2024.09.02 NEXI 記者説明会開く 保険引受実績が最大額8兆円に 中堅・中小企業支援の取組報告
日本貿易保険(NEXI)は7月31日、東京都千代田区の同社会議室で記者説明会を開催した。説明会では、同社代表取締役社長の黒田篤郎氏が2023年度事業実績報告に加え、中堅・中小企業支援などの取り組みを紹介した。黒田氏は、リスクに不安を感じる顧客の増加に対して着実な保険引受を行ったことに加え、融資保険の新機軸商品投入等に取り組んだことにより、23年度の保険引受実績(フローベース)は17年の株式会社化後の最大額となる約8.0兆円を達成し、23年度末の責任残高(ストックベース)は01年の独立行政法人設立以来最大となる約17.3兆円に達したと報告した。
記者説明会で23年度の事業実績について説明した黒田氏はまず、20年以降3年以上にわたったコロナ禍が収束に向かう一方で、長期化するロシアによるウクライナ侵攻や緊迫化する中東情勢に伴う世界的なエネルギー不足、深刻化する新興国・途上国の債務問題、主要国で相次ぐ国政選挙など、地政学的リスクを含む非常リスクが高まっているという現状認識を述べた。
23年度の事業実績について、保険引受実績(フローベース)は前年度比4.4%増の約8.0兆円となり、2年連続で株式会社化以降最大額を達成したと報告した。近年の地政学的リスクの高まりやさまざまな新商品の投入等を受け、19年度をボトムに拡大傾向に転じ、23年度もLEADイニシアティブやSEEDスキーム、国内貸スキーム等の新機軸商品の展開などで引受額増加につながったと説明した。
責任残高(ストックベース)は、前年度比7.1%増の約17.3兆円となり、01年の独立行政法人設立以降最大額となったと報告。23年度は融資保険(海外事業資金貸付保険)の引き受けが好調で、23年度末の責任残高に占める融資保険の割合は約40%弱で前年度比約15%ポイント増加した。地域別では、アジア向けが約7.7兆円で全体の約44%を占め、中東向けが約3.0兆円(約17%)、欧州・北米向けがそれぞれ約1.1兆円(約7%)になったとした。
保険料収入は、融資保険の引き受けが好調だったことを主因に前年度比98%増の592億円で、17年以降の最大額となった。保険種別では、融資保険が約318億円で全体の約50%を占め、貿易一般保険が約124億円だった。
保険金支払額は、非常危険事故での保険金支払いが前年度に比べて大幅に減少したことで、前年度実績から43億円減少の279億円となった。非常事故については、ウクライナ侵攻関連でロシアに対する経済制裁の影響等で約11億円の保険金支払いがあったとした。回収金は、前年度に大型案件の回収があったことから前年度実績から283億円減少の274億円になったとした。
次に、中堅・中小企業支援の取り組み状況については、貿易保険の利用促進のため、地域金融機関との業務提携の取り組みを継続中で、「中堅・中小企業海外展開支援ネットワーク」においてNEXIと提携する地方銀行や信用金庫等の機関数は24年7月時点で111機関となり、中小企業・農林水産業輸出代金保険の引受件数のうち約40%が提携機関からの紹介によるものと説明した。
提携機関ネットワークの拡大をはじめとした営業活動の成果もあり、保険利用実績は順調に拡大し23年度の引受実績は06年の商品創設以降最大額を達成。多くの顧客から継続的に利用されており貿易保険は中堅・中小企業の売掛金管理における有用なリスクヘッジ手段になっていると述べた。 また、22年12月に海外展開に取り組む中小企業・小規模事業者への支援強化に向け、独立行政法人中小企業基盤整備機構、日本政策金融公庫と協力し、「海外ビジネス支援パッケージ」を構築。これにより、海外への販売開拓・拡大を図る中小企業・小規模事業者に対して、課題やニーズの把握からビジネスマッチング支援や金融支援まで一体となっての実施が可能になったと報告した。この点については、全国の地銀や信金等の金融機関も多く参画しており、24年6月末時点で116行の地方金融機関が参画しており、提携機関数は拡大傾向にあるとした。連携支援した企業は300社以上にのぼり貿易保険の提供にも至っていると述べた。さらに、中堅・中小企業等の海外取引の発展と国際化支援に向け、23年9月に日本商工会議所、12月に商工中金と連携協定を行ったことを報告した。