2023.07.19 住友生命 23年定時総代会開催 「なくてはならない会社」への成果報告、新中計ではウェルビーイング提供領域拡大

住友生命は7月4日、大阪市のホテルニューオータニ大阪で「2023年定時総代会」を開催した。高田幸徳社長が22年度決算概要や事業報告、23年度の取り組み方針などを説明した他、決議事項として22年度剰余金処分案承認の件、社員配当金割当ての件、取締役11人選任の件など5議案を審議し、全て承認された。高田社長は、住友生命グループの全社、全役職員が目指すべき姿として「住友生命グループVisiоn2030(Visiоn2030)」を策定したことを報告した上で、新たな3カ年計画「スミセイ中期経営計画2025」の中でサステナビリティ重要項目に対する取り組みを進めるとともに、「ウェルビーイングデザインへの進化」「新領域でのイノベーションの実現」「収益構造改革」「グループ戦略」を通じて、ウェルビーイングを提供する領域を拡大していく方針を示した。

総代会で高田社長は3カ年計画「スミセイ中期経営計画2022」の最終年度となる22年度の取り組みについて、①社会に貢献する②社会に信頼される③社会の変化に適応する―の三つの基本方針を軸に人とデジタルで顧客を支え、「一人ひとりのよりよく生きる=ウェルビーイング」への貢献を通じた「なくてはならない」生命保険会社の実現に向けた取り組みを推進したと述べた。
特に、創業から不変のパーパス「社会公共の福祉への貢献」の実現という観点から、社会全体のサステナビリティに向け積極的に取り組みを進め、22年5月にサステナビリティに対する考え方と姿勢を示した「CSR経営方針」を「サステナビリティ経営方針」に改正したことを報告した。
次に、新型コロナウイルス感染症への対応について、デジタルツール等を活用し顧客の要望に沿った対応を行うなど顧客と従業員の感染拡大の防止を最優先とした取り組みを継続したこと、22年度は新規感染者数が過去最多となり入院給付金等の請求が増加したことから、迅速な支払いに向け人員増加等支払体制の強化に努めたと報告した。
個人保険分野では、社会環境の変化や多様化する顧客ニーズに対応しながら、営業職員や金融機関等代理店、保険ショップによるマルチチャネル戦略で保険販売・サービスを提供したことに加え、社会保障の補完という生命保険の役割を中心とした情報提供が重要になることから、引き続き教育強化の取り組みを推進していると説明した。
営業職員チャネルでは、“住友生命「Vitality」”の提供を通じて顧客のウェルビーイングに貢献することで「豊かで明るい健康長寿社会の実現」を目指しており、同商品は顧客の行動変容を促す革新的なサービスと評価され多くの賞を受賞したことや累計販売件数が140万件を超えこと、顧客の状況に応じたパーソナルアドバイスや疾病リスクレポートを提供する機能を追加した他、Vitality健康プログラムの一部を単独で提供する「Vitalityスマート」を発売したことを報告した。
サービス面では、「人ならでは」の価値にデジタルを融合し、顧客の状況に応じたサービスを提供することで、顧客体験価値向上を目指し、申込手続きのウェブ完結や、一部商品の初回保険料を「PayPay」で決済可能にするなど、保険事務手続き全領域でデジタルの活用を推進したと振り返った。
国内子会社の取り組みについては、メディケア生命では、保険ショップ・金融機関等で医療保険を販売した結果、22年10月に保有契約件数が150万件を突破し、また、ソニー生命にも医療保険の提供を開始したこと、アイアル少短では、機動的な商品開発に注力するとともにデジタルプラットフォーマーと連携したデジタル保険の展開を推進した結果、熱中症およびインフルエンザに特化した業界初の商品を「PayPay」アプリ内で提供したことを報告した。
海外事業については、国内事業の収益を補完し、保険金等支払余力の向上といった持続可能性を強化することで、海外出資先との情報連携やシナジーの発揮を通じて、事業イノベーション等による付加価値を創出する基本方針を軸に、海外事業債についてシメトラの投資顧問子会社への全面委託を開始したと述べた。
資産運用については、責任ある機関投資家として、中長期の安定的な運用収益の確保と持続可能な社会実現への貢献を目指し、欧米金利の大幅上昇や円安等の外部環境の大幅な変化に対して、将来の運用収益の確保やリスクコントロールの強化に向けて資産配分を大幅に変更すると説明した。
また、責任ある機関投資家としての取り組みとして、スチュワードシップ活動を通じた投資先企業との対話促進やグリーンボンド等の脱炭素化社会に向けて必要な企業等の資金調達に積極的に対応することなど責任投資に関わる国内外のイニシアティブ活動にも積極的に参加するとした。
経営基盤の強化について、経営管理面では、「顧客本位の業務運営」を推進する上で、「住友生命グループ行動規範」の浸透・実践を図り、心理的安全性の確保に加え、対話と行動を実践できる組織・チームづくりに取り組んでいるとした。また、経営方針に基づいた消費者志向経営を推進しており、その一環として、ジェロントロジー教育等の取り組みを進めた。
さらに、社長が本部長を務める「人財共育本部」を軸に事業戦略と人財戦略の一体化に向けた取り組みを推進。専門的な知見を持つ高度専門人材を社内外から登用するエグゼクティブ・フェロー制度を導入し、多様な人財の活躍をさらに推進することで、顧客・社会に新しい価値を提供していくと述べた。
さらに、職員一人一人が自らと組織の生産性を高める方法を主体的に考え、相互の対話を深める行動指針として、「シン・働き方コンパス」を作成した他、23年2月に移転した東京本社では、より一層の価値創造につながる働き方を追求しており、全社にその伝播を図るなど働き方改革のさらなる進化に取り組むと強調した。
2023年度からの新たな3カ年計画「スミセイ中期経営計画2025」については、「Vision2030」を実現するために、次の3年間に取り組むべき課題と対策をバックキャスティングする形で策定したとし、厳しい経営環境が想定される中でも将来の飛躍に向けた投資を行うなど、「Vision2030」の実現に向けた軌道を確立するための取り組みを着実に進めていく。「サステナビリティ経営方針」に基づくサステナビリティ重要項目に対する取り組みを進めるとともに、「ウェルビーイングデザインへの進化」「新規領域でのイノベーションの実現」「収益構造改革」「グループ戦略」の四つの取り組みを通じ、ウェルビーイングを届ける領域を拡大していくとして、具体的な方針が示された。