2025.03.26 金融庁 損保4社に対して業務改善命令発出 個人情報保護法・不正競争防止法に抵触するおそれ等で 業務改善計画外部専門家による策定とレビューを要請
金融庁は3月24日、損害保険会社4社(東京海上日動、あいおいニッセイ同和損保、損保ジャパン、三井住友海上)それぞれに対し、保険業法に基づく業務改善命令を発出した。処分の理由は、各社とも「個人情報保護法に抵触するおそれがある行為及び同法の趣旨に照らして不適切な行為、不正競争防止法に抵触するおそれがある行為及び同法の趣旨に照らして不適切な行為並びにその背景にある態勢上の問題が認められた」ため。
業務改善命令の主な内容は、
(1)業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること
①当該社における個人情報保護法および不正競争防止法等を遵守するための適切な法令等遵守態勢の確立
②当該社(出向者を含む)および当該社保険代理店における適切な顧客情報管理態勢の確立
③ビジネスモデルの特性および経営戦略の推進等に伴い発生するリスクを検討し、適時に適切な対応策を講じるための経営管理(ガバナンス)態勢の確立
なお、以下の点を踏まえた検討を行うこと
▽乗合代理店を重要な販路とするビジネスモデルであるにもかかわらず、それに伴うリスクについて十分な検討をしなかった結果、多数の乗合代理店における顧客情報の取扱い等にかかる不適切な慣行を看過し、さらには、当社社員自らによる不適切な行為を防止できなかった点
▽保険代理店との連携強化および営業推進、さらには業務効率化等に伴う人材活用策の一環として、保険代理店への社員出向という経営戦略を推進しているにもかかわらず、当該戦略に伴うリスクに対し、適切な対策を講じなかった点
④上記①から③にかかる業務改善計画を策定すること。加えて、保険料調整行為事案において実施した真因分析を踏まえて、相次いで発生した不適切な事案の真因分析を行った上で、2023年12月の業務改善命令により策定し、実施している業務改善計画について、以下の抜本的な見直しを実施すること。
▽コンプライアンス及び顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成
▽乗合代理店に対する当社社員の出向について適切な管理態勢の構築
▽業務改善を着実に実行し、定着を図るための経営管理(ガバナンス)態勢の強化
(2)上記(1)については、保険業やコーポレートガバナンスにかかる専門的知見を有する外部専門家により業務改善計画の策定およびレビューを受けること(現場社員への浸透および社員意識の変化を伴う計画の効果の持続可能性に関する評価を含む)。
(3)上記(1)④により実施した真因分析の結果を踏まえた経営責任の所在の明確化をすること
(4)上記(1)、(2)および(3)にかかる業務の改善計画を25年5月30日までに提出し、ただちに実行すること
(5)上記(4)の改善計画について、3か月ごとの進捗および改善状況を翌月15日までに報告すること(初回報告基準日を25年8月末とする)。
金融庁では、「個人情報保護法に関する不適切行為等及び不正競争防止法に関する不適切行為等」として、該当件数や該当人数、該当時期等には相違があるものの、各社からの報告の結果、①乗合代理店が、当該社に保険契約に関する連絡を行った際に、当該社の保険契約者等に関する個人情報を他の損害保険会社に送付するとともに、当該社は他社の保険契約者等に関する個人情報を受け取っていた(以下、代理店事案)②保険代理店への出向者が出向先の保険代理店の了承を得ずに、当該保険代理店の顧客情報を当該社へ送付していた(以下、出向者事案)―を指摘、「こうした代理店事案及び出向者事案は、多数の保険代理店において、反復継続的に発生していたことが認められた」とした。
これらの事案の背景・要因を詳細に分析するとともに、「態勢の問題」として、各社とも「業務改善命令(23年12月発出等)により、経営管理(ガバナンス)態勢の機能発揮、3線管理態勢の整備・確立及び代理店への対応等の態勢上の問題にかかる業務改善を命じられ、業務改善計画(24年2月提出)を策定の上、実施しているところである。一方で、今般発覚した代理店事案及び出向者事案について、各社からの報告を踏まえると、それぞれの内容において、業務改善計画(24年2月提出等)では十分ではない点が認められる」とそれぞれに具体的な指摘がなされた。
