2019.06.26 あいおいニッセイ同和・横浜国大・エーオン リアルタイム被害予測ウェブサイト開設
あいおいニッセイ同和損保、国立大学法人横浜国立大学(長谷部勇一学長)、エーオンベンフィールドジャパン(谷水克哉社長)の3者は、世界初となる自然災害発生時の被災建物予測棟数を市区町村にリアルタイムで発信するウェブサイト「cmap.dev(シーマップ)リアルタイム被害予測」を開設した。同サイトの開設によって、被災規模の早期把握や迅速な救助・支援活動への貢献を目指す。これを受けて3者は6月13日、東京都渋谷区のあいおいニッセイ同和損保本社で説明会を開き、3者の代表者が開発背景や趣旨、概要、予測手法、今後の展望などについて説明した。
「cmap.dev(シーマップ)リアルタイム被害予測」は、自然災害の被害を瞬時に予測し公開する世界初のウェブサイト。パソコンやスマートフォン、タブレットなど全てのデバイスに対応し、「cmap.dev」または、「cmap被害」と入力することで検索できる。
サイト上の画面では、気象情報を24時間365日映し出しており、風の状態をアニメーション化したものや、NОAA(米国海洋大気庁)から取得した風速データなど、1時間ごとの数値シミュレーションをリアルタイムに表示する。
暴風や豪雨、地震が発生した地域に被害が見込まれる場合は、地図上にその地域の建物被災件数の予測結果が表示される。この他、過去の自然災害のシミュレーション結果を表示することも可能になる。
予測手法は、エーオンが日本全国の航空写真を解析して構築した「建物データベース」と、気象庁が提供する各地の最大瞬間風速や降水量などの観測データを活用して計算する。また、被害予測の精度を保つために、最大瞬間風速30メートル以上の風や降水量が所定の水準に達した場合に被害予測を表示する仕組みになっている。
その後は、1時間ごとに再計算するため、被害予測の表示は、台風上陸前後または、豪雨発生後となっている点に注意が必要となる。
同ウェブサイトは、あいおいニッセイ同和の保険金データ分析、横浜国大の伊勢湾台風に関するデータ提供、エーオンの「建物データベース」と被害予測技術によって構築したもので、顧客だけでなく、地域の防災・減災対策のために一般公開し、気象や災害を24時間365日監視して、情報を全世界に発信していく考えだ。
説明会であいさつしたあいおいニッセイ同和損保の樋口昌宏専務は、「迅速かつ適切な保険金の支払いを実践するために、被害予測に基づいた保険金支払体制を整備することを課題にしていた」と語った。
また、「cmap.dev」の活用によって、被災地の顧客に、同社から保険金の案内を行うことが可能になり、保険金の支払期間を短縮する効果が期待できるとした。今後は、被災地への警報や地方自治体への対策提案なども検討しているとし、「まず、第一歩としてリアルタイムな被災予測が可能になったことに意義がある」と述べた。
「cmap.dev」の概要を解説したあいおいニッセイ同和損保損害サービス業務部企画グループ課長の多嘉良朝恭氏は、被災中・被災後の被災地域とその状況の早期把握が最重要課題であることや、検証期間中の大雨による被害予測が予測通りの結果だったことを報告した。
台風研究に取り組む横浜国大教育学部の筆保弘徳准教授は、同サイトについて、「台風の通過によって災害が発生する可能性のある地域を知ることができる」と強調し、伊勢湾台風が首都圏を襲った場合のシミュレーションができることや、過去のさまざまな台風によるシミュレーションの実施を検討しているとの考えを示した。
エーオンの岡崎豪氏(工学博士)は、「cmap.dev」のシステムの全体象と予測手法について説明。台風(強風)・豪雨・地震(震動)の被害予測手法は、気象庁や国立情報研究所から風速、降水量データ、地表レベルの計測震度を取得して行っていること、2015年に上陸した三つの台風を比較した結果、被害予測値が実績値とほぼ同じだったことを説明した。
今後について、あいおいニッセイ同和損保とエーオンでは、「cmap.dev」を災害発生前の被災地域・受付件数・損害額の算出などに活用する。横浜国大では、台風災害研究と防災教育に役立てるとし、台風・豪雨について気象予報データを用いた、より早いタイミングでの被害予測の実現に向けて取り組みを進める。
また、同ウェブサイトに関心を持つ地方公共団体や企業、研究機関との意見交換を通じて、さらに必要な機能を明らかにし、改善を進める予定としており、今後も気象・災害を24時間365日監視し、地方公共団体や関連企業、地域に役立つ情報の提供に取り組んでいく方針だ。