2022.08.05 あいおいニッセイ同和損保 メタバース商品・サービス開発を本格化、サイバー保険で固有リスク補償の商品検討 第一弾 新納社長のアバターを制作、社内外で活用

あいおいニッセイ同和損保は7月15日、今後浸透・拡大が見込まれる「Web3(メタバース、デジタルツイン、NFT等(注))」における経済活動で発生する新たなリスクに特化した保険商品・サービスの開発等を目的に、アバター制作やメタバースの開発を行うと発表した。同社ではその第1弾として、同社の新納啓介代表取締役社長のアバターを制作し、そのアバターを活用した社内外コミュニケーションを7月から開始した。今後、社内外コミュニケーションのあらゆる機会で同アバターを活用し、デジタルを通した顧客との接点を創出していくという。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きく変化した社会構造の中で、仮想空間(以下、メタバース)の活用は加速的に広がった。2024年にはメタバースの市場規模は世界で90兆円まで成長するマーケットになるといわれており、新たな経済活動のフィールドとなっている。しかしその一方で、メタバース上で発生する固有のリスクに対する対策や補償についてはまだ発展途上といわれている。
同社ではWeb3が社会にもたらす影響・変化の調査・研究を進めており、特にメタバースにおいては、NFT技術の進展により「資産の共有やリアル同様の経済活動」が可能となる世界がもたらされると考えている。こうした背景の下、同社が掲げる「CSV×DX」を通じた社会への価値提供を目指し、メタバースにおける経済活動を安全・安心に行える商品・サービスの開発を目的に、同社はアバター制作およびメタバースの開発に着手することを決めたとしている。
新納社長のアバターは、社内報でのアバターによる動画配信や入社式等社内イベントでのアバターによるあいさつのほか、代理店説明会等、社外向けイベントでのアバターによる登壇などの活用を想定しているという。
また、円滑な業務運営の実現に向けた社員間および代理店・取引先とのコミュニケーションでのメタバース空間の活用も進め、VR上のオフィスにアバターで出勤して社員間コミュニケーションを行ったり、メタバース上での本社各部が参加するプロジェクト運営や会議等の開催、同社代理店・取引先に対する式典・イベントの実施などの活用を想定している。
一方、メタバースで想定される主なリスクとしては、個人(アバター所有者)では▽アバターの乗っ取り・なりすましにより発生する風評被害や精神的苦痛▽悪意ある第三者の不快な言動・対応(セクハラ等)でユーザーが感じるネガティブなファントムセンス(視聴覚で認識したVR体験上の擬似感覚を実際の感覚のように感じる現象全般のこと)―などが、事業者では▽サイバー攻撃やシステムトラブル等に起因しメタバースが正常に機能しなくなることによるサービス提供者の業務の中断・停止▽サイバー攻撃等によりメタバース空間内のイベント会場等が利用できなくなった場合に必要となる代替手段の手配―などが考えれる。また、メタバース内の飲食店で働く店員に対して発生するカスハラ・セクハラ、メタバース内で働く社員に対する賃金の不払いなどの問題も想定される。
同社ではこうしたメタバースで発生する固有のリスクを踏まえ、メタバースにおける安全・安心な経済活動のサポートを目指し、メタバースを運営する事業者やサービス提供者向けにこうしたリスクを補償する保険商品について、サイバー保険を中心に検討を進めているという。将来的には、メタバース空間上で活動する個人に向けた補償、ならびに、万一の補償だけでなく、事故やトラブルを未然に防ぎ影響を減らすサービスの開発にも取り組むことで、安全・安心なメタバースの発展に貢献していく考えだ。
併せて同社では、メタバースは時間や距離などの制限が解消される「次世代の働く場所」になり得るとの考えの下、「あいおいニッセイ同和損保メタバース支店」開設の検討を開始した。障がいのある人や何らかの理由で社外対応が困難な社員など、現実(リアル)の職場で働きにくい場合でも、自身の好きなアバターを通じて「メタバース支店」の中で同社の保険商品の説明・販売を行うなど活躍の場を提供することで、多様性ある働き方の実現を目指す。
同社では今後、メタバースで同社独自の空間(スペース)を順次開設・拡大させ先進性のある取り組みを発信していく考えで、同社のテレマティクス自動車保険に加入する際にメタバース上で顧客に事故体験をしてもらうことで安全運転に努められるよう促すなど、新たな顧客体験の創出やZ世代との接点強化にも取り組んでいくことで、「CSV×DX」の実現を目指す。なお、グループ会社の三井住友海上でも5月に「メタバースプロジェクト」を始動しており、今後もグループとして幅広くノウハウの蓄積を進めていく。
(注)デジタルツインとは、物理空間(現実世界)に実在しているものを、「ツイン(双子)」のように仮想空間(バーチャル世界)でリアルに表現したものを指す。物理空間の仕組みや稼働状況などを仮想空間にそのまま再現することで、精度の高いシミュレーションなどを可能にする。NFTとは、Non Fungible Tokenの頭文字を取ったもので、「非代替性トークン」という意味。「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタル・データ」のことで、暗号資産(仮想通貨)と同じくブロックチェーン上で発行・取引される。