2023.07.06 損保協会 新納協会長就任記者会見、保険料調整問題、再発防止急ぐ考え示す 自然災害対応の啓発活動等に注力

 損保協会は7月3日、6月30日開催の第12回定時社員総会で協会長に選任された新納啓介氏(あいおいニッセイ同和損保社長)の業界紙向け就任記者会見を実施した。新納協会長ははじめに、あいおいニッセイ同和損保のトップの立場から、大手損保4社が企業向けの保険料を事前調整していた問題について謝罪し、全容の解明と再発防止策の策定を急ぐ考えを示した。また、今後1年間の同協会での活動に向けて、自然災害対応やリスク情報に関する啓発、アジアの損保事業発展への貢献といった重点課題に取り組むと所信表明を述べた。(本日付2~3面に新納協会長ステートメント全文を掲載)

冒頭、新納協会長は、あいおいニッセイ同和損保のトップとしてコメントし、同社を含む大手損保4社の社員が法人の顧客(1社)を保険契約者とする共同保険契約の更改対応において事前に保険料調整を行ったと報じられている件について、同社が金融庁から報告徴求命令を受領したと報告した。
続けて、「現在、当社では事実を確認した上で、本件についての全容解明に取り組んでおり、同種の事案がないか調査を進めている。今後はその結果を踏まえ、再発防止策を策定した上でそれを着実に実行していく。このたびは、当社社員の不適切な行為によって、お客さまをはじめ、関係者の皆さまに多大なご迷惑とご心配をお掛けしていることを大変重く受け止めるとともに、心よりお詫び申し上げる」と述べ、謝罪した。
また、今後1年間の同協会の活動について触れ、「現在、自然災害の多発など、先が十分に見通せない不安定な状況が続いているが、こうした状況下で損保業界が機能を発揮するためには、大前提として顧客や取引先との強固な信頼関係、損保会社としての規律ある活動が不可欠」との認識を示した上で、「法令順守や保険金不正請求撲滅への取り組みをはじめ、顧客や代理店に寄り添う事業活動を行いつつ、ステートメントに掲げた『自然災害対応に向けた啓発』『リスク情報をより必要とする方々に向けた啓発』『アジア各国における損害保険事業の発展に向けた貢献』の三つの重点課題への取り組みを着実に進めていく」と所信を表明した。
次に、同協会企画部会長の鈴木理大氏(あいおいニッセイ同和損保)が、6月30日の協会長就任後の一般メディア記者会見での記者からの質問に対する新納協会長の主要な回答を代理で発表した。
「協会長としての抱負、注力したいことは何か」という質問では、会員各社の規律ある活動をベースに、先述の三つの重点課題を中心に取り組みを着実に進めていくと答えるとともに、今年が関東大震災から100年という節目の年でもあることから、「自然災害対応に向けた啓発」には特に力を入れたいと回答したと報告した。
6月28日に損保料率算出機構が参考純率の引き上げを発表した火災保険の今後の展望についての質問には、同協会で集計している会員会社の収入保険料や支払保険金の推移を見ても、大規模な自然災害の多発化、建物の老朽化、建築資材の高騰などによって火災保険の収支状況が悪化していることは事実であるとした上で、再保険キャパシティーも縮小していると述べ、火災保険をめぐる事業環境は大変厳しいとの認識を示した。
加えて、「たとえ会員各社が値上げを行う場合であっても、保険料への単なる転嫁とならないよう、各社がDXを通じた一層の事業効率化、コスト削減などを推進することで、継続的な保険料の上昇幅の抑制、あるいは持続的な保険提供を続けることが極めて重要だ」と語ったと報告した。
7月3日の記者会見ではその後、新納協会長自らが記者からの質問に回答した。
自動運転などの進化する技術の生かし方を含めた、損保業界としての今後の展望を問う質問に対しては、「当社で言えば、テレマティクス自動車保険で新たなDX機能を取り入れて、より事故を未然に防ぐ、あるいは事故の早期解決を促すといったサービスに結び付く商品の開発に注力しなければならない」と述べ、その行い自体が保険金支払いの抑制につながるとの見解を示した上で、現状の厳しい事業環境を切り抜けるには、主力商品である火災保険、自動車保険での収益改善を図ることが重要だと強調した。
また、11月に日本で初開催される保険監督者国際機構(IAIS)の2023年の年次総会で、損保協会として何をアピールするのかという質問については、現在はまだ金融庁と協議中だとした上で、「ただ、自然災害による経済的な損害のうち、保険でカバーできなかった部分を指す『補償ギャップ』が最大の論点になるだろう」との見解を示し、「アジアの中で最も進んだ保険市場の一つである日本として、まずは自然災害リスクとは何かを認識していただくための発表を行うつもりだ」と語った。
続けて、「自然災害のリスクを知っていただいた上で、日本の防災・減災の取り組みを知っていただき、保険商品の認知につなげる。ここの周知を段階的に行っていきたい」と付け加えた。
最後に、あらためて協会長としての抱負を問われ、「会員各社の決算状況をご覧いただいても分かる通り、収支のところでは厳しい局面を迎えている。一方で、こういう時代だからこそ、損保の機能がはっきり分かるタイミングでもあると思っている。求められる期待に応えられるよう、気を引き締めて職務に臨みたい」と力強く回答し、会見は終了した。

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