2019.12.16 三井住友海上 「MS1Brain」20年2月にリリース、AIが代理店ビジネスを後押し
三井住友海上は2020年2月から、新たな代理店システム「MS1Brain(エムエスワンブレイン)」をリリースする。同社や代理店が保有する顧客に関するデータなどをAIが分析することで、顧客ニーズをしっかりと把握し、最適な商品やサービスを的確なタイミングで提案できるようナビゲートする。AIが代理店ビジネスを後押しする業界初のシステムとして注目が集まりそうだ。
「MS1Brain」では、代理店システムのトップ画面の右下に現れるロボットのアイコン(AI)が、同社や当該代理店が保有する顧客情報、外部の企業情報などのビッグデータを分析し、代理店事業にとって有益ないくつかの情報を表示する。「ニーズ予測分析」では、顧客の契約内容や契約履歴、事故情報の他、家族構成の変化、企業の事業ポートフォリオの変化といったデータを分析し、顧客のニーズやリスクの変化を察知して、補償内容の見直しや新たな保険商品等の提案を最適なタイミングで知らせる。関係を強化すべき契約者を検知したり、法人顧客の取引先情報から契約につながりやすい見込客をリストアップしたりすることもできる。
「代理店(募集人)NBA(ネクストベストアクション)」では、顧客への提案活動における最適なアクション(NBA)を提示する。経験豊富で実績の高い募集人の活動を6工程に分けて分析し、各工程での最適な行動・話法・ツールとして示すとともに、提案状況を可視化して適切な提案タイミングをアドバイスする。
「パーソナライズド動画」では、顧客に契約満期の案内を送付する際、AIが導き出した最適な保険プランを分かりやすく理解してもらうため、一人一人に応じたパーソナライズド動画を作成。顧客は、満期案内に記されたQRコードをスマートフォンやタブレット端末で読み取ることで、時間・場所を問わず最適プランの説明を視聴できる。提案した理由も動画で説明されることからスムーズな理解につながる。募集人が顧客に直接説明する際の予行演習にも活用できる。
「経営者サポート」は、AIが三井住友海上の全代理店データや個々の代理店の保有マーケット、販売実績などを分析して経営計画の策定を助言する他、代理店の活動指標や募集人の日々の活動状況を視覚化して一覧管理するなど、代理店経営者をサポートする機能を持つ。この仕組みにより、営業力やガバナンスを強化し、高品質な顧客サービスを実現できる。
新システムには、dotData社(本社:米国カリフォルニア州、藤巻遼平CEO)が提供するデータ分析プロセスの自動化AIエンジン「dotData(ドットデータ)」が導入されている。dotDataは、従来、高度な専門知識を持つデータサイエンティストが行ってきたデータ準備から機械学習、分析結果の説明までを自動化することで、通常は数カ月を要する分析プロセスを数日に短縮するとともに、分析結果の根拠を明示してくれる。
また、世界最先端のパーソナライズド動画ソリューションとしてSundaySky社(本社:米国ニューヨーク市、Jim DicsoCEO)が提供する動画制作・配信ツール「Smart Video(スマートビデオ)」を採用したことで、顧客一人一人に最適化された動画の制作・配信が可能になった。
同社は中期経営計画「Vision 2021」における重点課題の一つとして「デジタライゼーション推進」を掲げており、顧客のデジタルリテラシーの高まりに対応して、先進デジタル技術を活用した顧客体験価値の向上を推進している。今回、この取り組みの一環として新代理店システムを開発した。また、新システムは代理店とAIが協調したフィデューシャリー・デューティーの実践につながると期待されている。
新システムのリリースに先立ち、全国30店ほどのプロ代理店でトライアル導入しており、操作性などの意見をフィードバックした。いくつかの代理店から「なぜこんなことが可能になるのか」といった驚きの声が挙がっており、ほぼ全ての代理店に好評だったという。
2月にリリースする際には、プロ代理店が利用するシステムの他、整備工場、金融機関、企業代理店などチャネルごとにカスタマイズしたものを提供する。新システムの開発を行った同社デジタル戦略部デジタルビジネスチームでは、「MS1Brainは、AIにできることはAIで、人間にしかできないことは人間がすることによってお客さまに新たな体験価値を提供する、というコンセプトで開発した。代理店の皆さまにはぜひ、AIが後押しする新システムをフル活用して、お客さまに選ばれる代理店を目指してもらいたい」として、今後の普及に期待を寄せている。