2017.01.06 地震保険制度が改定、保険料を3段階で引き上げ
地震保険制度が1月1日に改定された。地震保険の始期日(中途付帯日・自動継続日を含む)が1月1日以降となる契約から、保険料、損害区分、割引確認資料の改定を行っている。今回の改定は、これまでの地震保険制度の課題を考慮し、バランスの取れたものとなった。地震保険制度は数々の地震で被災者の生活再建に役立つとともに、地域の復旧、復興の一端を担い、地震国である日本の安心のよりどころになっている。今後も損保業界は広く消費者にリスクを啓発しながら、地震保険の役割、今回の改定内容などを伝え、普及に尽力することが求められる。
今回の保険料改定は、損害保険料率算出機構が政府の地震調査研究推進本部が公表した2014年版の「確率論的地震動予測地図」や、料率算出に用いる各種基礎データを基に計算したところ、多くの地域で保険料率の引き上げが必要な状況となったことから実施された。料率の引き上げ幅については、政府の有識者会合からの「契約者の負担感軽減と加入率確保の観点から、数段階に分けて料率引き上げを行うことも考えられる」という提言を受け、3段階に分けて改定する。1段階目に当たる今回の改定では、全国平均で約5.1%の引き上げとなる。2段階目以降の時期は未定。
損害区分については、政府の有識者会合で、わずかな損害割合の差で保険金に大きな格差が生じ得ることに関して指摘があり、これまでの損害区分(全損・半損・一部損)の半損を2分割し、4区分(全損・大半損・小半損・一部損)に細分化した。細分化によって、①保険金支払割合の格差の縮小②半損の中でもより深刻な被害を受けた契約者に対する補償の充実③実際の損害割合と保険金支払割合の数字が近づくなどの効果が得られる。
割引確認資料については、対象となる確認資料の範囲が広がり、割引を適用しやすくなった。免震建築物割引・耐震等級割引では、登録住宅性能評価機関によって作成された書類のうち、対象建物が免震建築物割引であること、または対象建物の耐震等級を証明した書類については、その資料の名称によらず確認資料とすることができる。登録住宅性能評価機関により作成される書類と同一の書類を登録住宅性能評価機関以外の者が作成し交付することを認める旨、行政機関により公表されている場合には、その者を含む。
また、耐震等級割引では、登録住宅性能評価機関などの発行書類だけでは耐震等級が一つに特定できないが、登録住宅性能評価機関などへの届出書類で耐震等級を一つに特定できる場合、その耐震等級の割引を適用することができる。建築年割引については、建築年割引が適用されていることが確認できる保険証券などであれば、新築年月の記載がなくても確認資料とすることができる。
今回の地震保険制度改定に当たっては課題もある。保険料の上昇による加入者の負担感軽減はその一つとして挙げられる。これに対しては、募集人がリスクマネジャーとしての存在意義を高め、家計全体のリスクを見直し、その中に地震リスクを織り込み、個々の契約者の状況に応じて必要な保険を勧めることが重要になる。
損害区分は、4区分となり、実際の損害程度に応じた、細やかな損害認定ができる状況になるものの、地震保険の査定現場では損害区分が増えることに伴って精度の高い現場調査などが求められるようになる。契約者の納得感を得るために、これまで以上に厳密で説得力のある損害査定のスキルを身に付けることが必要になる。さらに、契約者に地震保険の説明が十分になされていないために契約者が地震保険を理解しておらず、トラブルになるケースもあることから、今回の制度改定を機に契約時に分かりやすい説明を行うことも望まれる。
日本の地震保険制度は50年の歳月をかけて改善を重ねてきた。東日本大震災で保険業界の評価は大きく高まり、熊本地震でも保険金の早期支払いを実現した。今後も地震保険の必要性を積極的に発信し、普及を図っていくことは業界全体の社会的使命だ。業界全体が連携を強化して地震保険の活用を促すことで安心・安全な社会づくりに貢献しなければならない。