2019.01.25 第139回自賠責審議会 基準料率は据え置き 4月からJA共済でe―JIBAI導入
金融庁は1月16日、第139回自動車損害賠償責任保険審議会(会長:藤田友敬東京大学大学院法学政治学研究科教授)を開催し、「2018年度料率検証結果」を踏まえて、19年4月以降の基準料率を据え置くことを決定した。17年4月改定時の予定損害率は105.9%とされていたが、それに対して18年度は乖離(かいり)率▲4.7%の100.9%、19年度は同▲5.2%の100.4%と若干の改善が見込まれるもののほぼ均衡と見られることが報告された。運用益積立金により累積収支赤字の補填(ほてん)をしてきた結果、17年度はその補填の累計額と運用益積立金の残高の合計は6471億円で、それらを考慮した累計の収支残は2875億円となり、これも想定の範囲内にあることから据え置きが決定された。また、JA共済の自賠責契約引き受け等に係るシステムとして「e―JIBAI」の採用について、金融庁長官からの同審議会への諮問に異議がないとの結論も得た。
損害率の改善の背景には、交通事故の発生件数が05年度から減少を続け、同死者数が01年以降、一貫して減少傾向をたどっていること、また同負傷者数も05年以後、減少していることが挙げられる。
18年度の収入保険料(共済の掛金含む)は7720億円、支払保険金(支払共済金含む)は7787億円で、赤字額は前年度131億円であったのが67億円にまで減少した。19年度は7712億円の収入で支払いは7742億円、30億円の赤字を見込んでいる。損害率は18年度が100.9%、19年度は100.4%の見通し。
料率検証における主なものを予測要因別に見ると、収入保険料については、保有車両数が18年度、19年度とも0.2%の増加とみて算出している。
支払保険金の事故率については、過年度事故率の動向および交通事故状況を参考として、18年度は死亡事故率4.1%減、後遺障害事故率1.3%減、傷害事故率は前年と同率、19年度はそれぞれ順に1.9%減、1.1%減、同率として算出。
平均支払保険金については、18年度賃金上昇率を0.2%増、治療費上昇率0.19%減、支払基準改定による上昇率を同率とし、19年度はそれぞれ順に0.1%増、0.19%減、0.05%増と見込んだ。
運用益については、17年度末で積立金残高は1485億円となったが、これは前回改定時の予測の範囲に収まっている。
一方、社費(経費)収支については、16年度が2118億円の収入社費であったが、17年度には2267億円に上昇。これは消費税の5%から8%への上昇に伴う支出増と16年度の収支残268億円の赤字分とを合わせて収支均衡とするために、150億円分引き上げたことによる。その結果、17年単年度は13億円の黒字が実現したものの、255億円の累積赤字があり、これもまた一定の年数をかけて解消する考えだ。
今回の審議会で、本年10月に予定されている消費税増税について、自賠責保険料本体は非課税だが、保険会社が支払う代理店手数料には課税され、現行の1660円に増税分2%を加えた1691円の手数料となることについて、過去の消費税導入時および増税時に、次期の料率改定まで「当分の間」、自賠責保険を引き受けている会社の社費で負担してきているので、今回もその前例に従った取り扱いをすることも合わせて認められた。
次いで、同審議会に遠藤俊英金融庁長官から、農業協同組合および農業協同組合連合会の行う自動車損害賠償責任共済で「e―JIBAI」システムを導入することに伴い、共済規定のうち共済契約に係るものの一部を変更することについて、行政庁が行う承認に対して同意することへの諮問があり、審議の結果、同意することに異議がないとの結論を得た。
e―JIBAIは、各損保・共済団体が共同で「保険会社のコスト削減」「利便性向上」などを目的に開発した自賠責保険・共済の契約などにかかるシステム。現在11法人が参画している。全国の自賠責・共済の証明書発行数の90%に当たる3900万件がe―JIBAIによって発行されており、実質的な業界標準システムとなっている。
農業協同組合および農業協同組合連合会は、独自にシステムを構築し運用していたが、今回、保険代理店(共済代理店)、契約者等の利便性向上などから、e―JIBAIの導入に踏み切った。
同システムでは、加入手続きについて紙の申込書を使用せず、インターネットシステムを通じた手続きにより行う。保険代理店が顧客の自動車購入時や継続検査(車検)時に必要となる各種手続きや、納税等の申請代行を行う場合、同システムと連携する別のインターネットシステム(自動車保有関係手続きのワンストップサービス)を通じてオンライン申請ができる。
これに関連する共済規定については、全国共済農業協同組合および農業協同組合で電子計算機(PC等)による加入手続きが可能となるよう変更する。その他、所要の整備として、自賠責共済証書は現行では要望があれば発行するとなっていたものを発行しないと変更する。現状では要望はないため現場に影響はない。この変更は19年4月1日から施行する。