2023.07.18 「7月7日からの大雨」 九州・中国地方4県12市3町1村に災害救助法、損保各社 事故受付・支払対応を開始 保険料払込猶予等の特別措置適用

7月7日から10日ごろにかけて本州付近に梅雨前線が停滞し西日本を中心に大雨となり、気象庁は10日に大分県・福岡県に大雨特別警報を発令。大きな被害が出ていることを受けて、内閣府は「令和5年7月7日からの大雨による災害」として、10日までに島根県、福岡県、佐賀県、大分県の4県、12市、3町、1村に対し災害救助法を適用したことを発表した。

福岡管区気象台の発表(23年7月10日午前11時)によると、九州北部地方の一部では降り始めからの降水量が500ミリを超え、福岡県の添田町英彦山では24時間降水量が観測史上1位の値となった。降り始め(6日午後11時)から10日午前10時までの降水量(アメダスによる速報値)は、山口県下関市竹崎で331.0ミリ、福岡県添田町英彦山で595.0ミリ、佐賀県鳥栖で479.5ミリ、大分県中津市耶馬渓で417.0ミリ、長崎県松浦で220.0ミリ、熊本県山鹿市鹿北で182.0ミリとしている。
災害救助法が適用されたのは、7月10日午後4時半時点で、島根県(出雲市)、佐賀県(佐賀市、唐津市、伊万里市)、大分県(中津市、日田市)、福岡県(久留米市、八女市、筑後市、うきは市、朝倉市、那珂川市、朝倉郡筑前町、朝倉郡東峰村、八女郡広川町、田川郡添田町)。
中国財務局、福岡財務支局、九州財務局は11日までに、「令和5年7月7日からの大雨にかかる災害等に対する金融上の措置について」を発出し、災害救助法が適用された島根県、福岡県、佐賀県、大分県の4県内の被災者等に対して状況に応じ金融上の措置を適切に講ずるよう、預貯金取扱金融機関、証券会社等、生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険業者等に要請した。
損保協会は10日の発表の中で、被災者に向けて各種損害保険の契約の確認を呼び掛けるとともに、災害救助法が適用された地域で契約者が被害を受けた場合、各損保会社が火災保険、自動車保険、傷害保険などの各種損害保険(自賠責保険を除く)について継続契約手続きや保険料支払いを猶予する特別措置を実施すると発表した。継続契約の締結手続きの猶予では、災害救助法の適用日から2カ月後の末日(2023年9月末日)までに満期日が到来する継続契約の締結手続きについて23年9月末日まで猶予。保険料の払込猶予では、災害救助法の適用日から2カ月後の末日(23年9月末日)までに払い込むべき保険料の払込について23年9月末日まで猶予する。
生保協会は同じく10日、災害救助法が適用された地域で被災した生命保険契約者への特別取り扱いについて、①保険料の払込みについて猶予する期間を最長6カ月延長②必要書類を一部省略する等による保険金・給付金、契約者貸付金の簡易迅速な支払い―を実施すると発表し、契約紹介制度の案内を行った。
外国損害保険協会(FNLIA)、少額短期保険協会もそれぞれ特別措置を同様に発表している。
主な損保各社の対応状況は次のとおり。
■あいおいニッセイ同和損保(7月10日取材)
あいおいニッセイ同和損保は保険金支払体制(7月10日午後3時時点)として、自動車保険では久留米サービスセンターにあいおいニッセイ同和損害調査㈱本社からの支援動員を予定。火災保険では福岡県久留米市に立会拠点を設置し、本社手配の鑑定人2~3人を支援動員予定のほか、福岡火災新種サービスセンターからも立会拠点管理メンバーや火災新種アジャスターなどの支援動員を予定。また、佐賀サービスセンターへ本社手配の鑑定人1人を支援動員予定としている。
その他の取り組みでは、水災車両の保険金請求において、保険金の請求意思、および支払先口座の確認、損害車両の写真や見積もりの提出をチャットボットで完結させるほか、同社テレマティクス自動車保険の契約者車両について、立入禁止区域に停車していて現車の確認ができない場合、車両の位置情報を取得することで最終停車位置を判定し、現車確認を省略し全損認定を行う取り扱いを実施する(ニュースの情報や映像により明らかに全損と判断される場合)。同社の被害状況(7月10日午後1時時点)については、一部社屋に軽微な漏水を確認しているが、事業・業務の継続に支障はないとしている。
■損保ジャパン(7月12日取材)
損保ジャパンは、既存の災害対策本部を拡張し福岡災害対策本部(調査エリア:福岡県、佐賀県)を置き対応。事故受付は通常の体制で受電を行い、電話転送等の対応は行っていないという(12日時点)。保険金支払は福岡災害対策本部で50~60人規模で対応している。現時点での事故受付状況は、水災の受付が約400件。
今回の大雨の対応では、大雨特別警報の発表された福岡県・大分県で、LINE配信対象地域を対象に、「THEすまいの保険」の契約者(携帯電話番号情報がある契約者、福岡県1万945件、大分県2550件)を対象に、事故の受付方法等の案内を行った。同社営業部店等の被害はないという。
■三井住友海上(7月12日取材)
三井住友海上は、被害の大きかった九州、中国地方の損害サポート部に即日災害対策室を設置し顧客対応・保険支払対応を開始。九州については6月の台風・大雨の際に、災害対策室(30人規模)を設置しており、同対策室で引き続き顧客対応を実施している。
事故受付体制では、円滑な事故受付対応に向け、入電増に備え事故受付センターで受付要員を増員して対応。代理店からの事故受付は、ウェブ事故受付システムの活用を徹底することで、効率的な事故受付を実施している。事故受付状況は7月12日朝の時点で、自動車保険375件、火災保険551件。
同社では、自動車保険についてはSMSによる初動連絡も活用し、迅速に顧客とのコンタクトを実施。火災保険については顧客からスマートフォンで水災の浸水高の申告を受ける「水災デジタル調査」を活用し、迅速な保険金支払い手続きを行っている。
■東京海上日動(7月13日取材)
東京海上日動は、7月10日に福岡に災害対策室を設置し、情報収集や災害への対応を進めている。被災地での災害対策室の運営に加え、全国からリモートで被災地の業務を行うことができるマルチロケーション対応(事故報告の内容・情報を損害サービスシステム「GNet」に入力・集約し全国の各拠点と専用のバックオフィスに共有することで、被災地でなくても対応が可能な業務を分担して対応)等によって、迅速な保険金支払いに取り組む。被害を受けた顧客からの連絡に対しては、電話(東京海上日動安心110番)での受付に加え、ウェブでの受付も行っている。
デジタル技術の活用として、フィンランドのスタートアップICEYE社と連携して、福岡県筑後川周辺の衛星画像を取得し、水災の範囲・浸水高の特定ができるかを解析中とのこと。解析結果は被災地の災害対策室を中心とする各種業務へ活用していくという。また、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)に衛星画像解析の結果を連携し、速やかなボランティア体制の構築に向けた支援に取り組んでおり、被災地の報道が続く7月11日午前中の時点で、福岡県久留米市、大刀洗町、うきは市、朝倉市、福岡市、小郡市等の浸水を検知した地域の浸水状況について情報提供を行った。また、今後、顧客の損害確認に際しては、スマホアプリとペットボトルを活用した「自己申告方式」についても検討していくという。