2024.03.11 東京海上日動、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保、損保ジャパン 保険料調整行為に係る業務改善計画書を提出 役員報酬減額等の処分も発表 「あらゆる業務プロセスを“お客様起点”で抜本的に見直す」

2月29日、東京海上日動、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保、損保ジャパンの4社は、昨年12月26日付の業務改善命令に基づき、保険料調整行為に係る業務改善計画書を金融庁に提出した。同時に各持株会社も業務改善計画の履行の指導、監督に取り組んでいくことを表明した。各社は関係各位への謝罪とともに、経営責任の明確化として役員報酬の減額等の処分も併せて発表した。

■東京海上日動
東京海上日動は、業務改善計画書の提出にあたり、「経営としての受け止め」として、「従来、当社は『お客様本位』の考え方に基づき業務運営に取り組んできたつもりだったが、不適切行為が発生した要因を踏まえれば、無意識のうちに『損害保険業界・当社の常識』をベースとした行動が存在しており、『本来あるべきお客様本位』の考え方と、実際に『当社の行動のベースとなっていたお客様本位』の考え方の間には『ずれ』が生じていた」と真因を分析、「『お客様・社会の常識』を全ての思考と行動の出発点とした上で、『保険本来の価値を如何にして提供していくか』という観点で判断し行動することを『お客様起点』と定義し」「あらゆる業務プロセスを『お客様起点』で抜本的に見直す」とした。
「『保険本来の価値』を提供することでお客様に選ばれ続ける『本当に信頼されるお客様起点の会社』の実現に向けて、①当社に根付いた業界慣行の抜本的な見直し②社内制度や仕組みの見直し③人材育成の強化―を進めていく」とし、「経営としての決意」として、「『正しいことを正しく行う』、その延長線上にしか当社の未来はなく、それができなければ当社はこの世に存在してはいけないという思いのもと、会社として正しいことを正しく行い、お客様や社会に『保険本来の価値』をお届けする役割を果たしていく」としている。
業務改善計画は、①コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成② 経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化③共同保険を含む企業保険分野における適正な競争実施のための環境整備に向けた方策の検討、実施〈▽政策保有株式の売却▽本業協力の見直し▽出向要件の見直し▽共同保険のあり方の検討▽企業代理店の役割・あり方の検討〉④ 適正な営業推進態勢および保険引受管理態勢の確立〈▽適正な営業推進態勢の確立▽適正な保険引受管理態勢の確立〉⑤独占禁止法等を遵守するための適切な法令等遵守態勢の確立⑥業務改善命令を踏まえた経営責任の所在の明確化―の各項目で構成されている。

■三井住友海上
三井住友海上は、業務改善計画の策定にあたり、「全社員が規範とすべき行動を見直す。業務改善計画の基本的な考え方と行動規範(わたしたちの行動)を整備した上で、各領域における現状の課題と目指す姿とのギャップから導かれる改善策を策定していく」とし、「スリーラインそれぞれにおいて、万全な態勢を構築していく。スリーラインが与えられた役割・機能を最大限発揮していくために、経営陣と全社員の間で経営理念・経営ビジョンを深いレベルで共有できている状態を醸成していく。行動規範の見直しを実施の上、全社員への浸透を図るとともに、グループMVV実現の基盤となる組織風土と企業文化の変革を推進するための人事改革を実行する」とした。
業務改善計画は①適正な競争環境の構築に向けて〈この中に「競争要素の是正」「共同保険運営の適正化」の各項目があり、「競争要素の是正」には▽政策株式のさらなる削減▽本業支援の見直し▽出向基準の見直し、「共同保険運営の適正化」には▽共同保険のあり方についての検討▽企業代理店のあり方についての検討―がある〉②適正な営業推進態勢の確立に向けて③適正な保険引受管理態勢の確立に向けて④適切な法令等遵守態勢の確立に向けて⑤健全な企業風土の醸成に向けて⑥経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化に向けて⑦経営責任の所在の明確化―で構成されている。

■あいおいニッセイ同和損保
あいおいニッセイ同和損保は業務改善計画の策定にあたり、「企業文化を含めて『生まれ変わる』ことを目指す。また、代理店・扱者とともにお客さまに向き合い、お客さまや社会からの期待に応える活動を徹底的に実践する『CSV×DX』を推進する」とした。
業務改善計画は、①はじめに②今回の業務改善命令を踏まえた経営責任の所在の明確化③企業保険分野における適正な競争実施のための環境整備に向けた方策の検討、実施〈再発防止策に「他損保社との接触ルールに関する取組み」「商慣習の見直し(▽政策株式保有の方針について見直し▽顧客企業や代理店への本業支援についての見直し▽出向についての見直し)」「代理店の保険募集にかかる役割明確化」〉④適正な営業推進態勢及び保険引受管理態勢の確立⑤独占禁止法等を遵守するための適切な法令等遵守態勢の確立⑥コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成⑦上記を着実に実行し、定着を図るための経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化―で構成され、それぞれ①問題認識②再発防止策・改善策に分けて策定されている。

■損保ジャパン
損保ジャパンは業務改善計画の策定にあたり、「『すべてをお客さまの立場で考える保険会社』へと変革するべく、全社を挙げて業務改善計画の着実な実行に取り組み、お客さまや社会からの信頼回復に努めていく。また、業務改善計画の策定を機にその実効性の向上を目的として、現在の『監査役会設置会社』から『監査等委員会設置会社』へ移行する。あわせて、企業文化の変革・ブランド回復・コンプライアンス推進・品質管理など強化すべき重要領域に対して新たにチーフオフィサー(CxO)を配置するとともに、意思決定プロセスの透明性向上の観点で重要かつ専門性の高いテーマについて経営会議の諮問機関として品質管理委員会等の諮問委員会を新設する」としている。
業務改善計画は、①業務改善計画を着実に実行し、定着を図るための経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化②独占禁止法等を遵守するための適切な法令等遵守態勢の確立(営業部門の職員をはじめとする社内関係者及び代理店に対する十分な教育や適切な監督態勢の構築を含む)③コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成(独占禁止法等の重要な法令遵守よりも自社の都合を優先する企業文化の是正策を含む)④共同保険を含む企業保険分野における適正な競争実施のための環境整備に向けた方策の検討、実施〈▽共同保険・団体扱契約等にかかわる保険引受けについてのルール整備等▽政策株式・本業支援等〉⑤適正な営業推進態勢及び保険引受管理態勢の確立(独占禁止法等の法令の趣旨に照らし、不適切な行為のインセンティブとならない営業目標の策定やリスクに応じ適正な保険料を提示できる営業活動を実現するための方策の策定を含む)⑥経営責任の所在の明確化―で構成されている。