2025.02.19 明治安田生命 英大手金融グループL&Gと業務提携 米子会社バナーライフの買収で合意 米個人顧客層にアクセス、PRT事業へ参入

 明治安田生命は2月7日、英国の大手金融サービスグループであるLegal & General Group plc(ロンドン、以下、L&G)と、新たに戦略的業務提携契約を締結することについて合意した。①米国生命保険会社Banner Life Insurance Company(以下、バナーライフ)を傘下に有する、L&Gの米国持株会社であるLegal & General America,Inc.(以下、LGA)の全発行株式の取得②米国における年金リスク移転(以下、PRT)事業の協業―が主な提携の内容。また、明治安田生命はL&Gとの中長期的なパートナーシップに向けた強固な関係構築を企図し、同社株式の5%相当を市場から取得する。関係当局による認可等を条件に、バナーライフは明治安田生命の完全子会社となる予定。
 バナーライフ(米国メリーランド州、代表者:マーク・ホルウェガー(CEO)/ジョージ・パームス(President―PRT))は、1949年創業の、全米50州(ニューヨーク州は同社子会社のWilliam Penn Life Insurance Company of New Yorkを通じて)で個人保険事業(定期保険)およびPRT事業を展開する生命保険会社。従業員数は約900人。
 明治安田生命は、これまで米国で団体保険事業を主力とする主要子会社StanCorp Financial Group,Inc.(以下、スタンコープ社)を通じて、企業等の従業員を中心に生命保険市場で事業基盤を拡大してきた。今回の買収によって新たに個人顧客等へのアクセスが可能となり、スタンコープ社の団体保険顧客とあわせ、米国の主要な顧客層を網羅できることとなる。同社の米国への累計出資額は約1.4兆円に及ぶが、本件買収により、事業リスクの分散による収益安定化やグループ内のシナジー発揮が期待されるとしている。
 バナーライフが開発したビジネスプラットフォームは、世界最大の生命保険市場である米国において高い競争優位性を有しており、先進的なデジタル技術は、明治安田生命グループにおけるデジタル活用の発展にも貢献するものと期待を示している(注1)。
 また、PRT事業は、企業が保有する確定給付企業年金制度(DB)のリスクを保険会社に移転する取引のことで、欧米を中心に近年急速に発展している。米国のDB市場は世界最大の規模を有しており、今後も持続的に成長することが期待され、明治安田生命は、PRT事業において英国首位のシェアを有するL&Gとの協業を通じて、その知見やノウハウを吸収しつつ、中長期的に安定収益を確保することを見込んでいる(注2)。
 今回の案件の買収対象には、L&Gの100%子会社である米持株会社LGAとその傘下に属する各社(バナーライフおよびその子会社のバミューダ再保険会社であるLegal & General America Reinsurance Ltd.(以下、LGAR))等が含まれる。LGARは2015年米国デラウェア州設立で、従業員数は385人(24年10月現在)。
 買収金額は、22億8100万米ドル(約3522億円、1米ドル=154.43円換算)。明治安田生命では、バナーライフ等の買収対象各社の資産内容・事業内容等について慎重に分析・検討を重ねたうえで、公正かつ妥当なものとしてこの価格を算出したとしており、本件買収のための資金については、明治安田生命の手元資金で対応する。買収によるリスク管理面・収益面での支障はなく、本件買収後も明治安田生命は引き続き高い健全性を維持するとしている(関連記事を本日付2面に掲載)。
 買収スケジュールについては、各国の規制当局、米競争法当局の認可等を前提として、25年度下半期にかけて手続きおよび買収を完了する見込みとしている。
 英国のL&G(代表者:アントニオ・シモイス(CEO))は、1836年設立のロンドン証券取引所上場持株会社。従業員数は約1万500人(24年12月現在)。明治安田生命によるL&Gへの出資については、L&Gとの中長期的なパートナーシップに向けた強固な関係構築のため、同社株式の5%相当(議決権比率ベース、実質的筆頭株主水準)を市場から取得する予定としている。また、本取得およびリスク管理を目的として、金融機関との間で契約を締結することを予定。今後、海外プライベートアセット投資における提携を進めるほか、両社の発展に資する新たな協業領域についても検討・協議していく予定としている。
 明治安田生命は今回の戦略的業務提携について、「2024年3月に公表した『MY Mutual Way Ⅱ期(2024~2026年度中期経営計画)』において、『グループベースの持続的な成長』および『お客さま・社会への還元の拡充』に向け、『国内生命保険事業におけるシェア拡大』を図るとともに、『資産運用の高度化』と『海外保険事業の拡充』を進めている。海外保険事業については、『成長ドライバー(成長戦略)』の一つと位置づけ、先進国を中心とした新規投資と既存事業の強化・安定化に取り組むことで、海外の成長を積極的に取り込み、26年度までに海外保険事業からの基礎利益相当額を1000億円以上に拡大することを目指している。また、相互会社である明治安田生命としては、このような持続的な成長を通じて、顧客に『確かな安心』を届けることを使命として、海外保険事業に取り組んでいる。L&Gは、1836年に創業した英国の伝統的な金融サービスグループであり、当社とL&Gは、2015年から資産運用業務を中心に人財交流を含め良好な関係を築いてきた。今回の提携により、海外保険事業の拡充を促進し、グループ全体でのさらなる収益拡大を目指す」としている。
 (注1)バナーライフが開発したビジネスプラットフォームHorizonは、加入手続き日数の大幅削減や即時引受の実現等により、顧客利便性を大きく向上させ、米国定期保険市場において高い競争力を有し、23年に新契約年換算保険料が全米第3位に躍進した。米国の生命保険契約では顧客や代理人等によってアナログ作業で行われることが多く、契約プロセスの複雑さや煩雑さ、プロセス完了までに長期間を要することが課題だったが、人工知能や機械学習の活用によってこのような課題を解決し、顧客や代理人等から高い評価を獲得しているという。
 (注2)PRTは、企業が確定給付企業年金のリスクの全てまたは一部を保険会社に移転する取引のこと。保険会社はリスクを引受ける代わりに年金資産の移管に加えて手数料を受領するビジネスモデル。米国の確定給付企業年金市場は世界最大で、PRTの市場規模は約50兆円に成長している。年々、PRTへの移管額は増加しているものの、400兆円以上が未移管であり、今後も成長が続く見通しで、Athene/corebridge/L&G/MassMutual/MetLife/New York Life/Prudential等20以上の保険会社が米国PRT市場に参入している。明治安田生命では「PRT事業における経験と実績を有するL&Gと高い財務健全性を有する当社が協業することで競争力が強化する」としている。