2019.08.09 東京海上日動 業界初「海外投資保険」発売 NEXIと再保険協定締結で実現
東京海上日動は8月1日、中小企業の海外進出を後押しするため、日本貿易保険(NEXI)と再保険に関する契約を締結し、NEXIへの出再スキームを活用した「海外投資保険」を業界で初めて発売した。同保険は、日本の企業が海外に所有する株式や不動産の権利等について、カントリーリスク(戦争や外貨送金規制等、輸出者や輸入者など契約の当事者に責任のない不可抗力的な危険)による損失を補償する保険。同保険では、収用リスク、権利侵害リスク、戦争・テロ、不可抗力リスク、送金の阻害―のカントリーリスクにより損失が生じた場合に補償を行う。7月31日には再保険契約署名式が行われ、東京海上日動の中村直樹専務執行役員、NEXIの寺村英信常務取締役が出席した。
同保険では、次のカントリーリスクにより損失が生じた場合に補償を行う。
▽収用リスク:顧客が所有する海外事業会社の株式、配当の支払い請求権、不動産等の権利を外国政府等により奪われるリスク
▽権利侵害リスク:外国政府等による権利侵害によって事業不能等(①事業の継続不能②破産手続き開始の決定③銀行による取引停止④1カ月以上の事業の休止―のいずれかの場合)が生じたことにより損失を被るリスク
▽戦争・テロ、不可抗力リスク:国外で発生した戦争・テロ、内乱、暴動や、天災、国連制裁、ゼネラルストライキ、原子力事故等によって事業不能等が生じたことにより損失を被るリスク
▽送金の阻害:配当金や株式譲渡代金等を、外国における為替制限・禁止、戦争等による為替取引の途絶、外国政府等による管理、送金許可の取消等によって、2カ月以上の期間本邦に送金できないことにより損失を被るリスク
補償の対象となるのは、株式等(株式または純資産に対する持分)、配当金請求権(株式等に対する配当金の請求権)、不動産等の権利(不動産、設備に関する権利、鉱業権などの権利)。
近年、国内企業による海外進出や海外投資は増加傾向にあり、対外直接投資残高も急激に増加している。一方で、東京海上日動が行ったニーズ調査によると、海外投資の検討に際し、政治的・経済的混乱による財産の没収や送金の阻害などのカントリーリスクに対する不安があるものの、それらに対する具体的な対策が講じられていないケースが多いことが分かった。
こうした国内企業の海外進出・海外投資の状況と海外投資に伴うニーズを踏まえ、同社では今回、海外におけるカントリーリスクをカバーする「海外投資保険」を開発し、販売することとした。同保険が対象とするカントリーリスクは予測が難しいリスクだが、同リスクについて高いノウハウと数多くの保険引受実績、保険金支払い後の高い回収力を有するNEXIとの再保険を通じた連携スキームを活用することにより、国内企業による数多くの国々への投資に対し、幅広い補償を加入しやすい保険料で提供することが可能となった。
また、NEXIとの海外投資保険に係る再保険協定の締結は、同社が業界で初めてとなる。
これまでの貿易保険法における民間損害保険会社との国内受再による協働は、民間の損害保険会社が行う日本企業の輸出等への取引信用保険(元受保険契約)についてNEXIが再保険を引き受ける形に限られていた。一方で、昨今、日本企業の海外投資が増加傾向にあり、大企業だけでなく中堅・中小企業の海外投資の増加も予想されている。全国で事業活動を行う中堅・中小企業にとって、カントリーリスクに関する相談や困り事は、全国に支店を持つ民間損害保険会社がより身近な存在といえる。
こうした状況を受け、7月12日、中堅・中小企業の海外展開支援を広く後押しする観点から、貿易保険法施行令の一部を改正する政令が施行された。この政令改正により、NEXIの再保険によるバックアップの下、民間損害保険会社が、特に中堅・中小企業を対象として、海外投資保険の販売をすることが可能となった。
東京海上日動とNEXIとの連携は、日本政府の施策に沿った官民連携の形といえる。
東京海上日動では、同保険を同社の販売網を活用して全国で販売することにより、国内企業の海外展開の支援と国内の地域経済の活性化に取り組む。
さらに、この取り組みは、SDGsのゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」に該当するものであり、同社ではこれからもさまざまなステークホルダーと連携し、持続可能な世界の実現に取り組んでいくとしている。