2022.01.21 金融庁 公的保険制度に関する情報提供、12月28日から監督指針適用
金融庁では昨年10月15日、保険募集人による公的保険制度に関する情報提供を監督上の着眼点として明確化する「保険会社向けの総合的な監督指針」等の改正(案)を公表し意見募集していたが(本紙10月27日付)、12月28日、22先(団体・個人)からの計34件のコメントとそれに対する金融庁の考え方を公表するとともに、同日から改正後の監督指針の適用を開始した。
金融庁では、今回の監督指針改正について「保険会社や保険募集人等が保険募集を行う際には、顧客の意向を把握し、意向に沿った保険契約の提案を行うことが重要」「公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑み、保険募集人等が公的保険制度について適切に理解をし、そのうえで、顧客に対して、公的保険制度等に関する適切な情報提供を行うことによって、顧客が自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を理解したうえでその意向に沿って保険契約の締結がなされることが図られているかという点などを監督上の着眼点として明確化するもの」としており、厚生労働省が個々人の年金の「見える化」のため22年度運用開始を予定している公的年金の受取見込み額を簡易に試算できるウェブページの取り組みとも連携していくとしている。
パブリックコメントでは、「公的保険に関する国民に対する周知の義務は、あくまで公的保険の制度運用者である政府にあり、民間事業者である保険会社は周知を支援する立場にあるという理解でよいか」という意見に対して、「金融庁の考え方」では「政府において、公的保険に関する広報については、厚生労働省を中心に年金ポータルの開設やパンフレットの作成、対話集会の実施等、様々な取り組みを行っています。金融庁においても、金融経済教育における動画やパンフレット等において、公的保険や民間保険についても説明しています。また金融庁は、当庁ウェブサイト上に、公的保険制度について解説するポータルサイトを作成する予定です。他方で、保険会社や保険募集人等が保険募集を行う際には、顧客の意向を把握し、意向に沿った保険契約の提案を行うことが重要です。今般の監督指針案は、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑み、顧客に対して、公的保険制度等に関する適切な情報提供を行うことによって、顧客が自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を理解したうえでその意向に沿って保険契約の締結がなされることが図られているかという点などを監督上の着眼点として明確化したものです。また、監督指針の改正趣旨を踏まえ、保険会社や保険募集人等が取り扱う商品や募集形態に応じて適切に判断し創意工夫を発揮して対応することは、顧客本位の業務運営に資するものと考えます。」と述べている。一方、「今回の監督指針の改正により導入された公的保険制度の顧客への説明は、保険募集人の意向把握・確認義務の履行にあたって、全ての顧客に対して必ず実行すべき行為規制として位置付けられるという理解か」という質問に対しては、「今回の改正は、監督指針として盛り込むものであり、公的保険制度の顧客への説明は、全ての顧客に対して必ず実行すべき行為規制として位置付けているわけではありません。公的保険制度等に関する適切な情報提供を行うことによって、顧客が自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を理解したうえでその意向に沿って保険契約の締結がなされることが、取り扱う商品や募集形態を踏まえ、保険会社や保険募集人等の創意工夫による方法で図られているかという点などを監督上の着眼点として明確化したものです。」としている。
また、「改正案においては『公的保険』『公的保険制度』『公的保険制度等』といった用語が使われている。この用語の使い分けが改正内容を実務に落とし込む際に留意すべき事項となるのか教えていただきたい。」との質問に対しては、「『公的保険』は公的主体が運営する保険を意味し、『公的保険制度』は、公的保険の具体的な制度を意味しております。『公的保険制度等』については、改正案で記載している『ライフプランや公的保険制度』が例示である旨を明示するために『等』を記載しております。以上を踏まえたうえで、取り扱う商品や募集形態を踏まえ、保険会社や保険募集人等の創意工夫による方法で対応いただくべきと考えます。」と回答。
「2017年6月9日開催の生命保険協会との意見交換会で、好事例として『子供に対する医療保険が高い比率で付帯されている中、自治体で整備している子供の「医療費助成制度」により、医療費が軽減されることを募集資料で情報提供を始めた会社が認められた』ことが紹介されており、今回の改正案がこうした地方自治体の制度まで包含することを求めているのか確認させていただきたい」との質問では、「今般の監督指針案は、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑み、顧客に対して、公的保険制度等に関する適切な情報提供を行うことによって、顧客が自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を理解したうえでその意向に沿って保険契約の締結がなされることが図られているかという点などを監督上の着眼点として明確化したものです。こうした趣旨に鑑み、公的保険とは、必ずしも国の提供する制度に限られないと考えられます」としている。
「乗合保険代理店の経営者です。今回の改正案は民間保険会社が公的保障制度の補完を担うと言う主旨に則れば、大変意義のあることだと思いました。改正後は、恐らくはプリンシプルベースで個社ごとに創意工夫をすることになるかと思います。例えば代理店ごとでFD宣言に盛り込むことや、意向把握義務の一環として項目を追加することなどが考えられますが、死亡保証(ママ)であれば遺族年金の補完であり、積立型の保険であれば老齢年金の補完であり、障害年金で有れば医療保険が補完する商品であることから、保険会社の意向確認書にて新たにチェックボックスを作成いただくことで保険代理店としてはある程度の浸透がはかれるのではないかと思うのですがいかがでしょうか。」との意見に対しては、「考え方」では、「実効性を担保するには各種手段が考えられるところ、保険会社や保険募集人等が、自らの取り扱う商品や募集形態を踏まえ、創意工夫をもって判断するべきものと考えられ、当局としてもこうした点を含めて顧客本位の保険募集を図る観点から保険会社等と対話をしていく所存です。」と回答している。