2020.08.13 ■第一生命、富士通 AI保障設計システムを開発、生保初の取り組みとして特許出願[2020年7月29日]
第一生命と富士通㈱は7月29日、「AI保障設計レコメンドシステム」を開発したことを発表した。保障設計予測モデルを構築し、AIが顧客の意向に基づいて保障プランを提示するもので、4月から第一生命では同システムの全国展開を開始し、生命保険業界初の取り組みとして7月3日に第一生命から単独特許を出願している。
「AI保障設計レコメンドシステム」は、第一生命の生涯設計デザイナーが過去に作成した約1700万件の保障設計データをAIが機械学習し、顧客の家族情報や加入中の契約情報に加え、顧客の重視したい保障内容や、保険料の予算等の意向をインプットすることで、「3大疾病等重視プラン」「死亡重視プラン」「病気・ケガ重視プラン」等の保障プランを自動作成し、営業員用端末DL PadⅡの画面上にレコメンド表示する。
三つのプランを比較表示しながら各保障の種類や特徴を案内することで、顧客が自身のニーズを従来以上に認識しやすいため、レコメンドされた三つのプランを基に、生涯設計デザイナーがより顧客一人ひとりの意向に沿った保障プランを提案することを可能としている。
同システムでは、生涯設計デザイナーが行っている顧客ニーズ確認ステップと具体的提案ステップで構成する保険提案のプロセスをAIがアシストすることで、入社が間もない生涯設計デザイナーを中心に、コンサルティング力の高度化・品質の均質化を可能とする。また、今後も作成された保障設計データを定期的・継続的に機械学習していくため、時代のニーズに沿った意向をタイムリーに反映した保障プランをレコメンドすることができる。
富士通は、同システムにおいてAI学習モデルの構築およびアプリケーション、クラウド基盤の開発支援と運用を担当した。
生涯設計デザイナーは1日の業務時間のうち保障プランの作成に約1~2時間の時間を要しているが、同システムの導入で1日当たり約30分、年間約120時間の短縮を見込んでいる。生涯設計デザイナーが保険設計に要する時間を効率化し、削減した時間をより付加価値の高いコンサルティング業務へ充てることで、ワーク・スマートの同時実現も目指す。
さらに同社では、このシステムが生涯設計デザイナーにとって商品の組み合わせなど、設計における新たな気付きを得る一助になると見込んでおり、生涯設計デザイナーのスキル向上にも寄与するものとしている。
同システムでは、年間約1700万件の保障設計データを活用し、第一生命と富士通のデータサイエンティストが、独自のAI学習モデルを開発した。AI学習モデルは、生涯設計デザイナーのノウハウを定量的に評価し、ひな型となるモデルを定義、過去の成約状況から妥当性や有効性を検証するサイクルを繰り返す手法で構築した。また、同システムで開発したAIモデルは、一般的なインプットからアウトプットまでがブラックボックス化するAIモデルとは異なり、モデル化した生涯設計デザイナーのノウハウと、保障プランの生成および評価を実施する、複数のAIモデルとの組み合わせとなっている。これにより、作成された保障プランにおける説明性や、商品改定に伴うAIモデルのメンテナンス性において優位な特性を持ち、実用性の高いAIモデルを実現しているという。
第一生命は協業企業の先端テクノロジーを幅広く取り入れながら、引き続き、最適な保障の提供を通じて、顧客の安心で豊かな生活を支え、顧客一人ひとりの「QOL向上への貢献」を目指す。富士通は、今後もAIなどの先端テクノロジーと業種業務ノウハウを活用し、金融業界をはじめとする企業や社会のさらなるデジタルトランスフォーメーション(DX)をけん引していくとしている。