2023.11.08 三井住友海上 透明性・公平性高めギャップ・ミスマッチ解消、DAO活用し新採用プロジェクト
三井住友海上は10月5日から、㈱ガイアックス(東京都千代田区、上田祐司代表執行役社長)と共同で、DAO(分散型自立組織)を活用した新たな採用プロジェクトを開始した。Z世代と呼ばれる若い世代の価値観が大きく変化する中、DAOを活用した新たな採用プロセスを構築し、採用活動の透明性や公平性を高めることで、これまで以上に学生の「共感」を生み出し、入社後のギャップやミスマッチを発生させない採用活動を推進する。
DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、日本語で「分散型自立組織」と呼称される新しい組織形態のことで、株式会社をはじめとする従来の組織体制とは異なり、中央管理者(いわゆる上司)がおらず、組織メンバーの投票などによって意思決定がなされ、その全ての活動や履歴がブロックチェーン上に保存され、可視化されることが特徴とされている。
新卒の採用は、合格・不合格いずれの場合においても、「自身のどういった点が評価されたのか」が分かりづらく、Z世代が重要視する「共感」を生みづらいという課題がある。そこで三井住友海上は、Z世代の価値観とマッチした採用プロセスの構築を目指し、DAOの仕組みや概念を採用活動に導入することが採用における課題解決に有効と考え、同プロジェクトのスタートを決定したとしている。
同社では、10月5日から専用サイトで参加学生の募集を開始し、11月1日にプロジェクトスタート(キックオフイベント開催)、同月29日にプロジェクト終了予定としている。
具体的な取り組み内容としては、Discord(注1)やUnyte(注2)などのオンラインツールを用いて組成したDAOに、学生や同社社員が参加する。参加者はDAO内で意見やアイデアを出し合い、参加者の投票によって意思決定を重ねながらワークを進める。
参加メンバーの活動(発言・作業・アイデア)に対し、参加者が「いいね!」を送り合うことで、自身の発言やアイデアが評価されたことを可視化するとともに、「いいね!」の数をトークン化する。そしてプロジェクト終了時に、参加メンバーが保有するトークンの量により、最終的な評価を決定する。同プロジェクトで高評価を得た学生は、2024年6月以降に同社人事部と面談し、入社の意思を確認する。
同社では同プロジェクトの特長として、①本採用への応募は、従来のインターンシップ応募のようにエントリーシートを提出するのではなく、大学名や住所、性別や顔写真などの登録は不要とし、本人の興味の幅や感受性・創造力を問うシンプルなアンケートの提出のみとする②DAO内の活動や発言、組織への貢献度を全て可視化し、保有するトークンの量によって最終的な評価が決まる。評価された点やそのプロセスが明確となり、高い透明性を確保できる③学生の「共感」を生むため、参加者全員の共同作業によってそれぞれの学生の評価が確定するプロセスとしている―を挙げている。
今後同社では、ITシステム部門や資産運用部門などのジョブ型採用や、北海道・九州などの地域での採用など、26年入社の新卒採用でもDAOを活用した選考を検討し、採用における競争力強化に向けた取り組みを推進していくとしている。
(注1)米国で開発された、オンラインコミュニティ形成に便利なボイス・ビデオ・テキストコミュニケーションサービスアプリ。全世界で利用されており、アクティブユーザー数は1億数千万人とされる。
(注2)日本のスタートアップの㈱Unyteが開発・提供するDAOメンバーの貢献度可視化ツール。