2023.06.15 生保協会定例会見 SR報告書で取組み振り返り、コロナ「みなし入院」対応で社会的使命果たす
生保協会の稲垣精二協会長は6月9日、同協会会議室で協会長として最後の定例会見を行った。会見では、同日開催された理事会で副会長、各委員会委員長が内定したこと、生保協会の活動をより多くの顧客に理解してもらうことを目的にした「SR報告書2023」を作成・発行したことを報告した他、稲垣協会長が「SR報告書2023」を基に1年間の取り組みの振り返りを行った。次期体制について「清水博次期協会長の強いリーダーシップの下で、引き続きお客さまからの信頼を高め、生命保険事業の発展につながる取り組みを力強く推進してほしい」と述べた。
「SR報告書2023」による振り返りでは、新型コロナウイルス感染症の対応については、国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されてから3年が経過し、この期間の生命保険業界全体の新型コロナに関する保険金・給付金の支払いは、23年3月までの累計で約1100万件、約1兆2000億円を上回る規模となっている。特に22年夏からの第7波の感染拡大の影響により、宿泊施設や自宅での療養を入院と同様に取り扱う「みなし入院」による入院給付金の請求件数が増加したことで、支払いまで通常よりも時間が必要となるケースが発生し、顧客からも支払いに関する問い合わせが多く寄せられたと述べた。
そうした環境下で会員各社は、顧客への丁寧な説明に努めると同時に、支払部門への応援・増員や請求手続きの簡素化などの体制強化に取り組み、顧客の不安の解消と円滑な支払いに努めるなど、各社の努力や創意工夫の積み重ねが数字にも表れており、顧客に「安心をお届けする」という社会的使命を果たすために、業界一丸となって取り組むことができたとの見解を示した。
22年度の重点テーマとして取り組んできた「顧客本位の業務運営の推進に向けた取組み」のうち、「営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢に関する着眼点の取りまとめ」については、23年2月に「着眼点」を公表し、生命保険業界が変わらない安心を届けるためには、今後も業界としての不断の取り組みが求められると認識しているとの考えを示した。会員各社が経営陣の強いリーダーシップの下、体制強化に取り組むとともに、生命保険協会としても「着眼点」を通じて継続的にフォローアップすることで、各社の取り組みを支援していくとした。
もう一つの重点テーマとして取り組んできた「未来のウェルビーイングの実現に向けた取組み」に関しては、生命保険分野におけるデータ利活用の推進や、SDGs・金融リテラシー向上への貢献などの中長期的な課題解決に取り組んでおり「デジタル社会の実現に向けた生命保険業界の将来」と題した報告書・提言書を公表した。引き続き、生命保険業界としては、政府に対して必要な環境整備を促すとともに、一人一人のニーズに合ったサービスを提供し続けることで、将来にわたり顧客のウェルビーイングの実現に貢献していく考えを示した。
運営初年度となる「代理店業務品質評価運営」については、2月に生保協会による業務品質の調査を経て評価付けを獲得した42の「認定代理店」を公表するとともに、認定証の授与式を開催した。また、「認定代理店」が使用することができるシンボルマークの名称を「生命保険乗合代理店業務品質認定マーク」としたことを報告した。
2年目の運営については、新たに70の代理店が業務品質調査にエントリーしており、同会ホームページで7月末まで追加募集を行っている。また、より多くの代理店に申込みを検討してもらえるように7月に代理店向け説明会を開催する予定だとした。今後も消費者や関係者に本制度の周知・浸透を図ることで、生保乗合代理店の顧客本位の業務運営の一層の推進を後押する方針を示した。
最後に、「残り1カ月余りとなる任期の最後まで、取り組みの前進に全力で取り組んでいきたい」と締めくくった。
質疑応答では、「コロナが収束して、対面チャネルの復活が見込まれる中、営業職員のあり方について、今後業界として具体的にどのような取り組みが必要と考えているか」という記者の質問に対して、「コロナによって、会員各社は顧客と非対面で手続きする仕組みの導入や各種必要書類の電子化などに取り組んできた。その中で、各社の営業職員は顧客にとって最も身近な存在として、デジタルの活用などの創意工夫をしながら、顧客に寄り添い、より利便性の高いサービス提供に努めてきた。アフターコロナも、お客さまの身近な存在として、人生に長く寄り添い、お客さま一人一人のライフプランに応じた商品・サービスの提案を行うことができるという営業職員チャネルの強みは変わらない。一方で、営業職員チャネルによる変わらない価値を提供するには、各社が自社のビジネスモデルやチャネルの特性に応じたコンプライアンス・リスク管理体制の整備に不断に取り組むことが前提となることから現在、各社で着眼点の内容も踏まえた体制強化に取り組んでいる。協会としても、各社の新たな取り組みや生じた課題などを丁寧に拾い上げ共有するなど、継続的なフォローアップを通じて各社を後押ししていく必要がある」と回答した。