2024.03.29 SOMPOHD・損保ジャパン BM社保険金不正請求事案 業務改善計画を当局に提出

SOMPOホールディングスおよび損保ジャパンは3月15日、自動車保険金不正請求等への対応に係る金融庁の1月25日付業務改善命令に基づき、同庁に業務改善計画を提出した。今回の事態を厳粛に受け止め、行政処分や社外調査委員会(委員長:山口幹生弁護士ら3人)による原因分析・再発防止策の提言を踏まえ、保険金支払等管理態勢、代理店管理(保険募集管理)態勢、営業推進態勢、経営管理(ガバナンス)態勢および3線管理態勢を含む内部管理態勢をはじめとする各種態勢や、企業文化を抜本的に見直し、このような事態を二度と起こすことがないよう業務改善計画を策定したとしている。

■SOMPOHD
SOMPOホールディングスの業務改善計画は、①業務改善計画を着実に実行し、定着を図るための経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化②保険持株会社として、子会社である保険会社の業務の健全かつ適切な運営を確保するための態勢の構築(損保ジャパンの内部統制の十分性・実効性を適時・適切に把握し適切な経営管理を行うための方策を含む)③営業優先ではない、コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土を子会社である保険会社に醸成させるための態勢の構築(顧客の利益よりも自社の利益を優先する企業文化の是正策を含む)④経営責任の明確化―で構成される。
①では、「グループガバナンスの強化・実効性の向上」「事業会社(国内主要会社)の機関設計の見直し」「コンプライアンス担当役員の設置」「コンプライアンス室の新設」「内部監査担当役員の設置」「グループCxOと個社CxOとの相対関係の明確化」「専門人材育成の強化」―を図り、②では「子会社の重要施策等に関する内部統制等のモニタリング態勢」「一連の問題に関する情報連携・報告態勢」「内部監査態勢」―を構築するとしている。また、③では、「グループ企業理念体系の見直しと浸透・実践」「文化・風土浸透状況のフォローアップ」―を行う。
■損保ジャパン
次に損保ジャパンの業務改善計画は、①業務改善計画を着実に実行し、定着を図るための経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化②コンプライアンス・顧客保護を徹底するための態勢の確立③営業優先ではなく、コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成(顧客の利益よりも自社の利益を優先する企業文化の是正策を含む)④適切な保険金等支払管理態勢の確立⑤実効性のある代理店管理(保険募集管理)態勢の確立⑥経営責任の明確化―で構成される。
①では、「社外取締役の設置」「持株会社による損保個社の経営管理態勢」「第2線・第3線担当役員の機能強化」「委員会の新設」「監査等委員会監査の実施」「付議基準・稟議規程等の見直し」「経営会議付議事項の管理態勢の強化」「関連役員会議の規程化」「自社の過去事例や他社事例を参考とした学び」「社外(海外を含む)の視点の取入れ」を計画。②では、「3線管理態勢の抜本的な見直し」「不芳情報を適時に把握するとともに、社長を含む経営陣等に適切に報告されるための方策」「当局への適正な報告を確保するための方策」を計画する。③では、「営業推進態勢・営業目標の設定の見直し」「人事評価およびその運用の見直し」「経営レベルのコンプライアンス意識の醸成」「行動規範等の見直し」「顧客保護とコンプライアンスを重視したカルチャーの醸成、役職員の浸透に向けた取組み」「カルチャー変革担当役員・カルチャー変革推進部の設置」「品質管理担当役員・品質管理部の設置」を計画。
