2019.02.19 生保協会 第3回「マネロン等対策PT」 マネロン対策高度化目指す 中長期的な取り組みに意欲
生命保険協会では、2019年4月からの第4次FATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)対日相互審査を目前に控え、会員各社のリスクベース・アプローチに基づくマネー・ローンダリング(マネロン)とテロ資金供与対策の高度化に取り組んでいる。その一環として、17年12月に「マネー・ローンダリング等対策PT」(マネロン等対策PT)を設置しており、18年11月28日に開催された第3回では、金融庁総合政策局の尾崎寛マネー・ローンダリング・テロ資金供与対策室長と、KPMG FASの萩原卓見ディレクターを招き、実務に踏み込んだかたちでの情報提供を行った。同協会では、今後も会員各社に対して有益な情報提供を行うことで、生保業界のマネロン対策を支援していく方針だ。 生保協会では、国民生活の安全を脅かす組織犯罪を資金面から防止するマネロン対策を、公共性の高い金融機関に求められている義務と捉え、会員各社の取り組みを支援している。生命保険のリスクについては相対的に低いと見られているが、貯蓄性の高い生命保険には一定のマネロンリスクが存在するため、他業態の態勢高度化に伴い、相対的にマネロンに利用される可能性もあるという。 同協会では、これまでにも、「マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策ハンドブック」を作成したり、「マネー・ローンダリング/テロ資金供与対策Q&A」、店頭展示用ポスター等を作成したりすることで会員各社のマネロン問題に関する理解度向上に取り組んできたが、活動をさらに深化させるため、マネロン等対策PTを発足した。メンバーは各社のコンプライアンス部門の部長とすることで、より実務に即した会の運営を目指している。 18年は3月、7月、11月にマネロン等対策PTを実施。初回のキックオフに続いて、第2回は生保会社としてのいくつかのマネロン対応事例を取りまとめ、会員各社で共有する取り組みを実施した。第3回目は、金融庁の尾崎氏が、生保業界に求められるマネロン・テロ資金供与対策として、各社がリスク評価を実施する際に重要な視点等について解説した。続いてKPMG FASの萩原氏は、マネロン・テロ資金供与に係るリスク評価書と、顧客受け入れ方針を策定するための具体的な考え方やプロセスについて講演した。参加者によれば、講演後には活発な意見交換が行われ、マネロン対策に対する業界内の意識の高まりが感じられたという。 この他、同協会では、金融庁が18年8月に公表した「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策の現状と課題」の中で、複数の保険会社の商品の募集を行う代理店が取り扱う保険契約締結に際して、取引時確認の適正性を確保するための規程等の整備に課題が見られる事例が確認されているといった課題認識が示されたことを受け、乗合代理店向けの研修資料と、内部規定のひな形を作成し、会員各社が保険代理店に提供できるよう準備を整えた。 今後については、マネロン等対策PTでの取り組みを通じて、リスク評価によって分類された個々のリスクに対する具体的なリスク低減策についての検討を進めていく方針だ。同協会では、今後も他業界のITを活用した好事例や、海外での審査事例などを共有していきたいとしている。 「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与、反社会的勢力への対応」は、15年9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた生保業界における重点取り組み事項にも掲げられている。企画部企画グループ主任の瀧田祐氏は「当協会では、生命保険が犯罪等に悪用されることを防ぎ、健全かつ公正な制度の運用を確保することを通じて、暴力や組織犯罪等の根絶に貢献することを目標としており、FATFの審査への対応だけでなく、中長期的な視点でマネロン等対策の強化を推進していく」と今後の活動に意欲を示す。