さらに同庁では、「これらの問題の真因は、以下のとおりであると考える」とし、①第一に、経営者が、乗合代理店を通じた保険販売というビジネスモデルの下で、保険代理店との連携強化及び営業推進、さらには業務効率化等に伴う人材活用策の一環として、保険代理店への社員出向という経営戦略を推進している中で、自社のビジネスモデルや経営戦略に伴うリスクを網羅的に特定・評価し、適切に対応する経営管理態勢の構築を怠ってきたこと。このため、多数の乗合代理店における顧客情報等にかかる不適切な慣行や当社社員自らの不適切な行為を看過する結果となった。②第二に、当該社において、個人情報保護法等の保険業法以外の法令を含めた法令の遵守に対するリスク認識が低かったこと。このため、当該社社員や出向者に対し、十分な教育及び監督を行ってこなかった③第三に、当該社において、保険商品及びサービスによる健全な競争環境の実現を目指さず、コンプライアンス及び顧客保護を軽視する企業文化が存在していたこと。このため、出向者や当該社社員の中には、違法又は不適切と認識しながらも、長年の業界の慣行であるとして、不適切行為等に及んだ者も少なくない―と厳しく指摘した。
そして、「なお、これらの真因は業務改善命令(23年12月発出等)においても指摘しており、当該社は改善にかかる取組を開始している。その取組の中で、当該社社員の気づきを端著として代理店事案を発見するなど、一定の進捗も認められている(本センテンスは東京海上日動のみ)。しかしながら、本件の重大性に照らせば、さらなる態勢整備が求められる。上記を踏まえ、当該社が既に行っている業務改善計画(24年2月提出等)の修正を行った上で、より適切な業務改善計画の策定、実施及び定着を図っていくためには当局の関与が必要と判断したものである」としている。
今回の行政処分を受け、東京海上日動、あいおいニッセイ同和損保、損保ジャパン、三井住友海上の各社はそれぞれ同日、業務改善命令の受領とその内容を公表した。東京海上日動は「このような不適切な事案により、お客様をはじめ関係者の皆様に大変なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを改めて心よりお詫び申し上げます。(中略)今回の業務改善命令を厳粛に受け止め、深く反省するとともに、このような事態を二度と起こすことがないよう引き続き全社を挙げて改善と再発防止に努めてまいります」、あいおいニッセイ同和損保は「お客さまをはじめ、ご関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、改めてお詫び申し上げます。今後このような行為を発生させないために、取組可能な再発防止策を順次実施しておりますが、今回の命令を厳粛かつ真摯に受け止め、全社を挙げて改善に努めてまいります。なお、本業務改善命令に基づき、業務改善計画を金融庁に提出する予定であり、提出した際には改めて公表いたします」、損保ジャパンは「このような事態に至ったことにつきまして、深く反省いたしますとともに、お客さまをはじめ、関係者の方々に大変なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを心よりお詫び申し上げます。(中略)この度の事態を厳粛に受け止め、法令等の遵守および顧客保護を再徹底し、信頼回復に向け、取り組んでまいります。なお、本業務改善命令に基づき、業務改善計画を金融庁に提出する予定であり、提出した際には改めて公表いたします」、三井住友海上は「お客さまをはじめ、関係者の皆さまに多大なご迷惑とご心配をおかけしておりますことを、改めて心よりお詫び申し上げます。(中略)今回の行政処分を厳粛に受け止め、深く反省するとともに、二度とこのような事態を生じさせないよう挙社体制で再発防止に取り組み、信頼回復に努めてまいります」としている。