2017.04.27 生保協会定例会見、マイナンバー利活用へ提言書公表

 生命保険協会の根岸秋男協会長は4月21日の日銀記者クラブ定例会見で、マイナンバー制度の民間利活用の最終的な提言書を取りまとめたことを報告した。本年度の重点的課題として取り組んできたもので、今回の最終的な提言書の公表によって、生命保険業界として高齢者対応の高度化への取り組みを関係省庁や消費者団体などへPRしていく。また、アクチュアリー会が公表した標準死亡率引き下げ改定案について「標準生命表を踏まえつつ超低金利の影響も勘案しながら、会員各社が料率改定の対応を検討する必要がある」との考えを示した。この他会見では、次期協会長に住友生命の橋本雅博社長の内定を報告した。
 同日、生保協会では「高齢者に配慮した取組みの推進に関する提言書―『マイナンバー制度の民間利活用』への提言―」を公表した。2016年11月に提言の骨子を公表、17年1月には有識者を交えたシンポジウムを開催するなど議論を深めた上で、最終的な提言書として取りまとめたもの。
 根岸協会長はマイナンバー制度の具体的な利活用について説明し、契約者のメリットに言及した。まず、行政が把握する高齢者の生存・死亡情報の共有は、高齢者の安否確認の高度化につながるため、生命保険会社からの積極的な案内・支払いが可能になり、保険金受取人や契約者は、保険金や給付金を確実に受け取ることができるという。また、契約者が住所を変更した場合においても生命保険会社の追跡が可能となり、契約者は継続的なサービスやアフターフォローを享受することができる。さらにマイナンバー制度のウェブサービス「マイナポータル」によって、生命保険契約に関連する必要情報をタイムリーかつ確実に提供することが可能となる。一方で、課題として①マイナンバー制度の浸透・定着②マイナンバー等情報の安全な管理③マイナンバー制度に関する従業員教育の必要性―を挙げ、「官民一体で確実に取り組むことが国民の利益向上、制度の持続性につながる」との考えを示し、こうした課題に継続的に対応し、サービス向上に努めていくと協会の方針を示した。
 この他会見では、記者から、地政学リスクの高まりが生保業界に与える影響や日銀のマイナス金利政策への対応などについて意見を求められた。根岸協会長は、地政学リスクの高まりなどを受けて運用環境は厳しいとしながらも、世界的にも経済は堅調に推移しているとの認識を示し、地政学リスクが落ち着いていくことで運用環境が改善することを期待すると回答した。また、超低金利環境による標準利率の低下は「プライシングと営業・商品戦略での検討が迫られる」、資産運用面に関しては「中長期的には、ボディーブローのように効いてくる」との認識を示した。
 アクチュアリー会が3月に公表した標準死亡率引き下げ改定案への対応を問われ、保険種類によって影響は異なるとした上で、終身医療保険は長寿なほど給付金の支払い見込み額が増加するため保険料は上がる方向になるとの見解を示した。その上で「会員各社は標準生命表を踏まえつつ超低金利の影響なども勘案しながら、料率改定の対応を検討する必要がある」と述べた。
 機関投資家としてスチュワードシップコードやエンゲージメント活動を実行し、リターンが下がった場合、契約者に対してフィデューシャリー・デューティーを果たしたことになるのかとの記者からの質問に、コストは掛かるとしながらも「上場企業が持続的に発展することで投資家も相応のメリットを享受できる」と回答した。