2020.03.26 ■損保協会 定例会見、新型コロナで対策本部設置、中計と重点課題は着実に推進[2020年3月23日]

 損保協会は3月23日、業界紙向けの定例記者会見を行い、金杉恭三協会長が世界的な拡大をみせる新型コロナウイルス感染症に対する同協会の取り組みについて、対策本部を設置して対応を徹底していくことを説明した。また、第8次中期基本計画と就任時に掲げた「自然災害に対する取り組み」と「高齢者・外国人向けの取り組み」の二つの重点課題について自身の任期満了までに着実に仕上げていく考えを示した。(2面に金杉協会長ステートメント全文を掲載)

 会見で金杉協会長は、新型コロナウイルス感染症に対する取り組みとして、会員各社では新型コロナウイルス感染症を補償の対象とする商品に加入する顧客が健康被害を受けた場合、迅速かつ確実に保険金を支払うとともに、感染拡大の防止と契約者保護の観点から、保険契約の継続手続きと保険料の払込猶予の措置を実施していくと述べた。今後感染がさらに拡大した場合でも、自動車保険や火災保険の引受業務と保険金支払業務を維持できるよう必要な体制の構築に努め、損害保険の社会インフラとしての使命を果たせるよう万全を期すと強調した。
 同協会の新型コロナウイルス感染症に対する取り組みとしては、3月6日に協会長を本部長とする対策本部を設置し、会員各社への情報提供や対応の徹底に努める他、損害保険募集人資格の有効期限延長措置を実施していると説明した。
 就任時に設定した重点課題である「自然災害に対する取り組み」については、「自然災害プロジェクトチーム」で風水災の保険金支払いに関する共同取り組みの検討と議論を進めているとし、「高齢者・外国人向けの取り組み」では、地方自治体や警察などの協力の下、「高齢者交通安全防止シンポジウム」を開催し、安全運転サポート車(サポカー)の試乗体験や有識者講演、パネルディスカッションなどの啓発活動を引き続き全国で展開していくとした。
 その後、記者との質疑応答では「自然災害プロジェクトチーム」における具体的な検討課題や、新型コロナウイルス感染症が損保業界に与える影響が中心となった。金杉協会長は、「自然災害プロジェクトチーム」では自然災害対応の効率化を図るため、ドローンや国土地理院の浸水推定図の活用に加え、避難所での請求勧奨などを検討中とした。新型コロナウイルス感染症が損保業界に与える影響については、この感染症を補償する医療保険などの取り扱いはあるが、現時点では支払いに対する経営上の影響は限定的であるとの見解を示した。また、世界規模の経済活動の停滞により株価が大幅下落しているため、会員各社の資産収益への影響を見極めるためにも金融市場の動向を引き続き注視していく必要性を指摘した。
 定例会見ではこの他、同協会の「地震保険共同調査効率化ツール」の共同開発と、19年12月に作成したリスクと損害保険について学べる高校生対象の副教材「明るい未来へTRY!~リスクと備え~」教員用手引書の拡充について報告した。
 「地震保険共同調査効率化ツール」は、首都直下地震や南海トラフ巨大地震に備えて、アジア航測㈱、㈱ドーコンの2社と同協会が共同開発したもの。地理情報システム(GIS、場所・位置にひも付けられた各種情報を取り扱うシステム)を活用する。このツールによって、損害調査業務で大幅なペーパーレス化・効率化を図ることができ、効率的な地震保険の共同調査が可能になる。
 実際に東日本大震災では航空写真・衛星画像を合計約2万3000枚印刷して一枚一枚比較したが、「GISソフトウエア」では画面上で比較できるため大幅なペーパーレス化に寄与する。加えて、同じく東日本大震災で現場踏査の結果を紙地図に手作業で記入して共有していた状態から「紙地図GISデータ化の自動処理技術」の活用により大幅な効率化が見込めるという。
 副教材「明るい未来へTRY!~リスクと備え~」の拡充に関しては、高校の新学習指導要領(20年度実施)のポイントである「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」に対応するため、教員から生徒への問い掛け事例や授業展開例などの情報を充実させるとともに、学校教育現場のICT(情報通信技術)化にも対応するため、パワーポイント版を作成し同協会のホームページに掲載するとした。今後は全国の教育委員会や高校(約5000校)などに配布する予定で、新設される「公共」の授業で活用されることを目指すとしている。