2018.10.24 あいおいニッセイ同和損保 台風21号・24号事故登録でRPA活用、着手から2日間で稼働開始
9月4日に日本に上陸した台風21号は、西日本を中心に甚大な被害をもたらした。あいおいニッセイ同和損保では、東日本大震災の請求をも凌ぐ勢いで増加した膨大な事故受付を短期間で受け付けるため、事故受付から事故登録までの作業にRPAを導入した。東京・新宿の災害対応バックアップセンターに設けられたRPAルームでは、25台のロボットと4人のスタッフが約50人分の作業を代替している。同社が災害対策にRPAを活用したのはこれが初めてで、RPAライセンスはUiPath社から災害対応用として無償で提供を受けた。損害サービス業務部次世代損害サービス開発グループの鎌形祐司グループ長は、「多くのスタッフをお客さま対応に振り向けることができたことがRPA導入の大きな成果だ」と手応えを語る。
今年は6月以降、大阪府北部地震や西日本豪雨など、大型の自然災害が多発しており、同社では、バックアップセンターを常設化して、災害対策専用受付デスク(コールセンター)を増強するなどして迅速な対応に取り組んできた。
台風21号についても同様の体制で準備を進めていたが、鎌形氏は、その被害の大きさを踏まえ、9月27日の午後、以前からRPAを活用した業務効率化に取り組んでいた経営企画部のプロジェクト推進グループに、事故受け業務でのRPA活用について打診した。
鎌形氏からの要請を受けたプロジェクト推進グループは、すぐに特化チームを形成し、検討を開始。同日中に東京・恵比寿の本社から新宿のバックアップセンターに場所を移して開発に着手した。翌28日の午前中に、保険料入金確認と契約内容確認を担当する1台目のロボットが完成。その場でテストを行い、同日中に本格稼働を開始した。
開発期間2日というスピードで構築されたロボットは現場に大きな衝撃を与え、RPAの可能性を確信した。さらにRPAを効率的に利用することを目的に、契約者や代理店からの事故受付の段階で、事故登録に必要な情報を直接データ入力する業務のフローに見直した。結果、RPAによる事故登録を実現し、事故受付から事故登録までの一連の業務フローを完成させた。さらに10月1日に発生した台風24号の被害についても、同様にRPAを導入している。
新たな業務フローでは、保険金請求の連絡を受けたコールセンターの担当者が、入力箇所を最低限に絞った事故登録用のエクセルに事故登録を行うと、その内容をエクセルマクロが自動的にRPA宛てにメールで送信する。メールを監視するRPAが、届いたメールをフォルダに格納し、1時間ごとに結合マクロをキック。その後、マクロを使って、並び替えと採番を行ったファイルを人間が確認し、次のフェーズのRPAに渡すものと人間が処理するものを振り分ける。データを受け取った2台目のRPAが契約照会と入金照会を行い、自動的に印刷。その後、人間が初期点検と仕訳を行い、3台目のロボットが事故登録の入力を補助する。
特化チームを率いた経営企画部プロジェクト推進グループの佐古田有宏担当次長は、業務フローを考える際に重視したポイントとして、①ボリュームゾーンの見極め②業務品質を維持しながらの効率化―の2点を挙げる。
RPAを業務に最適化するため、佐古田氏は現場で全ての業務を確認した上で、自動化する業務と人間が行う業務を分類。最終的に、RPAやマクロで省力化したデータを人間が確認するという工程を踏むというアプローチを採用した。現在、RPAルームでは、25台のロボットに対して4人のスタッフが対応しているが、そのメンバーは、管理者の1人を除いては、派遣社員と入社1~2年目の社員のみだという。
短期間で高い成果を出した今回のプロジェクトの成功の理由について佐古田氏は、RPAやマクロのノウハウを持った人材を社内にそろえていたこと、また、そういったメンバーが即座に現場のメンバーと膝を詰めて検討する体制が構築できたことにあると分析する。
現場での対応に当たった鎌形氏は、RPAの導入について「まずそのスピード感に驚いた。RPAのおかげで、多くのスタッフが顧客対応などの人間にしかできない仕事に集中できている。今回のことで現場サイドとしてもRPAのことがかなり理解できたので、今後は他の業務での活用も考えたい」と語る。
今後同社では、今回得られたノウハウを通常業務で応用する道を探りつつ、今回の災害による保険金支払い業務での活用について検討を進める方針だ。