2017.07.27 生保協会 橋本新会長会見、「安心と健康」キーワードに
生命保険協会の第55代協会長に就任した橋本雅博氏(住友生命社長)が7月21日、生保協会会議室(東京都千代田区)で業界紙向けの就任会見を行い、所信を表明した。橋本協会長は、消費者目線に立った経営・高齢者対応・保険教育の推進の3分野を継続していくとした上で、「特に『安心と健康』を重要視していく」意向を示した。また、現在の社会保障制度や経済環境から、生命保険事業が貢献できる領域は大きいと強調した。
橋本協会長は冒頭、九州北部を中心とした豪雨での被害に言及し、犠牲者に哀悼の意を表するとともに、被災者に対しお見舞いを述べた。その上で、災害救助法が適用された地域の契約について、保険料払い込み猶予期間の延長や保険金などの迅速な支払いを実施しており、被災者が安心できるよう適切な対応をしていくと強調した。
超高齢社会の到来で社会保障給付が経済成長を上回って増大することが予想される中、政府は健康長寿社会の実現に向けた施策を講じている。こうした現状を踏まえ、保険金給付金の支払い額が21兆円となる生命保険業界について橋本協会長は、「公的保障を補完する役割を果たすとともに、各社が多様な保険商品の提供を通じて健康長寿社会の実現に向けて取り組んでいる」と説明した。また、経済環境については、雇用環境の改善など明るい兆しが見られるとした上で、生命保険業界は約370兆円の資産を有する長期安定資金の供給者として経済活動の活性化に貢献していると述べるとともに、「われわれの果たすべき役割、貢献できる領域は今後も大きい」との考えを示した。
こうした日本の社会環境において、生保協会ではこれまで消費者目線に立った経営、高齢者対応、保険教育の推進など大きく3分野を柱に取り組みを進めてきた。橋本協会長は、本年度もこの3分野に注力していくことに変わりはないとしながらも、「これまでの取り組みを一層推進していくために、特に重要視したキーワードは『安心と健康』」と表明。①安心社会の実現に向けて(生命保険事業の役割の発揮)②健康長寿社会の実現に向けて(健康で心豊かな社会づくりへの貢献)③生命保険事業の基盤整備に向けた活動(活力ある資本市場への貢献等)―の三つの施策を説明した。
①では、私的保障の提供という役割を果たすことで安心につながると説明。生保協会では、せいほ意見交換会や顧客の意見の集約・分析を通して、会員各社の創意工夫による顧客ニーズに合った最適な保障やサービスの提供、顧客本位の業務運営をサポートしていく。また、私的保障の必要性や生命保険の役割などをより多くの人に理解してもらうため、生保文化センターと協力しながら、保険教育の取り組みを進めていく方針。
②については、「長期にわたってお客さまの人生を支えることは、生命保険の使命」と強調し、さらに貢献を目指す分野との見解を示した。従来取り組んでいる社会貢献活動に加えて、健康寿命の延伸という観点から新たに健康増進サポートプログラムの全国展開を検討。「自治体等との連携による啓発運動の他に、企業や地域社会が実施する体を動かす健康づくりの取り組みをサポートしていきたい」と展望した。また、社会貢献活動3カ年計画に基づき、女性活躍推進や少子高齢化社会に対応した活動を推進していく。
③では、税制改正要望、国際的な規制や会計基準への積極的な意見表明などを実施する。特に、本年度はスチュワードシップ・コードの改訂を踏まえ、「株式価値向上に向けた要望に力を注いでいきたい」と積極的な取り組みを示唆した。
最後に、1年間これらの課題に全力で取り組んでいくと決意を表明した。