2019.01.08 フィッチ 19年保険業界を展望 資産運用が最大リスク要因 保険引受事業は安定的に推移

フィッチ・レーティングス(フィッチ)は昨年12月、2019年の保険業界の展望についてリポートを発表した。それによると、日本の保険会社にとって最大の潜在的リスクは引き続き金融市場にあるとみる一方、保険引受事業のファンダメンタルズは国内外ともに総じて安定的に推移すると予想している。

 日本で超低金利環境が続く中、保険会社はより高い利回りを求めて海外のクレジット・スプレッド商品への投資を拡大している。こうした商品には流動性の低いインフラ・ローンも含まれ、一定の為替リスクも伴う。大半の大手保険会社は、国内株式へのエクスポージャーについても維持するとみられる。フィッチは日本の保険会社にとって最も重要なリスクは金利リスク、株式市場リスク、為替リスクおよび信用リスクであり、最大のリスクは引き続き金融市場にあるとみている。
 日本の生損保各社に対する格付けアウトルックは「安定的」から「強含み」に変更された。18年10月4日付の公開草案で提案されている格付基準を採用することになった場合、「トップダウン」のソブリン格付けによる制約ではなく、強化した「ボトムアップ」のカントリー・リスク分析を用いることになる。財務ファンダメンタルズおよび事業特性を踏まえると、フィッチが格付けを付与している日本の生損保会社の保険会社財務(IFS)格付け10件のうち、6件について格上げを検討することになるとフィッチは予想している。
 また、保険引受事業のファンダメンタルズは全般的に安定的に推移するとみている。
 生保各社の19年の利益は安定的に推移すると予想。各社が第三分野商品の販売に注力していることから、保障性商品に対する需要は底堅いとみる。各保険会社は、収益性の低い貯蓄性商品の販売を抑制し、所得補償保険や介護保険といった新たな保障性商品の販売を促進する可能性が高い。フィッチは、今後数年間は第三分野商品の成長傾向が続くとみている。
 損保各社は、各保険種目の保険引受リスクに応じて保険料を維持または引き上げているため、適切な保険引受利益を維持する可能性が高い。フィッチは、各社が19年には国内自動車保険の保険料率を引き上げることで収益性を維持すると予想している。18年4月から9月までに複数の大型台風の発生等により、大手3損保の各グループにおける国内自然災害によるネットベースの付保損害額は2000億円程度となったが、リスク管理実務全般の改善と堅調な海外保険事業に支えられ、各損保グループは適度な収益性を維持。各損保グループの事業の国際的な分散により、各グループの大規模自然災害リスクは引き続き緩和されると予想する。
 国内市場がすでに成熟していることから、海外事業の拡大は今後も続くとみる。大手4生保グループおよび大手3損保グループはすでに米国や英国、オーストラリアで大規模な保険会社の買収に着手している。大手保険グループは海外の子会社を適切に管理しており、この点はリスク分散という観点からプラスである上、損保グループが直面する自然災害リスクの緩和にも寄与している。