2023.08.08 生保協会 「令和6年度税制改正要望」を公表、重点項目は保険料控除制度拡充1本に

生保協会は7月21日、「令和6年度税制改正に関する要望」を取りまとめ公表した。「重点要望項目」は「生命保険料控除制度を拡充すること」の1点のみで、拡充要望の内容について昨年までと異なり、「扶養している子どもがいる場合」と「上記以外の場合」とで分けた内容とした。「その他の要望項目」は、企業年金保険関係で「公的年金制度を補完する企業年金制度および個人型確定拠出年金制度の積立金に係る特別法人税を撤廃すること、撤廃に至らない場合であっても課税停止措置を延長すること」(昨年は「重点要望項目」)をはじめとする5項目、生命保険契約関係で1項目、資産運用関係で1項目、その他で1項目となった。

「重点要望項目」とした生命保険料控除制度拡充については、「人生100年時代を迎え、少子高齢化の急速な進展や働き方・ライフスタイルの多様化など社会環境が変化する中、持続可能な社会保障制度の確立と国民生活の安定に資するために、国民の自助・自立のための環境を整備する観点から、生命保険料控除制度を拡充すること」とし、所得税法上および地方税法上の介護医療・個人年金の各保険料控除の最高限度額を少なくとも5万円および3.5万円とすること、一般生命保険料控除については扶養している子どもがいる場合、6万円および4.2万円とすること、また、所得税法上の保険料控除の合計適用限度額を少なくとも14万円(扶養している子どもがいる場合、16万円)とすること―を要望した(別表参照)。
「要望理由」では、社会保障制度改革における自助努力の重要性と自助努力支援の必要性を指摘し、「社会保障制度改革を考える上では、少子高齢化の急速な進展や働き方・ライフスタイルの多様化、国・地方財政等の状況を踏まえると、『公私二本柱の生活保障』という理念のもと、公的保障・私的保障のそれぞれが、各役割を果たし、補完し合って、国民の生活保障を支えていく体制を構築することが重要」とし、「少子高齢化に伴う社会保障給付費の増加、多様化する国民の生活保障ニーズ、負担能力に応じた負担への移行等、社会保障制度を取り巻く状況から、加入者間の『相互扶助』の原理により保障を提供する生命保険に期待される『私的保障の支え手』としての役割は、社会保障制度改革を通じて、今後ますます大きくなっていくことになる」「生命保険を通じて国民一人ひとりの自助努力を支援・促進する生命保険料控除制度は、これまで以上に大きな役割を担うものであり、国民が安心して生命保険に加入し、継続できるよう、恒久的に継続されることが不可欠」とし、さらに「国民一人ひとりが必要な私的保障の準備を自ら行うことを促すための環境整備等の観点から、自助努力を支援する生命保険料控除制度を拡充していくことが必要」とした。
加えて、「遺族保障、介護医療保障、老後保障という三つの生活保障すべてについて、今後も公的保障(社会保険)と私的保障(生命保険)が補完し合い、将来の生活不安を取り除く体制を継続・強化することが重要」「『公私二本柱の生活保障』の理念に基づき、公的保障を基盤とし、個々の重視するニーズに応じて私的保障を選択的に準備することで、多様な生活保障ニーズを充足することが可能」「生命保険料控除制度の拡充は、さまざまな要因により経済の先行きに対する不透明感が高まる中においても将来に向けた保障や資産形成への備えを継続し、また各種リスクに対する備えの充実を行うための一助となることから、国民生活の安定・持続可能な社会保障制度への貢献を通じて、安心社会の実現に資するもの」としている。
必要となる所得控除限度額の水準では、一般生命保険料控除については、「遺族保障の充足の必要性の大きい、子どもを扶養している国民は、平均2289万円の死亡保険金が遺族の生活資金の備え等として必要と考えているが、実際に加入している死亡保険金額は平均1348万円であり、必要と考える死亡保険金額は実際に加入している死亡保険金額の約1.5倍強と大きく乖離している。そのため、一般生命保険料控除の現行の限度額4万円に加えて、子どもを扶養している対象層に対して、2万円の加算を行うこと」を要望した。
また、介護医療保険料控除については、「現状、利用率および1人あたり控除額が増加傾向にあり、特に1人あたり控除額は上限値である4万円に近付いている。将来、介護医療保障にかかる負担は増加していくことが見込まれることから、より一層の国民の介護医療保障の充実のため、現行の4万円から1万円加算を行うこと」を要望し、個人年金保険料控除については、「人生100年時代を迎え、より一層の充実を図る必要がある中、現行の4万円から1万円を加算し、少なくとも2011年12月以前の控除金額である5万円の水準とすることで国民の老後保障のより一層の充実を図ること」を要望した。
以上を踏まえ、制度全体の所得控除限度額については、それぞれの枠の拡充後の合計に基づき、「扶養している子どもがいる場合には少なくとも16万円、それ以外の場合には少なくとも14万円とすること」を要望した。
また、地方税についても、「『公私二本柱の生活保障』の理念に基づき、地方の福祉サービスと私的保障が補完し合って地域住民の生活保障を支える体制を構築するため、また、地方財政の健全化のためには、国税(所得税)と同様に地方税(個人住民税)においても、さまざまな私的保障の準備を幅広く支援・促進する制度である生命保険料控除制度は不可欠」とし、「地方税(個人住民税)についても所得控除限度額の内訳について現行の各枠2.8万円から、介護医療・個人年金の各保険料控除については少なくとも3.5万円とすること、一般生命保険料控除については扶養している子どもがいる場合、4.2万円とすること」を要望した(全体の所得控除限度額は7万円)。
「その他の要望項目」では、「Ⅰ.企業年金保険関係」で、▽公的年金制度を補完する企業年金制度(確定給付企業年金制度、企業型確定拠出年金制度、厚生年金基金制度)および個人型確定拠出年金制度の積立金に係る特別法人税を撤廃すること、撤廃に至らない場合であっても課税停止措置を延長すること▽確定給付企業年金制度において、現行のとおり拠出限度額を設定しないこと▽確定給付企業年金制度における中途引出し(脱退一時金)の在り方の検討にあたって、現行のとおり中途引出しを認めること▽確定給付企業年金制度について、企業の年金支給義務等を移転させる仕組みを導入するための措置を講ずること▽企業型確定拠出年金制度における退職時の中途引出し(脱退一時金)について支給要件を緩和すること―の5項目、「Ⅱ.生命保険契約関係」で、▽遺族の生活資金確保のため、相互扶助の原理に基づいて支払われる死亡保険金の相続税非課税限度額について、現行限度額(「法定相続人数×500万円」)に「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算すること、「Ⅲ.資産運用関係」で、▽不動産関連税制の総合的見直しを図ること、「Ⅳ.その他」で、▽生命保険業の法人事業税について、現行の課税方式を維持すること―を要望、各項目は前年とほぼ同内容となっている