2022.07.07 PHRサービス事業協会(仮称)設立へ SOMPOHD、住友生命、MICINが参加、保健医療情報利活用のルールを整備

 製薬・医療機器をはじめ、健康アプリや保険等のPHRサービス事業を展開する企業15社が業種を超えて集まり、6月16日に「PHRサービス事業協会(仮称)」設立宣言を行った。健康・医療に関するさまざまな主体が持つデータを効果的に利活用するための標準化や、PHRサービスの品質向上を促進するためのルール整備などについて検討していく。23年度早期の設立を目指しており、保険業界からは、SOMPOホールディングス、住友生命、MICIN少短をグループ企業に持つ㈱MICINの3社が参加。経済産業省が、「PHRサービス産業が発展し、利用者の利便性向上と新しい産業創出に向けて、今後も連携していく」としている。

 PHRとは Personal Health Record の略で、生涯にわたる個人の保健医療情報のこと。健診(検診)情報、予防接種歴、薬剤情報、検査結果等診療関連情報および個人が自ら日々測定するバイタル等まで含まれる。PHRサービスは、PHRデータを利用することで日常や医療機関受診時での利活用ができ、新たな産業の新興が見込めるサービスのこと。今後の産業発展のためには事業者の協調により、データの標準化や、セキュリティ・リコメンデーションに係るルールの整備を進めていくことが必要とされており、このような認識のもと、PHRサービス事業で中心的な役割を果たす多様な業種の企業トップ15社が集まり、PHRサービス事業者団体の設立を宣言するとともに、団体の今後の方向性(団体設立ステートメント)を発表した。
 「PHRサービス事業協会(仮称)」設立宣言は6月16日、東京都港区のANAインターコンチネンタルホテル東京で開催され、標準に係る検討事項、サービス品質に係る検討事項が示され、団体設立ステートメントが発表された。前記3社のほか、▽㈱Welby▽エーザイ㈱▽㈱エムティーアイ▽オムロン㈱▽KDDI㈱▽塩野義製薬㈱▽シミックホールディングス㈱▽TIS㈱▽テルモ㈱▽日本電信電話㈱▽㈱FiNC Technologies▽富士通㈱(50音順)が参加。
 団体設立ステートメントでは、「設立趣旨」を「国民が安全かつ簡便にPHRを活用して、個人に最適化された医療やヘルスケアサービスを享受できるよう、情報の可視化や行動変容、医療従事者との共有等の商品・サービスを提供するPHRサービス事業者による団体を設立する。これにより、多様なステークホルダー間の協調を促進し、PHRサービス産業の発展を通じて、国民の健康寿命の延伸や豊かで幸福な生活(Well―being)に貢献する」とし、「目指すもの」を「PHRサービス産業が国民の健康寿命の延伸や豊かで幸福な生活(Well―being)へ貢献するため、以下の実現を目指す。①PHRサービス産業の協調と競争を通じた持続的な発展と国際競争力の確立②デジタル技術と科学的知見等を活かした利便性と信頼性の高い顧客価値の創出③幅広い業種によるPHRサービス産業への参画を通じたオープンイノベーションの促進」としている。
 「23年度設立に向けた主な活動」は、「団体設立に向け、以下を行う。①『本団体の活動方針』と『PHRサービス産業の将来ビジョン』の策定②設立準備(ガバナンス・オペレーション体制、事業・活動計画、予算、登記手続等)」で、「団体における当面の主な取り組み内容」は、「本ステートメントや『PHRサービス産業の将来ビジョン』も踏まえ、以下を行う。①ステークホルダー(医療・介護関係者、アカデミア、行政等)との対話②必要な政策の在り方に係る提言③事業環境整備(協調領域に係る自主ルール、サービス品質第三者認証、マイナポータルとのAPI連携、消費者啓発の在り方等)」としている。
 団体設立ステートメントを担当した分科会1で幹事を務めたSOMPOホールディングスの櫻田謙悟グループCEO取締役代表執行役会長は、「日本は健康・医療に関するリアルデータの宝庫であり、データを活用したソリューションが提供できる。この分野における民間分野でのイノベーションを起こしていくため、業種の縦割りでなく、横の連携の会議体が必要であり、それが、このPHRサービス事業協会。お客さまに何ができるかを意識してPHRサービス産業を発展させ、健康寿命延伸、労働生産性の向上、国際競争力強化をオールジャパンで実現していく。この宣言に沿ってしっかり進めたい」と述べている。
 設立宣言に参加した住友生命は同日、「人生100年時代と言われる現在の長寿社会において、お客さま一人ひとりの健康状態の向上に貢献すべく、2018年発売の健康増進型保険“住友生命「Vitality」”を通じて、健診(検診)結果をご入力いただき、ポイントを付与する等、PHRを活用している。“住友生命「Vitality」”発売以降培ってきた知見等を踏まえ、PHRサービス事業者団体の設立、ひいてはPHRサービス産業の健全な成長に貢献していく」と発表している。
 また、MICINも「オンライン診療のリーディング企業として、またDTx事業を推進する企業として、個人情報の保護やセキュリティの担保などに取り組んできた。これらの経験・知見を生かし、本団体設立に向けたメンバーならびに分科会3の副幹事として参画する。分科会3では、業界全体の品質や信頼性の向上に向け、PHRサービスの品質管理につながるルールや考え方などを検討していく予定。今後事業者各社と連携し、同団体設立ならびにPHRの活用普及に貢献していく」とコメントを発表している。