2018.04.27 生保協会定例会見 株式価値向上へ取組み 集団的エンゲージメントにも意欲
生命保険協会の橋本雅博協会長は4月20日の日銀記者クラブ定例会見で、株式価値向上に向けた取り組みを取りまとめたことを報告した。同施策は企業と投資家の対話の充実や課題意識の共有を目的にアンケート調査を行い、株式価値向上に向けたさらなる改善や施策について要望をまとめたもの。同協会では1974年から44年にわたって継続的に調査を行っている。2017年度は、従来のアンケート調査に加えて、生保会社がスチュワードシップ活動をより実効的に行っていくための研究活動を実施し、その概要を「特集」としてまとめた。この他会見では、次期協会長が第一生命の稲垣精二社長に内定したことを報告した。
17年度の株式価値向上に向けた取り組みでは、上場企業1136社、機関投資家213社を対象にアンケート調査を実施した。その結果を基に現状分析を行い、本年度はコーポレート・ガバナンス、経営戦略、財務戦略、対話の四つの観点で同協会からの要望をまとめた。昨年度から継続して要望している事項に加えて、本年度は企業に対して「ESG情報の開示の充実」を新たに要望している。
また、「特集」では、17年5月に日本版スチュワードシップ・コードが改訂されたこと等を踏まえ、スチュワードシップ活動の実効性を高めるため、同協会の「株式価値向上ワーキング・グループ」(WG)で行われたスチュワードシップ活動に関する研究活動についてまとめた。研究活動として、主にWG参加各社の取り組みの共有や新規取り組み(集団的エンゲージメント)について検討した他、生保会社以外の機関投資家や発行体企業との情報交換を実施したことを報告している。
取り組みの共有に関しては、対話を充実させる上で、対話に割けるリソースの不足を課題とする投資家が多い点に着目し、「機関投資家としてのWG参加各社は、限られた人員の中で、より効果的なスチュワードシップ活動を行う必要がある」との認識を示している。
また、集団的エンゲージメントについては、同協会の要望事項の実現に向けてより多くの企業に効果的にアプローチする手法を検討。今後も各社それぞれの考え方に応じた集団的エンゲージメントへの取り組みを検討していくとしている。
会見で記者から日本版スチュワードシップ・コード改訂から約1年を迎えての所感を問われた橋本協会長は、生保10社が参加したWGで得られたこととして、WG参加各社の知見の共有に加えて、信託銀行や投資顧問といった機関投資家、発行体企業などとの意見交換を挙げ、「スチュワードシップ活動の実態面に関して互いに学ぶ点が多かった。今後この研究成果を各社が生かしていくことになる」との見方を示した。
また、集団的エンゲージメントに関する試験的な施策として、東証1部上場企業のうち、株主還元やガバナンス、情報開示に関する取り組みの面で不十分とみられる企業52社に対して2月に連名の書簡で課題意識を伝えたことを明かし、さらに4月には情報開示を求める書簡を42社に送付したと説明。すでに送付先企業の一部から照会や対話に向けての要望が来ていると述べ、「(送付先企業からは)こうした動きに対しておおむね理解を頂いている。集団的エンゲージメントについては今後もう少し詰めていきたい」とした。