2019.02.22 生保協会定例会見 国税庁経営者保険の税務見直しへ 会員各社に適切な対応求める

 生保協会の稲垣精二協会長は2月15日に行われた日銀記者クラブの定例会見で、国税庁から生保協会の加盟各社に対して、中小企業経営者向けの定期保険や第三分野保険の保険料について税務の取り扱いの見直しを検討している旨の通知があったことについて、今後の取り扱いについては販売自粛を含めた慎重な判断が必要だとの考えを示し、会員各社には「顧客からの信頼を損なうことのないよう、適切な対応をお願いしている」と語った。

 国税庁からの通知を2月13日に受けた同協会では、2月15日の理事会でも通知事項を共有している。通知について稲垣協会長は「経営者保険へのニーズは強く、生保会社が無理やり売り付けているものではない」とした上で、「一部では、やや節税面を強調し過ぎた販売に寄ってしまった部分もあったかと思う」と反省の姿勢を示した。
 今回の通知を受けて、自身が社長を務める第一生命では、税務ルールの変更の検討が進められる中にあっては、十分な顧客説明が難しいと判断し、販売を自粛していることにも触れ、理事会でも、各社に顧客保護に対するアクションを求めたことを明かした。
 今後については、「ルールが決まるまでの間、保障が提供できない期間が生じてしまうが、新たなルールの下で事業承継リスクを補うような商品提供は引き続き提供可能だと考えている」と語った。
 会見では、業界の現状の課題として、銀行窓口で販売されている外貨建保険等に対する苦情分析の結果の概要についても報告した。2018年の2月と10月に会員各社に対してアンケートを実施した結果、業界全体で外貨建保険等の保有件数は12年からの6年間で42万件から211万件へと大幅に増加。それに伴い、苦情件数も597件から1888件へと増加している。苦情原因の77%は「説明不十分」で、さらにその内訳では、「元本リスクについて適切な説明を受けていなかった」が43%と最も多かった。傾向としては、特に70歳以上の契約者からの苦情が多く、80歳以上の契約者の場合は親族からの申し出が高い水準となった。
 こうした状況を踏まえ、同協会では、全国銀行協会と連携の上、銀行等が取り扱っている金融商品の仕組みや特徴を網羅したマネープランガイドのひな型の作成と、保険のリスクやコストなどの記載事項や記載順を業界内で統一した募集補助資料の作成を行っている。稲垣協会長は、今後も、苦情の抑制に向けた意見交換を定期的に開催していく方針を示した。
 この他、若者の金融リテラシー向上のための動画コンテンツ『ライフプランのいろいろ』を同日付でユーチューブ等に公開したことを発表した。稲垣協会長は、若者の金融知識に接する機会を増やしたいという考えの下、一般的に“金融”というワードから連想される堅苦しさをできるだけそぎ落とし、少しコミカルな内容で誰でも気軽に楽しめる作品を目指したと説明。動画の一部を会見の中で披露し、「同日付でリニューアルした生保協会の『金融・保険に関する学習情報サイト』に掲載されているので、ぜひご覧いただきたい」と呼び掛けた。
 また、同日付でESG投融資をさらに促進させるための基本的な考え方や主な取り組み事例を示すものとして「ESG投融資ガイドライン」を策定したことを報告し、「今後もさらなるバリューアップに向けて業界全体のESG投融資取り組みの推進を図っていきたい」と語った。