2023.04.27 生保協会定例会見 みなし入院見直しで報告、“デジタル社会の将来”報告書・提言書公表 マイナンバー制度利活用で提言も
生命保険協会(稲垣精二協会長)は4月21日、東京都千代田区の同協会会議室で定例会見を開き、次期協会長に日本生命の清水博社長が内定したことを報告。また、感染症法上で新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」に変更されることに伴う給付金の特別取り扱い「みなし入院」の見直しの件、および『「デジタル社会における生命保険業界の将来」報告書・提言書~マイナンバー制度を通じたデータ利活用による生命保険の利便性向上に向けて~』の公表について説明した。生保会社の資産運用を通じた「株式市場の活性化」と「持続可能な社会の実現」に向けた取り組みも紹介した。
稲垣会長は、新型コロナウイルス感染症に伴う給付金の特別取り扱いについて、5月8日から新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類感染症」に変更されることで、感染症法上の「入院措置・勧告」が適用されなくなると説明。「みなし入院」の特別取り扱いはこれまで、感染症法上の「入院措置・勧告」が適用される「高齢者等の重症化リスクの高い人」を対象としていたものの、今回の変更によって会員各社で「みなし入院」の入院給付金の取り扱いの見直しの検討が必要になったと説明した。4月10日に生保協会として会員各社に、「みなし入院」による入院給付金等の取り扱いの見直しを行う場合には顧客宛ての案内を丁寧に行う旨の周知を行った結果、医療保険など入院給付金等を有する保険商品を販売している保険会社全39社が、ホームページ等で「みなし入院」に関わる給付金等の取り扱いの方針等を掲載したことを報告した。
次に、23年度の重要テーマ「持続可能な社会の実現に向けた生命保険業界としての役割発揮」に向けた取り組みとして、『「デジタル社会における生命保険業界の将来」報告書・提言書』を公表したと報告した。
同報告書・提言書の第1部「社会保障制度におけるデジタル対応と諸外国の取組事例」の調査報告書は、特に諸外国で普及している日本のマイナンバーと類似の仕組みの「個人識別番号の仕組み」や「官民での利活用の状況」等についての調査結果をまとめている。具体的には、諸外国では行政分野に限らず、生命保険などの民間分野でもさまざまな場面で個人識別番号の仕組みが活用されており、こうした事例は日本のデータ利活用の検討に向けて参考になるとの考えを示した。
第2部は、「マイナンバー制度を通じたデータ利活用による生命保険の利便性向上」に向けた提言書で、生命保険分野の具体的なユースケースを検討し、保険金支払いの効率化・自動化など顧客利便に資する対応の実現に向け、制度面等の課題について提言事項をまとめているものだと述べた。将来的には、生命保険会社が、顧客の同意を得た上で健康・医療分野を含む幅広いデータの利活用が可能になれば、手続きの効率化の他、顧客の健康寿命の延伸やQOL向上といった新たなサービスの実現につながるとの考えを示した。
本提言書に掲載したユースケースは、「実現のめどがたっているもの」や「今後の検討に期待するもの」など状況はさまざまであることから、生保業界としても新しい社会を見据え、顧客一人一人のニーズに合った最適なサービスを提供し続けることで、顧客の未来のウェルビーイングに貢献していくとしている。
生命保険会社の資産運用を通じた「株式市場の活性化」と「持続可能な社会の実現」に向けた取り組みについては、生保協会が毎年、企業価値向上に向けた取り組みに関して幅広い視点から企業・投資家に対して行っているアンケートとその分析結果を基に、企業や投資家等に対する提言を取りまとめた報告書を公表したと報告した。
質疑応答では、「生保業界としてみなし入院の特別取扱いを終了するが一連のみなし入院対応について総括をしてほしい」という質問に対して、「みなし入院の特別取扱いについては、病床の逼迫(ひっぱく)などの事情で、本来、入院が必要な人が入院できないという課題に直面する中、協会会員各社が特例措置として、保険約款を柔軟に解釈したことに加え、支払体制の増強や顧客対応などの面でも創意工夫して、3年間対応してきた。新型コロナによる入院給付金の支払いは、23年2月時点で業界全体で1090万件、1兆2000億円を超える規模となり、これは顧客に安心を届けるという生保会社の社会的使命を果たすために各社が努力を重ねた一つの結果だと考えている」と回答した。
また、「営業職員のコンプライアンスの着眼点が公表され引き続きこれはフォローアップしていくと思うが、一度区切りがついたところで業界として、次はどの重点課題に取り組むのか教えてほしい」という質問に対して、稲垣協会長は「着眼点を2月に公表し、会員各社では着眼点を踏まえた各種体制のチェックが現在行われている。第一生命は先週提出したが、経営品質刷新プロジェクトの中で着眼点のフレームワークと重ね合わせる形で点検を行っており、会員各社でも現在行われていると思う。その中で課題や残課題が出てくると思うので、その課題解決に向けて着実に取り組みを進めてもらうことを協会長として期待している」と回答した。
なお、新型コロナウイルス感染症への対応で、生保協会集計の死亡保険金・入院給付金の支払状況は別表の通り。「みなし入院」は約1049万件、約9332億円となっている。