④の「適切な保険金等支払管理態勢の確立」では、「不正請求を防止するための態勢整備」について、「適正な損害調査を実施するための方策および顧客本位の視点から修理業者の紹介サービス等を実施するための方策」として、▽簡易調査の廃止▽技術アジャスターの損害調査業務への関与▽技術アジャスターの増員および損害調査業務へのシフト▽修理工場との修理費協定ルールの明確化▽保険金サービス部および保険金サービス支援部による損害調査に関する事後検証の実施▽デジタル技術活用による生産性向上手法の検討▽お客さまから紹介依頼がある場合に修理業者を紹介する際の対応方針の策定―を行う。また、「不正請求に係る予兆情報を一元的に管理し必要な対応を図るための態勢整備」として▽情報の迅速な共有と一元管理および不正予兆の把握(修理工場が関与する不正請求疑義事案が発生した場合の報告ルールを策定)▽不正請求を防止し追及するための態勢を整備(a修理工場の不正請求疑義事案を調査・追求する不正請求専門対策部署を設置、b保険金サービス支援部による技術アジャスター等に対する教育・研修等を実施)▽出向者からの予兆情報の収集―を行う。
さらに、「公正かつ的確な審査体制・手続きの確立(詳細な調査が未実施であることにより不適切な不払いとなっている可能性のある事案の検証、検証結果に基づく顧客対応を含む)」について、「保険金サービス部門の体制強化」として、▽保険金サービス部門担当役員の増員▽保険金サービス部門の人員確保▽保険金サービス支援部内の人材育成専門組織の新設―を、「大口代理店・契約者に対する保険金支払の適切性確保を含む、保険金サービス部門におけるルール整備とモニタリング強化」として、▽業務品質の定義▽支払承認ルールの再徹底とモニタリング強化▽保険金支払管理規程およびマニュアルの改定▽保険金サービス部門の独立性の確保(営業部門による不適切な介入の排除)―を、「保険金支払事案等の事後検証体制の構築」として、▽不正請求に基づく支払い、不適切な支払い等、事後検証の点検項目の追加▽事後検証制度における実効性・適切性向上に資する取組みの実施―を計画している。
⑤の「実効性のある代理店管理(保険募集管理)態勢の確立」では、「代理店の特性に応じた適正な保険募集を確保するための方策」について、「品質改善事案(最低水準の品質に満たない不適切な保険募集等の行為)に係る対応強化」として、▽品質改善事案のデータ分析およびモニタリング実施▽品質改善事案の内部管理委員会への報告―を行い、「苦情管理態勢に係る対応強化」として、▽カスタマーコミュニケーション部における苦情分析の深化▽コンプライアンス部における個別代理店への対応強化―を図る。「保険募集に課題を有する大規模代理店に対する適切な対応」として、▽お客さま保護体制確立に向けた毅然とした指導▽コンプライアンス部門によるモニタリングの強化―を図る。「契約者宛アンケートによる不適切募集の調査」として、▽お客さまアンケート内容等の見直し▽お客さまアンケートの適正運営のモニタリングの実施を図り、「不適切募集(早期消滅契約等)に関するモニタリング」として、▽代理店に対する監督・指導体制の構築▽モニタリング結果に基づく代理店への改善勧告等の実施を図る。「損害率の高い代理店などのデータ分析による予兆把握等の実施」として、▽「担保種目別の損害率」「苦情件数」等の多角的なデータ分析の実施▽対象代理店のモニタリング強化のための体制構築―を図る。
そのほか「代理店手数料ポイントにおける品質によるポイント反映ウェイトの拡大」「代理店不祥事件への対応(コンプライアンス部による代理店不祥事件への対応強化、代理店不祥事件のモニタリング)」「代理店に対する適切な出向管理の実施(出向先選定ルールの策定、出向者の管理ルールの策定)」を計画している。
なお、「経営責任の明確化」については2月29日に、BM社による保険金不正請求事案および保険料価格調整事案に関して、両社の役員の処分を発表している。損保ジャパンの白川儀一代表取締役社長社長執行役員、同飯豊聡代表取締役副社長執行役員が退任したほか、SOMPOホールディングスの櫻田謙悟取締役グループCEO代表執行役会長以下の取締役・執行役、損保ジャパンの西澤敬二取締役会長以下の執行役員の報酬の減額などの処分があり、SOMPOホールディングスグループCOO代表執行役社長の奥村幹夫氏、損保ジャパン代表取締役社長社長執行役員の石川耕治氏および常勤監査役の報酬の自主返上、両社の社外役員の報酬の自主返上も発表された。