2022.07.20 金融庁 節税目的保険商品で契約者保護上の問題、商品審査等で国税庁と連携強化

金融庁は7月14日、マニュライフ生命の節税を目的とした「名義変更プラン」の販売を「保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発及び募集活動」と認め、同社に対して保険業法第132条第1項に基づく業務改善命令を発出した(本日2面に詳報)。同時に、「節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品」への対応として、商品審査段階およびモニタリング段階において国税庁との連携をさらに強化し、一層の保険契約者保護を進めると発表した。

金融庁は、「節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品」について、「2019年の国税庁による法人税基本通達改正の周知、いわゆるバレンタインショック以降、同庁からも累次にわたり注意喚起を行い、監督指針の改正等を実施してきたが、依然として、保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発や募集活動が確認されており、保険契約者保護の観点で問題が生じている」とし、「今後発生し得る保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発や募集活動への対応として、国税庁との連携をさらに強化し、商品審査段階およびモニタリング段階での取組を通じて、より一層の保険契約者保護を図る」とした。
現在の「保険会社向けの総合的な監督指針」では、Ⅱ―4―2保険募集管理態勢Ⅱ―4―2―2保険契約の募集上の留意点(17)その他③その他(ウ)で、「法人等の財テクなどを主たる目的とした契約又は当初から短期の中途解約を前提とした契約等の保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を行わせないなど、保険商品のそれぞれの商品特性に応じ、その本来の目的に沿った利用が行われるための適切な募集活動に対する措置」と記載されており、Ⅳ保険商品審査上の留意点等Ⅳ―1―11「法人等向け保険商品の設計上の留意点」では、「法人等の財テクなどを主たる目的とした契約又は当初から短期の中途解約を前提とした契約等の保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動につながる商品内容となっていないか」とされている。
国税庁と金融庁の連携取り組みは、「商品審査段階」では、①金融庁から保険会社に対して、国税庁への税務に関する事前照会を慫慂(しょうよう)②保険会社から同意を得た上で、必要に応じて、金融庁からも国税庁に事前照会を実施③金融庁において、事前照会の結果を商品審査で参考情報として活用(事業方法書への募集管理態勢に関する記載の指導等)―を行う(図1)。
また、「モニタリング段階」では、①両庁の定期的な意見交換の場等を通じて、国税庁から金融庁に対して、保険商品に関する節税(租税回避)スキームの情報提供②金融庁において、国税庁からの情報や独自に把握した情報を活用し、保険会社・保険代理店における募集管理態勢の整備状況や販売実態等のモニタリング等を実施③金融庁から国税庁に対して、商品開発や募集現場で利用されるスキームの情報提供―を行う(図2)としている。
併せて、金融庁では「節税(租税回避)を主たる目的として販売される保険商品」に関して広く人々からの情報の募集を始めており、「一層の保険契約者保護を図るため、保険会社および保険代理店における保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動に関する情報を有する人は、金融庁金融サービス利用者相談室まで連絡するよう」呼び掛けている。