2019.07.26 生保協会 清水新会長就任会見開く 現状への強い危機意識示す

 生命保険協会の第57代協会長に就任した清水博氏(日本生命社長)が7月19日、生保協会会議室(東京都千代田区)で業界紙向けの就任会見を行い、所信を表明した。清水協会長は、本年度の注力施策として、顧客本位の業務運営の一層の徹底と、新時代における希望あふれる安心社会の実現に向けた取り組みの2点を挙げ、「現在生保業界に向けられている視線は大変厳しい。このことを真摯(しんし)に受け止め、強い危機意識を持ち、顧客本位の業務運営の一層の推進に取り組んでいく」と語った。

 一つ目の柱である顧客本位の業務運営については、昨年度からの課題である外貨建て保険、経営者保険、代理店手数料等について一層の取り組みを進める。また、あらゆる領域において顧客本位の業務運営を追求すべく、協会内での議論や業界共有化、業界外との対話を行っていく。
 二つ目の柱である、希望あふれる安心社会の実現に向けた取り組みとしては、新しい時代の生命保険の役割の発揮を目的に、人生100年時代における生保業界の役割を検討し、報告書を作成する。さらに、業界全体のデジタル化の底上げに向け、海外の先端技術の活用事例等の調査を実施することとしている。
 この他、次世代教育への貢献という観点から、保険教育の一環として、小学生向けコンテンツの作成と、次世代を担う若者向けのビジネスコンテストへの協賛を検討する。事業の健全な発展に向けた基盤構築に向けて、税制改正要望や国内外の金融規制等への意見発信、ESG投融資やスチュワードシップ活動にも取り組んでいく考えだ。
 記者から、経済価値ベースの資本規制導入について質問を受けた清水協会長は、導入の検討についてはリスク管理高度化の観点からも概ね理解できるとした上で、資本の定義や負債評価の具体的手法については必ずしも保険会社の健全性を適切に表す指標とならない可能性もあるとの考えを示し「規制の内容については適切な制度となるよう協会として関係各所に対話と働き掛けを行っていきたい」とした。
 また、6月28日に国税庁から経営者保険に関するパブコメ結果と改正案が公表されたことについて意見を求められると、経営者保険の商品開発・販売については業界全体で行き過ぎがあったとの認識を示し、「今後については保障を提供するという保険の原点に立ち戻り、お客さまへの訴求を徹底していく。各社とも同様の観点から募集人に対する十分な教育・体制整備を進めていただいており、販売の再開については各社が判断することになると考えている」と述べた。
 この他、苦情の増加が問題視されてきた外貨建て保険については、銀行業界と協力して進めていくことが重要だとの観点から、昨年は4回の定例打ち合わせを実施し、加入時と契約後の説明の充実に取り組んできたと報告。本年度取り組みたい課題としては、金融機関によるアフターフォローの強化を挙げ、金融機関のベストプラクティスの共有など、銀行業界との密な協力関係の下、対応を進めていきたいと語った。