2023.12.20 損保協会 「保険料調整行為」で再発防止策、「独占禁止法遵守のための指針」を改定 各種啓発活動(教育・研修)の強化方針も示す

損保協会は12月15日、保険料調整行為について、業界としての再発防止策に関する取り組みの進捗状況を発表した。これまでの同協会における独占禁止法への取り組みを検証・分析した結果、独占禁止法遵守に関する規範・指針等の改定・新設を行うこととし、同日「損害保険会社の独占禁止法遵守のための指針」の改定を実施、今後も同指針別冊の「保険契約引受にかかる独占禁止法上の留意点(仮称)」の新設や同協会の「行動規範」の改定を予定していることが公表された。さらに、「啓発活動(教育・研修)の強化」について、保険会社向け・代理店(募集人)向け・共通―と対象別に今後の方針が示された。

損保協会では、これまでの同協会の独占禁止法遵守の取り組みは、協会・業界として共同で行う活動(同協会の委員会活動に関する独占禁止法遵守の徹底等)に対する内容に重点が置かれており、各保険会社・代理店が独占禁止法を遵守するための支援については必ずしも十分ではなかったと認識、「独占禁止法遵守に関する指針等の改定・新設」「啓発活動(教育・研修)の強化」といった対応を実施することとした。
「損害保険会社の独占禁止法遵守のための指針」(以下、同指針)の改定については、保険契約引受業務等に関わる独占禁止法遵守の徹底のため、各社が策定するルールの前提となる基本的な考え方、営業担当者等の行動(他社との関わり方等)にかかる留意点等を示すための改定を行い、別冊で「保険契約引受にかかる独占禁止法上の留意点(仮称)」を新設する予定。
具体的には、同指針第3章「損害保険業に係る独占禁止法・景品表示法上の留意点」第1節「保険契約に係るもの」で、従来「保険料率」「保険約款」の各項目が記載されていた手前に「保険引受に係るもの」という項目を新設した。新項目では、冒頭「保険契約引受の際の競合他社との接触、情報交換(以下「情報交換等」)は、原則として行ってはならない。」と示し、①共同保険契約の引受に際しては、制度特性上、保険会社間での接触機会が生じやすいため、一層の注意が必要である②情報交換等には、営業部門(引受担当部門)以外の商品部門、保険金支払部門、営業推進部門等におけるものも含む③業務に関係のない懇親(業務時間外の会合、私的な友人・知人関係等)においても、情報交換等とならないよう、公私混同をしない④情報交換等が行われる状況になった場合、速やかにその場を辞去する、電話を切る等の回避手段をとり、情報交換等には応じない⑤自社他社を問わず、独占禁止法上の疑義がある対応を発見した場合は、法務部門、コンプライアンス部門、弁護士への相談や内部通報制度の利用等しかるべき対応を行う⑥保険契約引受の各業務プロセスにおける独占禁止法遵守にかかる社内ルールを充実する―以上の内容が記載された(改定後の指針は同協会ホームページで掲載)。
同指針別冊「保険契約引受にかかる独占禁止法上の留意点(仮称)」では、同指針に記載した「保険契約引受」の項目の内容についてより具体的な解説を記載し、保険契約引受業務等に関し、各社が策定する独占禁止法遵守のためのルールの前提となる基本的な考え方、営業担当者等の行動(他社との関わり方等)にかかる留意点等を解説(共同保険の引受業務を含む)する予定で、各社が自主ルールを策定・見直ししていく場合に活用する。
また、「一般社団法人日本損害保険協会行動規範」を改定し、独占禁止法遵守に関する記載を追加することも予定している。
「啓発活動(教育・研修)の強化」については、保険会社向けでは、①独占禁止法コンプライアンス・セミナーを毎年定期開催し、損保実務に即した独占禁止法上の留意点を時事的な情報とともに専門家から解説(継続取り組み・2023年度以降)②損保会社若手職員等が受講する研修において、独占禁止法の基礎知識、過去の損保業界における事案等を解説(新規取り組み・24年度開始予定)―が示された。また、代理店(募集人)向けでは、①保険会社が代理店を指導する際に活用している「募集コンプライアンスガイド」を改定し、保険募集における独占禁止法上の留意点を追記(資料改定・24年2月予定)②保険募集を行うために原則として合格が必要となる損保一般試験基礎単位の教育テキストに独占禁止法の基礎知識、保険募集における留意点を追記(資料改定・24年4月版反映予定)が示され、さらに共通事項として、独占禁止法の基礎知識、保険募集における留意点をわかりやすく解説する動画コンテンツ制作(新規取り組み・24年2月予定)が示された。