2024.10.01 金融庁 金融審議会 損害保険業等に関する制度等WG 大規模代理店、保険仲立人制度などが論点に 保険市場の信頼確保・健全な発展に向け初会合
金融庁は9月27日、会場である中央合同庁舎第7号館とオンラインで、金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」(第1回)を開催した。昨今の損保業界における保険金不正請求事案や保険料調整行為事案などを踏まえ、保険市場に対する信頼の確保と健全な発展に必要な方策の検討を鈴木俊一金融担当大臣が諮問したことを受けて設置されたもので、洲崎博史座長(同志社大学大学院司法研究科教授)をはじめとするWGメンバー、日本損害保険協会などのオブザーバーによる初会合となった。会議の模様はYouTubeで配信された。
冒頭に洲崎座長があいさつした後、事務局を務める金融庁からWG設置の背景、損保市場や損保業界の概要、保険業に関する制度の概観、WGで議論が必要と考えられる論点について説明があった。
今回のWGに至る過程では、昨年明るみになった旧ビッグモーター社による保険金不正請求事案、大手損保による企業保険分野での保険料調整行為事案等を受け、金融庁は今年3月~6月にかけて「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」を開催。メンバーの意見を取りまとめて6月25日に公表した報告書では、顧客本位の業務運営の徹底や健全な競争環境の実現に向けて両事案の再発防止策が盛り込まれるともに、法改正が必要と考えられる論点については金融審議会の開催も視野に入れて検討を継続することを求めていた。
また、8月26日の第53回金融審議会総会・第41回金融分科会合同会合における鈴木大臣による諮問の後、同30日に公表された「2024事務年度金融行政方針」にも、「金融審議会において、大規模な保険代理店における態勢整備の厳格化、保険仲立人の活用促進、企業向け火災保険の赤字状況等の論点について、制度改正の必要性を含め、具体的な対応を検討する」と記された。
事務局は、有識者会議の報告書を踏まえた検討すべき主な論点として、①保険会社による適切な管理・指導が十分に機能しづらい大規模な保険代理店において、募集品質の向上が図られるために、どのような対応が考えられるか。②保険仲立人制度は1995年の保険業法改正時より導入されたが、いまだ十分に活用されていない。保険仲立人の活用を促進するためには、どのような対応が考えられるか。③近年、損害保険会社において企業向け火災保険の赤字が継続している状況について、どのような課題があると考えられるか。④損害保険市場における公正な競争環境を実現する観点から、損害保険会社による便宜供与や企業内代理店の目指すべき姿等について、どのように考えるか。―の4点を提示した。
続いて損保協会から、今年3月に設置された「業務抜本改革推進プロジェクトチーム」が中心となって検討を進めている損保業界の信頼回復に向けた取り組みが説明された。顧客本位の業務運営の徹底では、代理店の業務品質に関する第三者評価制度の検討、全ての会員会社による代理店手数料ポイント制に関する基本的な考え方への賛同、募集コンプライアンスガイド追補版の策定、損害保険会社からの出向者派遣に係るガイドラインの策定、不正請求への対策強化などが、また、健全な競争環境の実現については、政策保有株式に係るガイドラインの策定、コンプライアンスの一層の強化、さらには企業向け保険やリスクマネジメントの理解浸透といった施策が紹介された。第三者評価制度については、9月に設置された代理店業務品質評価に関する第三者検討会において業界共通の評価基準の策定や基準策定後の第三者評価の仕組みを年内をめどに検討し、年明けに評価基準の最終案についてパブリックコメントを募り、その結果を踏まえて来年3月の確定を目指すとするプランが示された。
その後、各委員やオブザーバーからWGの各論点などについての意見が表明された。WGは今後、年内の取りまとめを目指して月1、2回程度のペースで開催。来年の通常国会に保険業法改正案が提出される見通しとなっている。
WGメンバー等は以下の通り(五十音順・敬称略)。座長:洲崎博史(同志社大学大学院司法研究科教授)▽委員:上杉めぐみ(東京経済大学現代法学部教授)、大村由紀子(弁護士・三浦法律事務所)、沖野眞已(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、小畑良晴(一般社団法人日本経済団体連合会経済基盤本部長)、片山銘人(日本労働組合総連合会総合政策推進局経済・社会政策局長)、神作裕之(学習院大学法学部教授)、小林いずみ(ANAホールディングス株式会社社外取締役)、嶋寺基(弁護士・大江橋法律事務所)、滝沢明子(デロイト・トーマツ・コンサルティング合同会社執行役員)、中出哲(早稲田大学商学学術院教授)、松井智予(東京大学大学院法学政治学研究科教授)、柳瀬典由(慶應義塾大学商学部教授)、山下徹哉(京都大学大学院法学研究科教授)▽オブザーバー:日本損害保険協会、外国損害保険協会、生命保険協会、日本保険仲立人協会、日本損害保険代理業協会、保険乗合代理店協会、全国銀行協会、全国地方銀行協会、日本自動車販売協会連合会、経済産業省、国土交通省、財務省