2024.07.10 T&Dホールディングス 定時株主総会開催 資本効率向上が着実に進展 好調だった生保3社の新契約業績

 T&Dホールディングスは6月26日、東京都新宿区の京王プラザホテルで第20回定時株主総会を開催した。グループ長期ビジョンの進捗を報告した森山昌彦社長は、財務KPIが堅調であることを示した上で「目標とする『利益拡大による資本効率の向上』は着実に進展している」と述べた。総会には62人が出席し、剰余金処分の件、監査等委員でない取締役9名選任の件、監査等委員である取締役5名選任の件、補欠の監査等委員である取締役1名選任の件の4議案が審議され、いずれも承認された。質疑応答では、女性取締役の増員や株主還元方針、国内金利上昇による資産運用への影響についての事前質問が寄せられた他、会場から少子高齢化・人口減少下における生保ビジネスの将来性や女性活躍の推進に向けた具体的な取り組み内容に関する質問が寄せられた。
 23年度の事業報告では、まず生命保険業界の状況について、新型コロナウイルス感染症関連の入院給付金等の支払いは収束したものの為替ヘッジコストの高止まりなど厳しい経営環境が続き、その一方で国内金利の上昇により一時払い円建保険の販売が増加するなど新契約業績は前年度より増加したと説明した。
 次に、21年度からの長期ビジョンである「Try&Discover2025~すべてのステークホルダーのしあわせのために~」の実現に向けた重点取り組みについて、①コアビジネスの強化②事業ポートフォリオの多様化・最適化③資本マネジメントの進化④グループ一体経営の推進⑤SDGs経営と価値創造―の五つの項目ごとに報告を行った。
 コアビジネスの強化については、生保3社が独自のビジネスモデルに基づき生命保険事業の強化に取り組んでいるとし、太陽生命では健康状態に不安のある人に向けた商品の拡充、大同生命では経営者が一時離職した際の固定費補てん等に活用できる商品の販売、T&Dフィナンシャル生命では海外金利と為替を活用した一時払個人年金保険への円貨プランの追加を行ったとした。
 事業ポートフォリオの多様化・最適化では、T&Dユナイテッドキャピタルが、持分法適用関連会社であるフォーティテュード社や23年8月に開業した再保険仲立人子会社であるT&Dリスクソリューションズを介してクローズドブック事業のさらなる深化を進めていることや、22年6月に設立したコーポレート・ベンチャーキャピタルファンドを通じてヘルスケア、インシュアテック、ペット関連のスタートアップ企業への出資を実施していることを報告。
 資本マネジメントの進化に関しては、資本コストを踏まえた資本効率性指標をグループ財務KPIに設定し、利益水準・資本効率の向上に向けて資産運用ポートフォリオの改善等に取り組んでいると説明。株主還元では現金配当で安定的・持続的な増配を目指すとともに、継続的に自己株式取得を実施する方針だとし、23年度の1株あたりの年間配当は9期連続の増配となる前年度比8円増配の70円(中間配当35円を含む)を予定していることや、24年5月に500億円を上限とした自己株式取得の実施を決定したことを明かした。
 グループ一体経営の推進においては、グループ全体のフィールドを生かした人材の育成・活用を進めており、グループ内IRや従業員向け株式交付制度等を通じて従業員の株主意識を醸成しグループの持続的成長を図る他、各社の社長がグループ視点で自社の経営を行う「グループ執行役員制度」の導入により各社間のさらなる連携強化を進めていくとして、グループ全体としての総力を引き上げ、資産運用、DX・システム、内部監査等の高度化に取り組む方針を示した。
 SDGs経営と価値創造については、40年度までに自社のCO2排出量を実質ゼロとする長期目標を掲げ、事業活動で使用する電力の100%を再生可能エネルギーによる調達を目指す国際的なイニシアティブRE100に加盟していることや、使用電力の再生可能エネルギーへの切り替えを積極的に進めていること、自社の投融資先のCO2排出量もネットゼロ目標の対象にしていることを紹介した。
 続いて、生保3社合算の23年度の主要業績を報告した。個人保険と個人年金保険を合計した新契約年換算保険料は、主力商品の販売好調により1983億円となり、前期に比べて31.5%増加した。第三分野の新契約年換算保険料は419億円で、同9.5%の増加。個人保険と個人年金保険合計の保有契約年換算保険料は1兆6336億円となり、前期に比べ4.4%増加した。
 3社合算の基礎利益は前期比35.2%増の1258億円で、順ざや額は為替ヘッジコストの増加等により同29.4%減の393億円となった。ソルベンシーマージン比率は年度末で995.7%となった。最後に、グループ長期ビジョンの進捗状況と今後の取り組み方針を説明。23年度は修正利益、修正ROEなどの財務KPIが前年度実績を上回った他、新契約年換算保険料が大幅に増加したとして、「利益拡大による資本効率の向上」が着実に進展していると報告した。
 森山社長は、専門性・独自性のある生保各社の強固なビジネスモデルを軸に、成長領域に経営資源を配付して成長を加速させるとともに、グループシナジーのさらなる追求によってグループ経営を新たなステージに引き上げる方針を示し、「各社の特化・差別化戦略によるお客さま一人一人への真摯(しんし)な対応を通じて、世の中全体に幸せを届けるという従来の強みを一層強化するとともに、お客さまや社会の小さな変化を捉え、柔軟かつ大胆なビジネスの展開につなげていく」と強調した。