2024.10.21 東京海上日動 二次商流利用の物流費用・貨物損害を補償 運送保険「食品ロス削減推進特約」開発 食品産業センター会員向け団体保険で提供

 東京海上日動は、社会課題となっている食品ロスを減らすために、運送保険の新特約として「食品ロス削減推進特約」を開発、10月1日から提供を開始した。一般財団法人食品産業センターと連携し、同センター会員に向けた団体保険制度の中で提供していく。
 食品産業センターは、食品産業界の連携強化を通じた業界共通の課題解決を図ることを目的に1970年に設立された国内唯一の食品産業の業種横断的全国団体で、主に、食品産業界の調整役・推進役として行政と業界の橋渡し役を担っている。食品産業界、関連業界を網羅する約120団体、大手食品企業約130社などが会員となっている。
 「食品ロス削減推進特約」は、食品産業センター会員が加入可能な運送保険の団体保険制度に付帯できる。補償する内容は、「二次商流利用に要した物流費用および貨物損害」で、保管中・加工中・輸送中の事故、落下等による梱包・化粧箱の外装損傷などにより、商品ロットの一部に損害が生じた際に、品質上の問題がない食品を廃棄ではなく再販や寄付の二次商流を手配することで生じた「(A)二次流通費用」「(B)二次商流への転売益を差し引いた貨物損害」を補償する。
 対象となる事故例として、以下の例(輸送中の事故による商品の一部損害)が示されている。
 ▽輸送中の事故により商品ロットの一部に損害が生じ、納品先から受け取りを拒否された。品質上の問題がない商品について、こども食堂への寄付を実施した。
 (A)費用損害:こども食堂への寄付に要した物流費用
 (B)商品損害:「積載していた商品の販売価格」から「こども食堂への転売益」を差し引いた金額
 これまで運送保険の対象となる商品について事故が発生した際には、積載していた商品の販売価格を損害として補償していたが、二次商流の利用によって損害額の減少が見込まれるところから、現行の保険料で本特約を付帯することが可能となったという。
 同社では、食品ロス発生時に、商品種類・残賞味期限などに応じて、同社が事業提携する物流事業者、食品リサイクル事業者、こども食堂等との最適なマッチングを実施する。こうして食品の再販や寄付の円滑な手続きをサポートすることも本特約の特長。
 日本では2019年に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、食品ロス削減に向けた取り組みの強化が進められている。一方で、現在でも年間約472万トンの食品が廃棄されており、その約半分が飲食店、スーパー、食品製造業などの事業者から生じているという。食品ロスは、賞味期限切れや保管中・加工中・輸送中での物損等といったさまざまな要因により発生しているが、二次流通のサプライチェーンが確立されておらず、食品廃棄による環境負荷や食品事業者の経済的損失が発生していた。
 東京海上日動は23年度から、大阪で地方自治体等と食品ロス削減に向けて「大阪食品ロス削減コンソーシアム」を立ち上げ、地域実証実験を行うとともに、事業系食品ロスの発生データの収集等を進めてきた。このような実績に基づいて、食品の二次流通にかかる物流費用等を補償対象とするとともに、提携する食品リサイクル事業者を紹介する「食品ロス削減推進特約」を運送保険の特約として新たに開発した。
 同社では、「これまでも食品ロスの廃棄費用を補償してきたが、本特約により二次流通費用や食品リサイクル事業者とのマッチングサービスを提供することで食品の廃棄を減らすことに貢献する。今後、食品産業センターとともに本特約の提供を通じて、より多くの企業の食品ロス削減に向けた取り組みを支援することで、お客さまのレジリエンスの向上とサーキュラーエコノミーや持続可能な社会の実現に貢献していく」としている。