2017.12.06 損保協会 創立100周年記念式典、環境変化に向け取組加速
5月29日に創立100周年を迎えた損保協会は11月6日、東京都千代田区のイイノホールで創立100周年記念式典を開催した。原典之協会長は、損保業界が社会を支えるインフラとして着実に成長してきたことを振り返るとともに、引き続き業界が成長していくには、これまで以上にフォワードルッキングな視点を持ち環境変化に対応していくことが必要との考えを示した。式典には業界関係者ら約430人が参加した。
開会あいさつで原協会長は、損保協会設立当時の日本の損保マーケットについて、「海上・運送保険が約8割を占めていた他、収入保険料は全社で4600万円と、現在の物価水準に換算しても400億円に満たない規模だった」と振り返った上で、社会の発展に伴い、海上・運送保険から火災保険や自動車保険に比重を移しながらマーケットは大きく成長し、収入保険料規模は全社で8兆円を超え、当時と比べて200倍以上に拡大したとし、「損保業界はこの100年の間、社会を支えるインフラとして環境変化に適切に対応することで、着実な成長を遂げてきた」と語った。
一方、これからの社会はAIやビッグデータなどの技術革新に加え、グローバルな人口動態の変化や自然環境の変化などにより、これまでより速いスピードで変化していくことが見込まれることから、これまで以上にフォワードルッキングな視点を持って環境変化に対応していくことが必要だとの考えを示した。また、サイバーリスクの高まりや高齢化社会の進展等、最近の環境変化を踏まえ、同協会では昨年、自動運転車両の事故に関する法的整理を行ったところだと述べ、「このような取り組みを今後一層加速していくことが重要だ」と強調した。
記念式典の趣旨については、損保業界の課題認識を踏まえ、業界が目指すべき将来像を考えるものだと説明し、「技術革新による社会の変化や損保事業への影響・対応について、関係者で将来のビジョンを共有することにより、今後の環境変化に向けた取り組みを一層力強く進めていきたい」と述べた。また、「損保業界の次代を担う中堅・若手の職員が、将来に向けて何らかの気付きを得られれば有意義だ。先人たちの取り組みや有識者の意見から、新しい時代の損保業界に何が求められるか感じ取ってほしい」と呼び掛けた。
来賓あいさつで、内閣府の越智隆雄副大臣は「自動車保険の総契約台数は減少傾向にあり、中でも若年者の減少が顕著だ。一方、IT技術の進化やサイバー等の新たなリスクの出現などに伴い新たな保険ニーズが出てくる可能性がある」と述べるとともに、「こうした経営環境は自動車保険の販売拡大により収益基盤を強化していくという伝統的なビジネスの限界を示す一方で、損保会社が変化に適切に対応し、求められる保険ニーズに応え続けることで、損害保険の重要性をさらに社会に認識していただくチャンスでもある」との考えを示した。
また、同協会が取り組む自賠責保険の広報活動や交通事故被害者への支援事業、地震保険に関する広報活動、東日本大震災や熊本地震といった巨大災害への対応などについて触れ、「損保会社が変革し、社会・経済の大きな変化に対応していくことを支援する上で、損保協会が大きな役割を果たしてきたことが分かる。時代の変化に対応し、顧客や社会の要請に応えていくことは、個々の保険会社の責務ではあるが、損保業界共通の課題も存在することから、損保協会においても引き続き対応をお願いするとともに、政府としても損保業界の持続的な発展に向けて、直面する課題に対して共に考え、解決していきたい」と話した。
基調講演と有識者講演後に行われた会員各社若手職員代表による決意表明では、若手職員を代表して損保協会の海老原由香氏が「今、世界ではリスクの巨大化・多様化・複雑化が進んでいる。また、人口構造の変化や技術革新、国際化の進展など、業界を取り巻く環境はこれまで以上に大きく変化していくことが予想されるが、時代が変わっても社会に安心・安全を提供するという損保業界の使命は変わらない。環境の急速な変化や新たなリスクの出現に不安を感じる人がいる。その人々に対し、私たちはリスクのプロフェッショナルとして困難に立ち向かい、不安を安心に変えていくことで、人々の期待に応えていきたい」と強調。「そのためには私たち一人一人が自分自身と社会に真摯(しんし)に向き合い、行動し続けることが重要だ。私たちの仕事や役割はさまざまだが、この先も損保業界の一員として、それぞれが持つ力を発揮し、次の世代にも誇れるような安心・安全な社会の実現に向けて共に進み続けていきたい」と決意を語った。
閉会あいさつでは、西澤敬二副会長が基調講演や有識者講演を振り返り、「パネリストの先生方から、たくさんの貴重な示唆を頂いた。今後、損保業界が未来に向けてさらに飛躍するためのヒント、アドバイスとして参考にさせていただきたい」と述べた。若手職員代表の決意表明については、「皆さんはまさに損保業界の未来の担い手だ。既成概念にとらわれることなく、創造性やチャレンジ精神を大いに発揮して社会に貢献していってほしい」と期待を寄せた。
損保業界を取り巻く環境については、「時代は今、先行きの不透明な大きな転換期を迎えているのかもしれない」とした上で、「とりわけ、第四次産業革命ともいわれており、デジタルの進化は保険ビジネスにもさまざまな変革の波を起こしていく可能性がある」と指摘。このような時代だからこそ、人々や企業が安心して前に進めるよう、安心・安全に資する商品・サービスを提供することが社会的使命だとし、「私たち一人一人が“お客さまと誠実に、真摯に向き合い、そして何よりもお客さまの立場に立って、徹底的に考え続ける”ことが、損保業界の成長の原動力になると確信している。当協会は、今後とも『安心かつ安全な社会の形成』の実現を目指し、歩み続けていく。引き続きご理解とご支援をお願いしたい」と述べ、締めくくった。