2017.11.21 損保協会 大学の損保連続講座で新たな取組み、他分野専門家も講師に
損保協会は10月23日、埼玉大学連続講座で他分野の専門家を講師とする新たな取り組みを実施した。15回の講義の一コマを使い、異なった視点から損害保険教育の充実を図った。今回のトライアルでは、東日本大震災に関連するテーマを取り上げ、マスコミの視点から震災を追い続ける河北新報社の対応を紹介した。
損保協会では1998年度からの第1次中期基本計画で損害保険に対する意識啓発と理解促進を図るため、従来の高校教育に加え、2002年度から大学生を対象とした連続講座を開設し、損保協会の役職員を中心に講師を派遣した。連続講座は1大学15回の連続で損害保険について講義し、修了者には単位を授与するもので、これまで全国14の大学に広がっている。
今回、連続講座約15年の実績を踏まえ、あらためて損害保険教育の意義と目的を再検討し、他業界で活躍する専門家による講義を一部導入し、講座内容をさらに充実させることとした。
10月23日に埼玉大学で実施したトライアル講義では、「東日本大震災、そのとき何があったか~河北新報のいちばん長い日」をテーマに、当時の状況や地元マスコミの対応を振り返り、今後の災害や震災に向けた日ごろの備えを解説した。
講義を担当した河北新報社防災・教育室の武田真一氏は、河北新報が取りまとめた被災地の写真を学生たちに披露した上で、東日本大震災の現状に言及。いまだ行方不明者2546人の捜索が続く状況や自殺・孤独死問題、さらに児童と教師が犠牲となった石巻市大川小学校の訴訟が継続している状況などを示し、「震災は終わっていない」ことを学生に伝えた。
さらに、武田氏は「災害を考えるときには周辺のさまざまな視点を大切にしてほしい」と述べ、自分や仲間、家族が犠牲にならないために、震災を事あるごとに振り返って意識し、備え、それを繰り返すことが大切だとの考えを述べた。また、損害保険にも言及し、「地震保険は精神的な部分も含めて苦境を乗り越える力になった。先の見通しが付かない不安の中で、当面の不安をしのげる生活資金として一定の金額を受け取れることの心強さ。これは本当に忘れられない」と感想を語った。
河北新報社は、震災時、本社がダメージを受け、さらに沿岸部にある36店舗の販売店のうち15店舗が全壊・流失する大きな被害に遭った。取材も紙面制作も輸送も配送も危機に陥るという厳しい状況下でも、震災発生翌日の朝刊を休刊することなく発行した。武田氏は「そうした奇跡的な対応を可能としたのは事前に他県の新聞社と災害時の協定を結んでいたおかげであり、災害の対応は日常の備えの延長にある」と強く訴えた。
損保協会は大学連続講座について、社会に出る直前世代の学生に対して損害保険の基本的な役割や機能を理解してもらうことは、個人の生活に役立つことに加え、講座で学んだ学生が基点となり、損保協会が目指す「国民生活の安定、国民経済の発展」に貢献する将来の担い手になるとして、重要な取り組みに位置付けている。
埼玉大学で実施したトライアル講義を踏まえ、損保協会では今後、他大学でもこうした他分野の専門家による講義を検討していく。