2022.03.17 東京海上日動 地域金融機関向け2商品発売、オペリスクを補償する賠責提供、金融機関アドバイザリーM&Aの包括補償も

東京海上日動は2月から地域金融機関(地方銀行、信用金庫、信用組合など)向けに二つの新商品の販売を開始した。地域金融機関が抱えるオペレーショナルリスクを幅広く補償する賠償責任保険と、地域経済の発展に貢献するための「金融機関アドバイザリーM&A保険包括補償(表明保証保険)」の二つ。

 2月17日に東京海上日動が販売開始を発表した地域金融機関向け賠償責任保険は、地域金融機関が抱える多種多様なオペレーショナルリスク(以下、オペリスク)を幅広く補償する賠償責任保険で、地域金融機関は同商品を活用することで、オペリスクによる第三者への賠償責任に備えることができる。
 また、2025年3月には新たな資本規制の導入が予定されており、新資本規制では、一部の地域金融機関はオペリスク損失の過去実績を用いて、その管理水準を自己資本比率に反映させることが可能となり、今後、地域金融機関にとってはオペリスクへの対応のさらなる高度化が重要になると見込まれている。一部の地域金融機関では、同商品の手配により、オペリスクに必要な自己資本額を軽減し、資本効率を向上させることができるようになる。
 同商品の補償内容は、地域金融機関の業務遂行において顕在化したオペリスクに伴い、顧客等の第三者に経済損失が発生し、損害賠償請求を提起された場合に当該地域金融機関が負担する法律上の損害賠償金や争訟費用を保険金として支払うというもの。
 また同商品は、法や規制に抵触する、またはそのおそれがある事象が生じ、公的機関から調査を受けた場合に、被保険者が支出した調査への対応費用(弁護士費用等)を補償する特約を任意付帯できる。
 同商品が補償するオペリスクは、地域金融機関の業務に伴い損失の発生するリスクで、事務、システム、規制・制度変更、レピュテーション、コンダクト、法務、人的、情報などさまざまな分野にまたがる。具体的には、融資業務における決済遅延や手形の振出しにおける事務ミス、M&A(含む事業継承)のアドバイザリー業務におけるデューデリジェンスの不備、高齢者への不適切な金融商品の販売、サイバー攻撃やシステム不具合による取引停止などが例示されている。
 一方、市場リスクと信用リスクは補償の対象とならず、与信取引において、債務者の財務状況が悪化することにより債権の回収ができない状態に陥る市場リスク、金利、為替、債権、株式、商品等の市場価格の変動により、保有資産の評価額が変動する信用リスクなどは補償されない。
 金融機関の抱えるリスクには、信用リスク、市場リスクに加え、業務遂行に伴うオペリスクがあるが、人口減少や少子高齢化、低金利、規制改革などの環境変化に伴い、地域金融機関は持続可能なビジネスモデルへの変革を迫られ、また、感染症対策やデジタル活用もあり業務オペレーションは大きく変化している。地域金融機関がビジネスモデルや業務オペレーションの変革を進める中、予期せぬ損失や金融システムへの深刻な影響等、オペリスクが高まるおそれが指摘されている。同社では、本商品の販売を通じて、地域金融機関のビジネスモデル変革を支え、地方創生を後押ししていくとしている。
 また、同社では2月21日、「金融機関アドバイザリーM&A保険包括補償(表明保証保険)」の販売を開始することを発表した。表明保証保険とは、M&A取引における売主が買主に対して、売主自身や買収対象会社についての財務や税務等に関する開示事項に虚偽がないこと(開示事項が真実かつ正確であること)を保証(表明保証)した場合に、M&A取引後に発覚した表明保証の違反によって買主が被る損害を買主に代わって保険会社が補償する商品。
 今回発売した商品は、金融機関が買主アドバイザリーや仲介を担当するM&A案件を包括的に対象とするもので、デューデリジェンス(企業調査、以下、DD)要件の設定、補償内容の定型化を行うことで、引受審査の簡略化と割安な保険料水準を実現している。
 ①金融機関が買主アドバイザリー契約または仲介契約を結び、一定基準のDDが実施されたすべてのM&A案件に保険が付帯されるため、東京海上日動による案件ごとの引受審査が不要となる②金融機関が契約主体となり保険料を負担するため、譲受企業買主が直接保険料を負担することなく補償が受けられる③中小企業の事業承継においてニーズの高い「財務」「税務」に関する表明保証違反を補償対象としている④補償額はM&A案件の規模に応じて500万円または1500万円となる―といった点がポイントで、中堅・中小企業の円滑な事業承継を支援する。
 中小企業庁によると、25年までに平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人、うち約半数の127万人が後継者不在と見込まれている。後継者不在による廃業リスクは社会課題となっており、こうした課題を解決する手段の一つとして事業承継M&Aへの関心も高まっている。20年の事業承継M&Aの件数は616件で、10年と比べて4.4倍にまで増加している。
 また、中小企業の34.5%が取引金融機関に事業承継を相談しており、事業承継M&Aでのマッチングについては、金融機関からの紹介が28.5%と最も多くなっている(中小企業庁「中小企業の経営資源集約化等に関する検討会取りまとめ」による)。
 このような中、東京海上日動は金融機関を通じた安心な事業承継を実現するために同商品を販売することにした。