2024.04.11 三井住友海上、NEC 適応価値を定量化し新たな金融商品組成を推進 「適応ファイナンスコンソーシアム」設立

三井住友海上と日本電気㈱(森田隆之取締役代表執行役社長兼CEO。以下、NEC)が3月15日、「適応ファイナンスコンソーシアム」(英語名: Japan Consortium for Adaptation Finance )を設立した。デジタル技術を応用して適応価値(減災効果・環境効果)を予測分析し、定量的にわかりやすく投資家に提供することで、仕組みを構築し、さまざまな適応策、価値評価手法に基づく保険や債券、融資スキーム等の金融商品組成を会員やグローバルパートナーと推進する。

「適応ファイナンス」とは、可視化された気候リスクに対応する取り組みに資金を充当する、あるいはリスクをヘッジすることにより、事業や地域・社会における不確実性を抑制しつつ、長期的かつ安定的なリターン獲得の確度を高めるもの―と説明される。両社では「深刻化する気候変動への対策が喫緊の課題になっているが、温室効果ガスの排出を抑制する緩和策の進展に対して、気候変動の影響を低減する適応策は十分ではなく、適応価値の透明化とそれによる資金導入が国内外で期待されている」として、投資市場の拡大をけん引する新たな適応ファイナンスの社会実装に向けて、同コンソーシアムを設立したとしている。
同コンソーシアムでは、デジタル技術の応用により適応価値となる減災効果や環境効果の定量化を行い、それらを基にした新たな適応ファイナンスアプローチを提言する。適応ファイナンスの市場拡大に賛同している団体をはじめとして、保険・金融事業者や適応ソリューション事業者(流通、IT・サービスなど)、社会インフラ事業者(交通や電力、通信、建設など)、研究機関、投融資団体、自治体、政府系機関などの産官学のグローバルなパートナーとの共創を目指す。
代表者(会長)には、岡田有策氏(慶應義塾大学教授、元内閣府上席科学技術政策フェロー)が就任、代表幹事に野口聡一氏(宇宙飛行士、㈱国際社会経済研究所理事)が就任した。三井住友海上とNECが幹事社。
主な取り組みとして、気候変動に伴う人命や経済の損失、社会インフラの機能不全など、災害の物理リスクや財務影響を軽減して、安心・安全な社会の構築や経済の健全な発展、自然環境の保全に資するマネジメントプロセスの体系化と透明化の実現を目指し、▽投融資や保険などの金融スキームの構築▽適応価値を最大化するために、デジタル技術を活用した適応策の検討と科学的かつ定量的な評価基準の策定▽効果測定および適応対策方法を活用した新たなビジネス機会の獲得と社会実装―などを行う。
会長に就任した岡田氏は「新たなフィールドでのイノベーションを活性化させるためには新たなビジネス環境の設計・整備が重要だ。コンソーシアムでの議論を基盤として、将来のさまざまな災害に的確に対峙できる分野横断型の統合システムを構築するとともに、市民生活におけるハード/ソフト両面の損傷を最小化する技術のプロデュースを促進させる社会デザインの提案を図る。この提案をアイデアレベルで終わらせず、その実装を加速させるためには民間資金を呼び込まなくてはならない。しかし、従来型のビジネスモデルでは資金循環はうまく機能しない。レピュテーションなど金銭ではない価値を基軸にした新たなビジネスモデルを構築し、防災のみならず社会インフラの維持管理、農業を含むグリーンインフラの整備など多様な社会課題に対応できるようにしていくことが必要だ。加えて、このような新たなビジネスモデルを日本の各地域での技術実装の成果をショウケースとして、アジア各国の社会課題解決支援につながる展開も図っていく」などとコメントしている。
同コンソーシアムでは今後の展望として、「グローバルサウスにおける気候変動への対策は、現状、先進国からの支援という形で資金枠組みが組まれているが、ここに民間資金を誘導していくことも重要」としており、持続可能性におけるデジタルソリューションの付加価値創出を主導する世界的な企業団体である Global Enabling Sustainability Initiative(GeSI)と連携し、今年中に国際的な気候適応への取り組みの枠組みを確立するための連合の立ち上げを目指す。