2016.09.05 生保協会が窓販手数料開示で留意事項を公表、上乗せやボーナス支払も含む
保険窓販手数料の開示の問題について、生保協会は9月1日、「市場リスクを有する生命保険の販売手数料を開示するにあたって特に留意すべき事項」(以下、「留意すべき事項」)をまとめ、公表した。会員各社が自主的に販売手数料を開示する場合に特に留意するべき事項について、参考となる考え方を整理した。生保協会では金融庁の「フィデューシャリー・デューティー」の趣旨を踏まえてさまざまな取り組みを行ってきたが、このほど大手銀行がそろって10月から顧客に手数料を開示する意向を示したことなどを受けて、協会として開示の指針を示すことで会員各社による透明性向上に向けた取り組みをさらに後押しする。
「留意すべき事項」は個人保険・個人年金保険分野での市場リスクのある生命保険の募集を念頭に置いたもので、会員各社が販売手数料などを開示する場合に、実務の参考に供する目的で策定された。拘束力はなく、同協会では会員各社が顧客本位の視点に立って自主的な取り組みを行っていくことが重要との考えを示している。同協会は、生命保険会社が「特に留意すべき事項」として三つの点を挙げた。
一つ目は「販売手数料」の定義に関するもので、「販売手数料等とは、販売手数料の名目で支払われるものに限らず、市場リスクを有する生命保険の募集に対して、生命保険会社から銀行等及び第一種金融商品取引業者(本紙注)に支払われる金銭を言う」(金銭には一定の条件を満たした場合に支払われるもの、例えば、販売手数料などの上乗せ支払いやボーナス支払いなどを含む)とするとともに、生保会社が銀行などに金銭以外のものを提供する場合(社会通念上、過度と見なされない場合を除く)についても、販売手数料開示の趣旨の潜脱とならないよう留意する必要があるとした。
二つ目は顧客に対する情報の開示媒体と方法に関するもので、「生命保険会社は、銀行等及び第一種金融商品取引業者が市場リスクを有する生命保険契約の募集を行う過程において、顧客が販売手数料等を認識できる媒体を銀行等及び第一種金融商品取引業者に提供する」こととし、特定の媒体に限定せず①商品パンフレットやビラなどの書面②端末による電磁的方法―などで提供することも考えられるとした。いかなる方法でも、顧客に対して分かりやすく開示を行うための措置を講じることを求めた。
三つ目では、主な開示事項として、①販売手数料等の料率または算出方法②当該販売手数料等が、保険業法第300条の2により準用される金融商品取引法第37条の3第1項第4号の「手数料、報酬その他の当該特定保険契約等に関して顧客が支払うべき対価」に追加して顧客が負担すべきものではないこと―の二つを挙げた。
販売手数料の体系が複雑であるなど、分かりやすく開示することが困難な場合には、生保会社が銀行などに提供する媒体上は、支払い上限の開示や一定程度幅のある開示とすることも考えられるが、その場合であっても可能な限り具体化に努めるとともに、具体的な販売手数料などの料率または算出方法に関して顧客から照会があった場合には、銀行などが回答するための措置を講じる必要があるとした。
「留意すべき事項」では、顧客向け開示資料の事例として、末尾に保険料払い込み方法と販売手数料の支払い方法ごとに五つのケースの記載例を掲載。開示資料の記載内容については、生保会社から銀行などに対して支払われる販売手数料を顧客が認識できるよう、会員各社の判断で適正な記載に努めることが望ましいとした。
(注)主に証券会社や金融商品先物業者を指す。有価証券の売買・勧誘、引き受け、店頭デリバティブ取引、資産管理業務などを行う事業者のこと。