2024.04.10 日本生命 新中期経営計画記者発表会開く 顧客本位軸に5戦略に取組む 人・地域社会・地球環境で社会課題解決に貢献

日本生命は3月21日、新中期経営計画「期待を超える安心を、より多くのお客様へ」(2024~26年)を発表した。同日、東京都千代田区の本社でメディア向けの発表会を開き清水博社長が新中計について説明し、顧客本位の業務運営を基盤に①国内保険事業のバリューアップ②国内における安心のさらなる多面化③海外事業の拡大④財務戦略のステージアップ⑤強固な経営基盤の構築―の五つの戦略を軸に取り組みを進めていく方針を示した。数量目標については、社会に提供する価値の拡大に向けて、26年度末の顧客数(国内グループ)1560万人、顧客企業数35万社、顧客満足度90%以上の確保、預かり資産112兆円、同社グループの成長に向けて、新契約価値3500億円、保有年換算保険料4.85兆円、基礎利益8600億円を目指すと述べた。

清水社長はまず、前中計の「Going Beyond―超えて、その先へ―(2021~23年)」について、数量目標は自己資本目標を除いておおむね達成する見通しだと述べた上で新型コロナ関連の給付金支払増加等によって自己資本は未達の見通しであるものの、リスク削減等の取り組みによってESRは233%(グローバルトップ水準)に向上し、高い健全性を確保していると説明した。
新型コロナの流行に伴う社会や事業への影響の拡大や金融経済環境の激変等想定を超える外部環境の変化が進む中、デジタル活用やグループ一体でのマーケット開拓による顧客数の拡大、リスク耐性の強化などを進めたことで、さまざまな成果を実現できた一方で、主力の営業職員チャネルは所期した生産回復には道半ばの状況だと3年間の取り組みを総括した。
現在の環境認識については、非連続で不確実性の高い事業環境であることから、事業環境の変化が大きく戦略次第で収支が大きく増減する可能性があるとの見方を示した上で、サステナビリティ経営が重要だと強調した。そうした点を踏まえ、長期安定経営には、サステナビリティ経営のさらなる高度化が必要だとし、サステナビリティ経営を通じて、同社グループが目指す「誰もが、ずっと、安心して暮らせる社会」の実現に向け、人・地域社会・地球環境の3領域で社会課題解決への貢献に取り組む考えを示した。
加えて、全社員が参加してサステナビリティ経営を体現するために社会課題解決への貢献に取り組む様子を社内外に発信する新プロジェクトを25年度からスタートする予定だと報告した。
また、「長期的に目指す企業像」として、「生命保険を中心にアセットマネジメント・ヘルスケア・介護・保育等のさまざまな安心を提供する“安心の多面体”としての企業グループ」を掲げ、各事業を統合的に強化し、安心の多面体としてのグループ経営を実現することで、社会に提供する価値拡大とグループを成長させる考えを示した。グループの成長については2035年に向けてグローバルトップレベルの健全性を確保するとともにグループ基礎利益と契約者配当を拡大するとし、グループ基礎利益を現行から約2倍に拡大することに加え、配当性向の目標水準を現行の50%程度から今後は、安定的に60%程度に引き上げる方針を示した。
今回の新中計については、中長期的な成長角度の引き上げに向け、販売業績や新たな収益軸の拡大を加速し、グループ経営を強力に推進する3年間と位置付け各戦略を推進するとし、また、新中計の「期待を超える安心を、より多くのお客様へ。」というテーマは、グループ一丸となってサステナビリティ経営を推進し、顧客や社会に同グループならではの新しい価値を生み出し広く届けるという思いがあると説明した。
取り組みを推進する五つの戦略のうちの一つ目となる「保険事業のバリューアップ」については、独自性と競争力を備えた保険・サービスの追求と顧客接点の高度化による付加価値の創造によって社会に提供する価値を拡大する戦略を通じて、営業職員チャネルに加え、代理店・金融機関窓販、デジタルチャネルの全マーケットでトップカンパニーとなり顧客数拡大を通じた中長期的な収益拡大を目指すとした。
具体的には、営業職員チャネルでは、3年間で新契約価値を23年度比8%増を実現し、業界ナンバーワンを盤石化することに加え、団体保険・団体年金マーケットにおけるプレゼンスを堅持し、グループの総合窓口としての機能強化を通じたグループ収益を拡大する。事務・サービス領域では、事務・サービスを通じてCXを高度化していくとした。
二つ目の「国内における安心のさらなる多面化」については、国内アセマネ市場でのシェア拡大を目指すとともに、ヘルスケア事業では、データ分析と健康施策を総合パッケージとしたサービス提供を行う事業モデルを確立する他、介護・保育事業については地域の自治体や事業者、住民をつなぐハブとなり、地域共生社会の実現に向けた事業モデルを確立する考えを示した。
三つ目の「海外事業の拡大」については、既存事業の成長と事業投資等を通じた海外事業の規模拡大を実現することに加え、資産運用では、変動する金融経済環境下でも安定的な運用益を確保し、地球環境等の社会課題解決にさらに貢献するとした。
四つ目の「財務戦略のステージアップ」については、健全性とのバランスに留意しながら成長投資・契約者配当を拡大する考えを示した。また、業界トップクラスの人的資本を構築するとした。
五つ目の「強固な経営基盤構築」については、機動的な商品開発やデジタル・DXによる提供価値拡大を支えるIT基盤の構造課題解決に向けた取り組みや開発体制の強化を推進することに加え、イノベーションを通じた各事業の競争力強化・提供価値拡大を実現する先進技術やビジネスモデルの調査や研究、開発体制を確立していくと説明した。
顧客本位の業務運営の取り組みについては、「お客さまの信頼の上にのみ事業が成立する」という認識の下、「お客さまの声を起点とした継続的なサービス向上」と「各事業戦略におけるお客さま本位の業務運営のPDCA」を基に「苦情・コンダクトリスクへの対応強化」と「お客さまの体験価値(CX)に向上」の二つを推進していく考えを示した。
最後に清水社長は、「新たな中計では、各事業を通じた社会に提供する価値の拡大によって、当社グループの成長と世界トップレベルの健全性水準、契約者配当の充実を実現していく」と述べた。