2023.09.19 第一生命HD 「ネットゼロ移行計画」を公表、投融資先企業との対話に生かす狙い 国内保険業界で初の公表

第一生命ホールディングスは8月31日、気候変動対応をより統合的・実効的に推進するため、「ネットゼロ移行計画」を公表した。同社グループでは、グループ全体の事業活動を通じて排出する温室効果ガスを2040年度までに、中核事業会社である第一生命のサプライチェーンと運用ポートフォリオの温室効果ガスを2050年度までに、それぞれネットゼロとすることを宣言。投融資先企業との対話に生かす狙いだ。同社では「GFANZのガイダンスに基づくネットゼロ移行計画の公表は、国内保険業界で初」としている。

同移行計画では、第一生命を主体として、これらの目標達成に向けて第一生命グループが「取り組んでいること」「今後取り組もうと考えていること」の行動計画を掲載している。ロードマップとしては、同社グループでは、スコープ1+2で2040年度ネットゼロを目標に掲げ、中間目標として25年度の50%削減(対19年度)を計画している。また、第一生命のスコープ3カテゴリ15(ファイナンスド・エミッション―投融資ポートフォリオの温室効果ガス排出量)は50年ネットゼロに向けて、25年25%・30年50%削減(対19年度)を計画。また、第一生命のスコープ3(カテゴリ15以外)は50年度ネットゼロに向けて、30年度30%削減(対19年度)を計画している。
同グループが同移行計画の策定・公表により目指すのは、「温室効果ガス削減のために私たちがこれまで表明してきた取り組みを加速する」「目指すべきサステナブルな社会への道のりについての私たちの考え方を、投融資先を含むステークホルダーの皆さまに伝え、実効的な対話に基づき、連携・協働する」「サステナブルな社会に向けてグループ社員全員が意識を共有し、より一体感をもって取り組む」こと。
同グループでは、信頼性のある移行計画を策定するため、主に「GFANZ(ジーファンズ)」(注)における移行計画のガイダンスを参照。第一生命は、GFANZに発足当初から参画しており「世界の金融機関の気候変動対応をリードすることも第一生命グループの使命」との認識も示している。
第一生命ホールディングスの菊田徹也代表取締役社長CEOは「ネットゼロに向けた道のりを明らかにするべく、『ネットゼロ移行計画』を策定した。とりわけ、第一生命は、日本全国の契約者から預かる約34兆円の資産を長期にわたり幅広い資産で運用する機関投資家として、日本の経済発展に重要な役割を担っている。投融資先企業と協働し、積極的なエンゲージメントやトランジション・ファイナンスなど、脱炭素化に向けた取り組みを支援することで、ネットゼロ社会への移行に貢献していくことが重要」としている。
移行計画は「機関投資家として」「事業会社として」「GFANZの一員として」の三つの側面から策定しており、「第一生命グループは、『一生涯のパートナー』として、すべての人々のwell―beingに貢献し、社会とともに未来を築いていく。これからもサステナブルな社会の実現に向けて、地球環境、地域・社会の課題解決につながる価値を届けていきたい」との考えだ。
(注)GFANZ(Glasgow Financial Alliance for Net Zero)は、排出量ネットゼロを掲げる金融機関を統括するグローバル・イニシアティブで、世界約550の金融機関が参画している。今年6月にGFANZの日本支部が発足し、初代議長に第一生命会長の稲垣精二氏が就任した。国内の金融機関に脱炭素化に向けた移行計画の策定を促すため、同支部を通じて知見や成功事例を共有するほか、企業や関係省庁との連携も支援したい考えとしている。