2016.10.14 富士フイルム・アニコムHD 合弁会社が本格始動
富士フイルムとアニコムホールディングス(アニコムHD)が設立した合弁会社「セルトラスト・アニマル・セラピューティクス株式会社」(牧野快彦社長)が、10月1日から本格的に業務を開始した。同社は、富士フイルムが持つ高度な生産技術や品質管理技術、再生医療(注1)・画像診断・血液の化学成分分析の技術と、アニコムHDの動物病院ネットワーク、電子カルテシステム、豊富な診療情報とを組み合わせて、動物の先端医療分野で再生医療を中心とした革新的で高度な医療技術・サービスの開発と実用化に取り組む。実用化した技術・サービスの普及に向けては、動物病院やアニコムグループのペット保険とも組み合わせ、動物先端医療の新たな仕組みの提供を目指す。
セルトラスト・アニマル・セラピューティクスは資本金5000万円、富士フイルムが51%、アニコムHDが49%を出資した。
同社が取り組む事業内容の具体的な流れは次の通り。
まず、同社は動物の先端医療技術・サービスのトランスレーショナルリサーチ(注2)を実施し、動物の先端医療の開発と診療行為が一貫して行える実用化拠点を神奈川県に開設。同拠点で大学や企業と共同で、細胞治療に関する診断方法から治療方法までの診療法を開発し、さらに実際の診療に応用することで、先端医療技術・サービスの実用化を図るとしている。
開発した先端医療技術・サービスなどの先端医療ソリューションは、一次診療(注3)を行う動物病院で実践できるように提供していく。また、医療費負担の軽減に向けて、アニコムHDのグループ会社での新規ペット保険の開発にも協力する。
さらに、一次診療病院での先端医療の実施を実現するために、一次診療病院で撮影した検査画像を外部の読影の専門家と共有し、専門家が所見を送るサービスを提供する。また、診療で得られた効果や画像データなどのエビデンスを蓄積・活用することで、より精度の高い診療法の開発につなげる。
両社では、こうした新たな仕組みの構築は「ヒトの再生医療への応用にも資する先駆的な取り組み」だとしている。
(注1)人工的に培養した細胞や組織などを損傷した臓器や組織に移植し、患部の機能を回復させる医療技術。
(注2)研究室で発見された基礎的な知見や技術について、臨床応用の可能性を評価し直し、臨床の場に使われるまでに育てること。基礎(研究)と臨床(実用)との橋渡しをする研究。
(注3)通常の外来診療のことで、広く一般の患者の受け入れを行う病院を一次診療病院という。特定の疾患領域など、専門的な診療を行う病院を二次診療病院という。