2024.05.23 かんぽ生命 23年度末決算 当期純利益10%減870億円に 新契約年換算保険料が77%増1168億円

 かんぽ生命は5月15日、2023年度末(23年4月1日~24年3月31日)決算を発表した。連結業績では、保有契約の減少が続く一方、新型コロナウイルス感染症に係る保険金支払の減少により基礎利益が増加。保険金支払の減少等により危険準備金の繰入額は増加したものの、キャピタル損益の大幅な改善により、経常利益は前年同期比37.1%増、親会社株主に帰属する当期純利益は同10.8%減となった。個人保険新契約年換算保険料は同77.3%増だった。24年度の連結業績予想については、経常収益5兆9600億円(前期比11.6%減)、経常利益2000億円(同24.1%増)、当期純利益790億円(同9.3%減)、1株当たり当期純利益206円39銭と見込む。
 かんぽ生命の連結主要業績では、経常収益は前年同期比3645億円増の6兆7441億円で、そのうち保険料等収入は同2830億円増の2兆4840億円、資産運用収益は同525億円増の1兆2115億円、責任準備金戻入額は同98億円減の3兆54億円だった。経常費用は同3209億円増の6兆5829億円で、このうち保険金等支払金が同2905億円増の5兆7785億円、資産運用費用が同361億円増の2825億円、事業費等が同19億円増の5216億円となった。以上の結果、経常利益は同436億円増の1611億円で、親会社株主に帰属する当期純利益は同105億円減の870億円となった。総資産は前期末比2.9%減の60兆8558億円、純資産が同43.0%増の3兆3957億円。
 かんぽ生命単体ベースでは、保有契約の減少および一時払終身保険販売に伴う標準責任準備金負担の増加の影響があった一方、新型コロナウイルス感染症に係る保険金支払の減少により、基礎利益は前年同期比316億円増の2240億円となった。保険金支払の減少等に伴い危険準備金の繰入額が増加し臨時損益が減少したものの、キャピタル損益の大幅な改善により、経常利益は同449億円増の1625億円となった。キャピタル損益相当額(投資信託の解約益は価格変動準備金の繰入の対象外とする)および順ざやに含まれる為替に係るヘッジコストに対しては、従来通り価格変動準備金を繰り入れる、または取り崩す会計処理を実施し、当期純利益は同92億円減の885億円だった。
 契約の状況では、23年度は顧客ニーズに沿った新商品の投入や新たな育成・評価制度(かんぽGD制度)の導入等、中長期的な営業力をつける取り組みを進めた結果、新契約年換算保険料は個人保険、第三分野ともに増加。新契約年換算保険料(個人保険)は1168億円で前期比77.3%増。このうち第三分野は103億円で同61.4%増。保有契約年換算保険料(個人保険)は2兆2002億円で前期比6.5%減、新旧区分合算では2兆9873億円で同7.2%減だった。第三分野は3088億円で前期比4.1%減、新旧区分合算では5646億円で同4.8%減だった。
 個人保険の新契約件数は前期比100.1%増の62万件。商品別では、養老保険が26万件(占率41.8%、前期比28.7ポイント低下)、終身保険が26万件(占率42.3%、同25.1ポイント上昇)、学資保険が7万件(占率11.2%、同3.2ポイント上昇)だった。保有契約件数は、新旧区分合算で前期比6.1%減の1970万件。商品別では、養老保険が587万件(占率29.8%、前期比2.5ポイント低下)、終身保険が1089万件(占率55.3%、同2.4ポイント上昇)、学資保険が276万件(占率14.0%、同0.2ポイント低下)だった。
 資産運用については、株式、外国証券等の収益追求資産については、株価等の上昇により含み益が増加したことから残高は増加。国内の公社債については、安定的な収益が確保できる資産として長期債および超長期債を中心に運用を行ったが、償還等により残高は減少した。貸付金については、郵政管理・支援機構への貸付、シンジケート・ローン、地方公共団体貸付、保険約款貸付を実施しており、郵政管理・支援機構への貸付金の償還により残高は減少した。
 資産運用収益については、総資産残高の減少に伴い利息及び配当金等収入が減少したものの、有価証券売却益や金銭の信託運用益等が増加したことから、前期比537億円増の1兆2127億円。資産運用費用については、為替リスクのヘッジに伴う金融派生商品費用等の増加により2825億円。その結果、資産運用収支は前期比176億円増加し、9302億円となった。
 順ざや・利回りの状況は、順ざやが前期比22億円減の918億円で、平均予定利率が前期比0.01ポイント低下し1.66%、利子利回りが同0.01ポイント低下の1.84%だった。また、キャピタル損益は前期比739億円増加し100億円(前期は638億円の損失)となった。
 連結ソルベンシー・マージン比率は、前期末から14.1ポイント上昇し1023.2%。
 24年度(25年3月期)の連結業績予想では、今期から、新契約の増加が短期的に当期純利益を押し下げる生命保険会社特有の影響を一部調整するため、新契約の初年度に係る標準責任準備金の積増負担(税引後)について加算調整した修正利益(当期純利益+責任準備金の調整)を株主還元原資とする変更を実施する。
 業績予想と変動要因については、経常利益は①保有契約の減少等(保険関係損益に限る)②キャピタル損益の増加③危険準備金繰入額の減少―の要因により2000億円、当期純利益は前記要因に加え、④価格変動準備金の繰入額の増加⑤契約者配当準備金繰入額の増加⑥法人税等合計の減少―の要因により790億円、修正利益は当期純利益に責任準備金による調整を実施し910億円と予想。かんぽ生命単体については、基礎利益が1800億円程度、そのうち順ざやが900億円程度と見込む。
 なお、日本郵政グループが同日発表した「2024年3月期決算の概要」によると、同グループは24年度からアフラック・インコーポレーテッドの持分法適用により、持分法投資利益(経常収益)を480億円計上(同社からの受取配当金はグループ連結上は消去)するとしており、24年度の通期業績予想では、この持分法適用とゆうちょ銀行の増益による利益計上により、当期純利益を前期比113億円増の2800億円と予想している。