2023.02.06 金融庁 少短業者向け監督指針改正へ、財務健全性・業務適切性でモニタリング体制強化 流動性リスク管理の着眼点整備、登録取消検討も

 金融庁は1月31日、「保険会社向けの総合的な監督指針(別冊)(少額短期保険業者向けの監督指針)」の一部改正(案)を取りまとめ公表した。同庁は、「近年、少額短期保険業者の登録数は、平成18年(2006年)の少額短期保険業制度施行時以降増加しており、また、異業種からの新規参入や新たな保険リスクに対応する商品を取り扱うなどその規模・特性や取扱商品もより多様化している。こうした中、昨年の行政措置事例を踏まえると、財務の健全性および業務の適切性に懸念のある少短業者を早期に把握し適切な対応を促すことがこれまでより必要となっており、モニタリング体制等を整備する観点から所要の改正を行う」と改正の趣旨を説明。3月3日午後5時を締め切りとして、同案に対する意見を受け付けている。

主な改正内容では、「Ⅱ少額短期保険業者の監督にあたっての評価項目Ⅱ―2財務の健全性Ⅱ―2―1責任準備金等の積立の適切性Ⅱ―2―1―3事業方法書等に定めた事項の変更命令」について、既存の内容を(1)とし、文末で「…別途、少額短期保険業者に対して、報告徴求を行うものとする。」とあった部分を「…別途、少額短期保険業者に対して、法第272条の22(編集部注:少額短期保険業者に求めることができる報告又は資料の提出を法定)に基づき報告を求めるものとする」に改正、新たに「(2)法第272条の24第2項(編集部注:事業方法書等に定めた事項の変更命令のうち責任準備金の算出方法を法定)の規定の適用にあたって、業務の健全かつ適切な運営を確保し、保険契約者等の保護を図るため必要があるかは、法第272条の22に基づき報告を求め、判断するものとする。」を追加した。
また、「Ⅱ―2―3早期警戒制度Ⅱ―2―3―2監督手法・対応」に、新たに「(3)対象となる少額短期保険業者」を追加し、「収益性の改善及び流動性リスクの管理態勢について改善が必要と認められる少額短期保険業者は、例えば、以下の観点から選定するものとする。」として、具体的な観点として①現預金額の水準が十分ではなく、資金繰りに懸念のある少額短期保険業者②純資産額の水準が十分ではない少額短期保険業者③ソルベンシー・マージン比率の水準が十分ではない少額短期保険業者④保険計理人の意見書において、保険計理人から保険業の継続に対して問題を提起されている少額短期保険業者―を挙げた。
「Ⅱ―2―8流動性リスク管理態勢Ⅱ―2―8―2主な着眼点」では、現行の「「総合指針Ⅱ―3―12―2〈流動性リスク管理態勢〉主な着眼点」に準じて取扱うものとする。」を改め、「(1)態勢整備」として、①日々の資金繰りの管理・運営を行う資金繰りの管理部門を設置しているか②代表取締役、担当取締役、取締役会、資金繰りの管理部門及び各業務部門との間で、資金繰り管理に係る報告、政策企画及び指揮命令態勢を適切に整備しているか③流動性リスク管理方針を策定しているか。流動性リスク管理方針に基づく資金繰り管理には、必要に応じて以下の管理が含まれているか。▽流動性リスクに関するリスク・リミット等の設定及びその順守状況の確認▽流動性に関するストレステストの実施▽流動性危機時の対応策の設定及びその見直し④資金繰りの状況をその資金繰りの逼迫度に応じて区分し、各区分時における管理手法、報告手法等の規定を、取締役会等が承認の上、整備しているか。なお、管理手法の策定にあたっては、業務継続のための資金を確保する必要があることを踏まえ、現預金が一定水準を下回った場合などで具体的な区分を設定し、それに合わせた確実な資金調達方法を策定しているか―を追加。
また、「(2)リスク管理」として、①取締役会は戦略目標を定めるにあたり、資金繰りリスクを考慮しているか。資金繰り管理に係る報告が流動性リスク管理方針を順守したものであったかを検証しているか。また、流動性危機時の対応策及びその重要な見直しを承認しているか②資金繰り管理部門は流動性リスク管理方針及びリスク管理の規定に従い、資産・負債両面からの流動性についての評価、流動性確保状況の把握、資金繰り表ならびに資金繰り見通しの作成等により資金繰りを適切に管理しているか。資金繰りリスクに関する要因分析及び対応策を整備しているか。また、調達手段を確保しているか③各業務部門は、流動性リスクを考慮した業務運営を行っているか④資金繰りリスクの管理に当たっては出再保険の管理を行っているか―を新たに追加した。
「Ⅱ―2―8―3監督手法・対応」では、末尾に「また、流動性リスクに重大な問題を確認した場合には、法第272条の27(編集部注:「内閣総理大臣は、少額短期保険業者の財産の状況が著しく悪化し、少額短期保険業を継続することが保険契約者等の保護の見地から適当でないと認めるときは、当該少額短期保険業者の第二百七十二条第一項の登録を取り消すことができる。」)に基づく厳正な処分について検討するものとする。」を追加した。
「Ⅲ少額短期保険業者の検査・監督に係る事務処理上の留意点Ⅲ―2保険業法等に係る事務処理Ⅲ―2―1登録(1)登録審査等」では、「①登録に関する相談が登録希望者からあった場合、財務局等は、監督局担当部門にその内容を報告するなど、密接な情報連携に努める。また、登録審査に当たっては、少額短期保険業者の取扱保険商品や会社の規模等が多種多様であることに十分留意しつつ、登録希望者の事業意欲や創意工夫を阻害することが無いよう、登録制度の趣旨を踏まえた迅速かつ的確な審査を進めるものとする。」および「⑥登録申請書の添付書類のうち、規則第211条の3第1項第2号の事業計画書については、Ⅱ―2―8―2〈流動性リスク管理態勢〉主な着眼点(1)の態勢整備の内容が記載されているか確認する。特に、業務継続のための資金を確保するため、必要な時に親会社や個人オーナーなどの少額短期保険主要株主等から概ね6カ月間の事業費相当額程度の確実な資金調達が見込めるか確認する必要があることに留意する。」の新設やその他の改正が行われた。
「Ⅳ保険商品審査上の留意点等Ⅳ―2普通保険約款の記載事項に係る審査事項Ⅳ―2―4保険料の増額又は保険金の削減等の保険契約者への不利益条項」は、現行の「保険料の増額又は保険金の削減等を行う場合の手続が明確に定められているなど、保険契約者保護の観点から適切なものとなっているか。」を改め、新たに「本条項は、異常災害の発生や伝染病の発生等により、少額短期保険業者が巨額の損失を被るなど真にやむを得ない場合に、少額短期保険業者の破綻を未然に防止するための措置である。本条項の趣旨を踏まえ、真にやむを得ない場合の明確な判断基準を含む手続きを策定するなど、保険契約者保護の観点から適切なものとなっているか。」に変更した。