球・南半球を問わずグローバルに適用する原則”という意味が込められている。現在、採択金融機関は世界30カ国以上、90以上に拡大し、赤道原則はプロジェクトファイナンスに取り組む際の事実上の標準となっている。 日本生命では、2017年にストラクチャードファイナンス営業部を新設し、海外プロジェクトファイナンスへの取り組みを本格化。大規模開発を伴うプロジェクトは、自然環境や地域社会に対して大きな影響を及ぼす可能性があり、プロジェクトファイナンスの意思決定時には、環境・社会面への配慮がより重要になることから、今回、赤道原則を採択した。 同社は、超低金利環境下での収益確保を目的に、中期経営計画において、4年間で成長・新規領域へ2兆円、ESG債等へ7000億円の投融資を目標に設定している。 プロジェクトファイナンスについては、国内案件で培ったノウハウを生かしながら、海外案件への取り組みを本格化する中、先進国だけでなく新興国のプロジェクトへの融資も増加。新興国の中には、環境・社会配慮に関する法制度が発展途上段階の国もあり、環境・社会への影響を体系的に評価する態勢の必要性が高まりつつある。 これまでも同社では、プロジェクトファイナンスへの投融資判断の際には、環境・社会に対する影響の評価を行っていたが、今回の赤道原則の採択により、評価手法の体系化を図る。 環境・社会リスク評価では、まず、スクリーニングによってプロジェクトが赤道原則の対象になるかを判断し、対象になる場合、リスクの大きさに応じてカテゴリ(A・B・C)を付与。現地住民等のステークホルダーと対話を行う(基本的にプロジェクト実施者が実施)。次に、独立コンサルタントが作成するリスク評価書等を基に、プロジェクトの環境・社会への影響を評価。環境・社会配慮が十分でない場合にはアクションプランを設定する(基本的に独立コンサルタントが策定)。融資契約には、アクションプランの履行、定期報告等、特約事項(コベナンツ)を設定し、事業者に赤道原則順守を強制する。融資後は、事業者がコベナンツやアクションプランを適切に履行しているか定期的に確認し、モニタリングを行う。 また、評価の結果、仮に赤道原則を満たさないプロジェクトがあれば、実施者に環境・社会配慮の適切な取り組みを求め、プロジェクトによる環境・社会への負荷軽減を後押しする。赤道原則で定める基準を満たさず、プロジェクト実施者が対策等を行わないプロジェクトに対しては、同社は融資を実施しない。 同社では今後も、ESG投融資を通じた持続可能な社会の形成に寄与していくとしている。